第80話 驚きの来客が来ました

 ピンポーン!


 ん?チャイム?

 時間は・・・もう午後7時30分か。

 こんな時間に、誰だろ?


 今日は美咲さんや美玲さんを交えて、僕の家での食事だ。

 文化祭が終わった事の、簡単な慰労だけでもやろうって事になったからだ。


 現在は、食事を終えて一休み中。

 食事を作っていないラピスとリリィ、クォンと美玲さんが片付けをしてくれているんだよね。


 っていけない!


「僕、出てくるね?」

「うん。おねがーい。」


 美嘉に一声かけて、異空間から現実世界に戻り玄関へ。


「はーい?どなたですかー?」


 僕はドアを開ける。

 すると・・・美玖ちゃん!?・・・と、誰?

 美玖ちゃんの隣には、凄く綺麗な女の人が立っていた。

 銀髪って珍しいね。


「・・・瞬。その・・・」


 美玖ちゃんは何か言いづらそうにしている。


「・・・美玖?」

「わ、わかってる!・・・瞬、今日は、ごめん。」


 美玖ちゃんは神妙な顔をして今日の事を謝って来た。

 隣の綺麗な子に促されてだけど。


「い、いや、良いんだよ。それよりも・・・」

「シューン?誰だった〜?」

「!?」

「・・・」


 美嘉が来た。

 そして玄関に来て、


「・・・あら?あなた・・・」

「・・・こんばんわ。」

「・・・」


 美玖ちゃんが一瞬だけ美嘉を睨んだけど、すぐにブンブンと顔を振って挨拶をした。


「ふ〜ん・・・こんばんわ。意外ね?まさかこんなに早く来るなんて・・・って!?シュン!離れよ!!」

「え?」


 美嘉が飛び退って美玖ちゃん達と距離をとる。

 表情は真剣だ。


「どうしたの?」

「早く離れよ!そやつは何だ!?人間では無いぞ!!」

「え?」


 僕は美嘉が指を指した女の子を見る。

 ・・・人間以外には見えないけど?


「くっ!呆けるな阿呆が!『みな!早う来い!!』」


 なんでそんなに?


「何!?なんかあったの!?」

「あら?あの方は・・・シュン様の・・・」

「ああ、そうだな。何故あんなに警戒を・・・」

「ミカ、なんで・・・!?みんな警戒!そいつ心が読めない!!ヒトじゃない!!」

「「「「「え!?」」」」」


 美嘉が念話でジェミニ達を呼んだのか、バタバタと玄関にみんなが現れた。

 そして、ジェミニがすぐにハッとなって美玖ちゃんの隣の子を指差す。


 心が読めない?


「え?え?」


 美玖ちゃんが焦って僕達とその女の子を何度も見ている。


「・・・美玖、焦らなくても良い。久しいな勇者。息災なようで何よりだ。」

「え!?な、なんでそれを・・・君、誰?」

「わからないか?残念だ。」


 しょんぼりと落ち込むその子。

 ・・・あれ?なんだか、今の声と残念がる感じ、どこかで覚えが・・・


「・・・!?ま、まさか・・・」

「・・・嘘でしょ?」

「この感じ・・・神、様・・・?」

「・・・あるじ、様か・・・?」


 何かに気がついた感じのみんな。

 クォンと美咲さん、美玲さんは小首をかしげている。

 って、神様?


「あ!?そうだ!この感じ、グランファミリアの神様!!」

「おお!気がついてくれたのか!」


 僕の言葉に、にこにことしている神様(?)

 というか、なんで美玖ちゃんと?


「・・・本当に、勇者やってたんだね、瞬・・・」

「へ?あ!?い、いや、今のは物語の話で・・・」


 美玖ちゃんの言葉で、思わず我に返った。

 誤魔化さなきゃ!!


「いいわよ、隠さなくて。もう、知ってるから。フォーティちゃんに聞いたもの。」

「へ?」


 ・・・フォーティちゃんって、誰ですか?









 このままではらちが開かないって事になって、僕達は異空間にある僕達の家に入った。


「・・・何、これ・・・なんでこんな風に・・・」

「美玖、これは魔法と魔術を併用して、異空間に部屋を作っているのだ。そこにいる、元魔王と大賢者の仕業だろう。」

「・・・本当に、管理者なんだ。」

「ええ・・・驚いちゃったわ。」


 美玖ちゃんに解説するフォーティと名乗る神様と、それに驚いている美嘉とジェミニ。


「さて、では話そう。私と美玖、それぞれから話がある。まずは美玖、そなたの事情から話すが良い。」

「・・・わかった。皆さんも聞いてくれる?あのね・・・」


 そこで聞いた話は、衝撃だった。


 美玖ちゃんは僕にずっと厳しかったんだけど、それは実は美玖ちゃんのお父さんからの刷り込みだったみたい。

 まさか、美玖ちゃんのお父さんが、僕のお母さんを好きだったなんて・・・

 

 それに、美玖ちゃんの事を溺愛していたあの人が、まさか美玖ちゃんに暴力を振るっていただなんて知らなかったよ。


「・・・だからわたしは、瞬に厳しく言ってたし、素直になれなかったの。瞬、今までごめんなさい。」


 頭を下げる美玖ちゃん。


 そんなの、美玖ちゃんは悪くないじゃないか。


「良いよ、別に気にしなくて。僕はね?別に美玖ちゃんの事、嫌いじゃ無かったよ?確かに美玖ちゃんは僕を嫌いなんだとは思っていたけど、それは僕が美玖ちゃんを嫌いになる理由には、僕にはならなかったからさ。」

「ホント!?」

「うん。」

「じゃあ、わたしも仲間になって良い!?」

「うん?」


 何の?何の仲間?


「・・・はぁ。そんな話聞かされたら、嫌って言えないじゃない。あたし達の事は、そこの管理者からどこまで聞いたの?」

「え〜っと・・・あなた・・・桜咲さん、で合ってる?桜咲さんが正妻で、後は皆さんで瞬をかこってるって・・・」


 囲ってる!?

 どういう表現!?

 僕は囲われてなんか・・・


「だいたい合ってるわね。」

「合ってるわ。」

「合ってるね。」

「合ってます。」

「合ってるな。」

「合っていますね。」

「そうですね。」

「合ってるの!?」


 みんなの僕に対する認識おかしくない!?


「「おかしくない」」


 おかしくないかぁ・・・そっかぁ・・・

 おかしいのは僕かぁ・・・目に汗が・・・


「・・・では、正妻として、みんなに問うね。この子の仲間入りに、反対の人、いる?」

「・・・わたしは良いわよ。そんな昔から好きだったのに、実の父親にそんな風にされてたなんて可哀想だし。」

「そーだねー。それに、しゅーくんの事好きだってすっごくわかるし。」

「わたくしも、別に良いですよ。この方からも悪しきものは感じません。何より・・・」

「主様と友人関係なのだろう?反対できるわけがない。」


 あ、そういう仲間か。

 ってなんで!?


「美咲と美玲はどう?」

 

 僕の混乱を無視し、美嘉は美咲さんと美玲さんに問いかける。


「そうですね。忠告通り乗り越えて来られたようですし、ある意味皆さんと同じように取り巻く環境を捨てて来られたようなものですし、覚悟は良くわかりました。新参者は私も同じですし。私も良いですよ。」

「はい。私も思うところはありません。」

「そう。良かったわね、瞬。嫁が増えるよ?」

「ちょっと待ったー!!なんで!?なんでそんな話に!?美玖ちゃんは確かに僕を嫌っていなかったんだろうけど、そういう好きだなんて一言も「あ、わたし瞬のこと好きだよ?ずっと前から、男として。」言ってな・・・って、えーーーーー!そうだったの!?」


 僕が驚愕していると、美玖ちゃんはそんな風に言った。

 え?え?

 理解が追いつかない・・・


「・・・シュンが駄目だって言えば、駄目だけど・・・」

「瞬!?駄目なの!?わたしじゃ・・・だめ?」

「ぐっ!?」


 目の前に詰め寄る美玖ちゃん。

 両手を胸の前に組んで、目をうるうるさせている。

 今までの人生で一度も見たことがない・・・って待って?

 どこかで見た・・・あ!小さい頃の美玖ちゃん!?


 ・・・そうだ。

 思い出した。

 

 まだ、小さかった頃、僕と美玖ちゃんは仲良しだった。

 そして、その時に・・・


『しゅんくん。わたし、おおきくなったらしゅんくんのおよめさんになっていい? 』

『およめさん?』

『うん・・・だめ?』

『いいよ。ぼく、みくちゃんすきだから。』

『やったー!』


 この時だ!

 ああ・・・そっかぁ・・・僕も、お父さんとお母さんの事があって、小さい時の記憶に蓋をしてたんだなぁ・・・


「瞬・・・」


 美玖ちゃんの目には涙が見える。

 小さい頃とは言え、約束は約束、だね。

 それに、僕は・・・


「良いよ?僕、美玖ちゃん好きだから。」

「!?それ・・・覚えてて・・・」

「うん、思い出したんだ。どうやら、僕も両親の事で記憶に蓋をしてたみたい。」


 美玖ちゃんは目を見開いた。

 僕はこくりと頷く。


「やったー!瞬!ありがとう!大好き!!」

 

 美玖ちゃんが飛びついて来た。

 僕は咄嗟に受け止める。


 ・・・ごめんね美玖ちゃん・・・忘れてて・・・


 くいくい


 あれ?なんか袖が引かれて・・・


「妾達は、放っておく気か?ん?」


 美嘉とみんながムスッとしてる。

 

「み、みんなも勿論、好きだよ!うん!」


 ああ・・・なんか最低男になった気分だ・・・

 でも、美玖ちゃんはその声でハッとなって立ち上がり、みんなにお辞儀をした。


「あ、坂下美玖です!よろしくお願いします!!」

「敬語は無しでいいよ?みんな呼び捨てでね。だって仲間だし。仲良くしましょ?」

「っ!!うん!!よろしく!!」


 ああ、良かっためでたしめでたし・・・


「勇者、勇者よ。」くいくい。

 

 うん?


「私、空気なんだが?」


 そこには、若干涙目の神様が!


「あ!?み、みんな!神様の話を聞こう!?」


 こうして、仕切り直して、神様の話を聞くことになった。


 神様、お世話になってたのに、すみません。

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