第81話 元管理者の話を聞きました

「そ、それでは神様の話を聞こう!」


 みんなを落ちつけて、神様に話をふる。

 危ない、完全に忘れていたよ・・・


「・・・ぐすん。」


 しまった!神様だから心くらい読めるよね?

 変なこと考えちゃだめだ!


「わ〜!わ〜!神様のお話聞きたいな〜!」


 なんとかまた涙目になった神様のご機嫌をとる。

 

「ちーん。・・・私は、グランファミリアの元管理者のフォーティと言う。」


 思いっきり鼻をかんでから、神様は名乗った。

 なんというか・・・なんだろう?ポンコツ臭がするっていうか・・・


「・・・ポンコツ・・・ぐすん・・・」

「わー!ご、ごめんなさい!ポンコツって言ってもいい意味(?)で・・・」

「もう!シュン?話が進まないでしょ!」

「ご、ごめん・・・」


 また神様をなだめて続きを促す。

 

「お主ら、正確に言うのであれば、聖騎士と聖女をこちらに送ってからの事を話そう。あの後・・・」



 神様の話は、美玖ちゃんの話に負けず劣らず強烈だった。

 

 リリィとラピスがこちらに来た後、向こうの世界ではだいぶ殺伐とした状態だったらしい。

 そして、それはリリィのお父さん・・・王様が亡くなるまで続いたんだって。


「聖女よ。そなたの父は、愚かではあったが、それでも、最期には改心し、責任を全て取る事を願ったよ。そして、そなたの幸せを祈りながら逝ったのだ。」

「・・・そう、ですか・・・お父様が・・・」

「リリィ・・・」


 リリィは、悲しそうに唇を噛んでいた。

 殺されそうになっても、やっぱりお父さんはお父さんだったんだね。


「大丈夫です、ラピス。お父様が改心されたのであればそれで良かったのです。」

「案ずるな聖女よ。彼の者の魂は、記憶と共に保管し、また世界が荒れそうになった時には、その時の王の子として転生する様にしてある。彼の者も、次は間違えず、次こそは賢王と呼ばれる事になるだろう。」

「・・・はい。ありがとうございます。」


 ・・・王様。

 今度こそ、リリィの為にも、いい王様になって下さい。

 僕も願っています。

 

 そして話は続く。


「・・・創造神様?」

「うむ。我々管理者・・・私は元、管理者だが、管理者を管理する方だ。管理者の大半は、その方より生み出されるのだ。今回、私のした事は、かのお方の策定した管理者の行為を逸脱していた。だから、処分される為に自らの行いを報告したのだ。」


 ・・・自分から、殺される為に、報告したの?

 どうしてそこまでして・・・


「なぜそこまでしたの?」


 ジェミニも同じように疑問に思ったのか、神様に問いかけた。


「・・・そなた達が必死に救った世界を、欲望の為に汚そうとした者共が許せなくなった、そう、思っておった・・・しかし・・・」


 そこで、神様は、一瞬言葉に詰まり、僕を見た。


「ある方に、言われたのだ。私のこの行為、この・・・気持ちがどこから来たのかを。それは・・・私が、ゆ、勇者を、好きだから、それを汚した者共を許せなくなったと・・・そう・・・言われたのだ。」


 頬を染めながらそう言う神様。

 思わずドキッとしてしま・・・って好きぃ!?神様が!?僕を!?


「そうだ。」


 僕の心を読んだのか、頬を染めたまま頷く神様。

 

「詳しく話せる?」


 美嘉が・・・美嘉達が真剣な顔をして神様を見た。

 

「うむ。まず、大前提として、我々管理者は恋愛というものはまずしない。そう言った感情が定められていないからだ。だが、まれにそういう気持ちを抱く者が出てくるそうだ。」


 神様が遠くを見ながらそう言う。


「私にそう言ったのは、元管理者で、今はとある管理者・・・具体的には、この世界の管理者の妻となっている方だ。私の大先輩にあたる。」


 へ〜・・・って、この世界の管理者!?

 それって・・・


「この世界の神様って事ですか?」

「そうだ。」


 美咲がおそるおそるそう言うと、神様は肯定したんだ。

 この世界にも、神様が・・・


「その方は言った。私は、勇者を召喚してから、ずっと見守っていたのでは、と。私は肯定した。すると、その方はおっしゃった。勇者の苦しいときも、悲しいときも、その世界の為に一生懸命頑張る姿に惚れてしまったのだ、とな。そして、自らを振り返り、その言葉が的外れ・・・ではない事に納得した、してしまったのだ。」


 胸を押さえて恥ずかしそうにそう言う神様。


「だからこそ、勇者を慕うお主ら・・・元魔王、大賢者、狐娘、聖女、聖騎士を勇者の元へ送り出し、自分の代わりに勇者を助けて欲しいとそう願った、そう言われ、私は、それを否定する事ができなかった。」


 ・・・そう、だったんだ。


「それを聞いていた創造神様は、そこで私に対する処分をくだされた。それが・・・人として、勇者と添い遂げること。」

「え!?」

「「「「「はぁ!?」」」」」

「「「ええ!?」」」


 まさかの言葉に、驚きの声をあげるみんなと僕。


「ま、待て?何故そうなる?」

「そうよ?それじゃ罰じゃないでしょ?」

「確かに!」


 美嘉とジェミニとクォンが叫ぶ。


「私もそう言ったさ。だが、創造神様は、『折角、管理者で恋愛できそうな子が出てきたんだ。お父さんとして見守ってあげたいでしょー?』と言って、撤回してくれぬのだ。」


 ・・・創造神様って、親ばか?


「で、では、神様は納得されておられないのでしょうか?」

「う、うむ。主様のお気持ちは?」


 リリィとラピスの言葉に、神様は更に顔を赤くし、


「・・・嬉しく、思っている、ようだ。」


 そう言った。

 言っちゃった。


 そして僕を見た。


「勇者よ・・・いや、瀬尾瞬よ。そなたの魂は美しい。そしてその生き様も。どうか、私も共に一生を過ごさせてくれぬだろうか?」


 ・・・どうしよう?

 でも、神様には、僕はお世話になったし、みんなも助けて貰ったし、それに・・・


「ねぇ、みんな。僕は・・・」

「・・・シュン、みなまで言うな。わかっておる。皆の者、良いな?」

「ええ。私も助けられた恩があるもの。」

「アタシもそうみたいだし?良いよ。」

「わたくしにいなはありません。」

「同じく。」

「・・・話が壮大過ぎてよくわかりませんが、皆さんがお世話になったのであれば、私も良いです。大事なお友達であり、仲間ですから。」

「お嬢様と同じです。」

「わたしは・・・まさにさっき助けられたばっかりだから勿論良い、どころか、友達だからね。むしろ嬉しい。」

「・・・あり、がとう・・・」


 みんなの言葉で、神様は涙混じりに微笑んだ。

 ・・・すっごく綺麗だね。

 思わず見惚れちゃった。

 流石は神様だ。


「・・・フォーティだ。」

「え?」

「私は、もう、神ではない。管理者でもない。だから、名前で呼んで欲しい。」


 懇願するようにそう言う神様・・・フォーティさん。


「・・・わかったよ。フォーティさん。」

「・・・フォーティ、だ。」

「う、うん。フォーティさ「フォーティ!」・・・フォーティ。」

「うむ!よろしく頼むぞ!瞬よ!」

「あ〜!フォーティさんずるい!瞬さん!?私も!私も美咲と呼んで下さい!不公平です!」

「瞬様。勿論私も美玲とお呼び下さい。不公平は許しません。」

「・・・わ、わかったよ・・・美咲、美玲・・・」

「「はい!!」」


 嬉しそうな美咲と美玲。


「にしても、増えたのう・・・瞬?お主頑張らねばならぬなぁ?」

「へ?」


 何のこと?

 なんでそんなにニヤニヤしてるの美嘉?


「身体が持てば良いな?くくく・・・」


 身体が・・・身体・・・あ!?え!?


「シュンくーん?お薬、だそうか?夜のお薬♡もう、ギンッギンになって治まらなくなるヤツ♡大賢者におまかせ☆」

「結構です!!」


 ・・・それがあった・・・どうしよう・・・9・・・人・・・うぇぇぇぇ!?

 も、もつかなぁ・・・


「?なんの事です?」

「どうしたの?」


 美咲と美玖ちゃんがきょとんとしてる。


「にしし!あのね〜?」

「あ!クォン黙って・・・もがっ!?」

「は〜い♡シュンくんは静かにね☆」


 みんなの説明を美咲と美玖ちゃん、そして美玲とフォーティも聞き入っているようだ。

 何せ、見えてないから想像するしかない。


 やめて〜!恥ずかしいからやめて〜!!


「・・・た、たしかに、重要ですね。それは。」

「う、うん・・・でも、みんな凄いなぁ・・・覚悟ガン決まりじゃん・・・流石は世界を越えるだけはあるね。わたしも負けてらんないなぁ。」


 どんな納得!?


「それじゃ、みんなで順番を決めるとしようか。」

もっが待ってもっが待ってもっがあああああ待ってぇぇぇぇぇ!!」

「あん♡シュンくんったら興奮しすぎ♡」

もが〜〜〜うちが〜〜〜う!!」


 その後の恥ずかしい話し合いを、僕はそのまま聞く羽目になりました。

 ・・・ジェミニの胸の谷間の中で。

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