第72話 文化祭がはじまりました

「・・・間に合った。危なかったぁ・・・」


 なんとか滑り込みセーフで到着。

 起きたときにはすぐに家をでないといけない時間だったけど、そこは美嘉が『絶望の世界アルフェミニカ』を使用して、なんとか間に合わせる事ができたんだ。

 バタバタと準備する女の子達。

 お願いだから、シャワー浴びた後、しっかりと着替えてから出てくれないかなぁ。

 ちらちら見えて、目に毒だったよ・・・

 

 それにしても本当に、危なかった・・・もうちょっと起きるのが遅かったら、どうにもならない時間だったよ・・・


「私がこの様な醜態を・・・猛省しなければ。」

「お嬢様、多分、今後は増えると思いますよ?こういうのは。」


 美咲さんがショックを受けているね。

 今まで、こんな事無かったんだろうなぁ。 

 美玲さんが慰めてる・・・のかな、あれは?


「にしても・・・なんであんな事になったのかなぁ?」


 教室に移動しがてら、美嘉がそんな事を言った。

 確かに、それは気になる。 


「おかしいよね〜?飲んでも気がつかないなんてさぁ?」

「そうですね・・・ん?そういえば以前にも似たような事があったような・・・」

「ああ、あったな。あれは・・・まだ旅をしている時で、確か・・・ああ、そうだ!大きなヤマを一つ越えて、みんなで祝勝会をした時で・・・」


 ああ、あったね。

 街でみんなで少しでもお祝いしようって話になって、それで・・・あれ?あの時確か食事の準備をジェミニが手配して、そして・・・あ!?


「・・・ジェミニ?」


 僕がその答えに至った時には、みんなも気がついたようで、リリィとラピスとクォンがジト目でジェミニを見ている。

 ジェミニは・・・目を逸らさずにっこりとしていた。


「何かしら?」

「やった?」

「あら?まだシュンくんとは清い関係でしょ?」

「そうじゃなくて!!」


 くっ!?これは手強い!!

 あくまでもしらを切るつもりだね!

 どうしようか・・・


 僕がそんな事を考えている時だった。

 にゅっと手が伸び、ジェミニの両頬を引っ張る。

 美嘉だ。


いはいは痛いわ。」

「ジェミニ・・・お主、本当の事を言わねば、昔の事をバラす。」

ふぁ、ふぁんふぉふぉふぉな、なんの事?」

「まだ幼少時、お主と一緒に夜に寝た時に、朝起きると・・・」

「私がやりました!」


 凄い勢いで美嘉の手を払い、そのまま手を上げてそう叫んだジェミニ。

 一体、何をバラされそうになったんだろ?

 逆に気になるんだけど。


 まぁ、ジェミニは絶対に言わなかったんだけどね。


 ジェミニはみんなから怒られて、シュンとしてた。

 なんでも、ジェミニが錬金術で作った匂いの無いアルコールなんだってさ。

 かなりきついらしく、多少強い人でもべろべろになっちゃうんだって。


「・・・折角だし、面白いかなって。てへ♡」


 これがやった理由。

 ・・・冷静な大賢者はどこへ?


「・・・シュンくんに効かなかったのは予想外だったわね。前の時はシュンくんのには混ぜなかったから知らなかったわ。」


 ・・・どおりで、前の時は僕とジェミニ以外のみんながベロベロになったわけだね。

 あのあと、しきりに同じ部屋で寝ようとするジェミニから逃げた記憶があるんだけど・・・危なかったんだなぁ。

 まだ当時は、ジェミニは優しくて包容力のあるお姉さんって感じだったから、強い拒否ってよりも、女性と同室で二人で寝るのはちょっとって押し切ったんだよね。

 もし寝てたら強制的に大人の階段を・・・ぶるぶる。





 そして、教室に着き、僕達は準備をする。

 初日の今日は、うちの学校の人向けなんだ。


 だから気楽にやれるってものだね。

 勿論、緊張はしてるんだけどさ。


 「皆さん、今日から本番です。ですが、幸い本日はこの学校内の方が来店するのみですので、緊張する事無く、落ち着いて対応しましょう。」

「「「「「「「「「「「「「「「「おー!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」


 総支配人の美咲さんの号令で、みんな配置についた。

 僕は案内役として廊下に出る。


 学校内は、生徒が色々なクラスに出入りして、楽しんでいるみたいだね。

 みんなに笑顔が見える。


 ・・・うん、良い光景だな。

 やっぱり、僕は殺伐とした雰囲気よりもこっちの方がいいや。


「シュン?どうした?」

「いや、なんでもないよラピス。それより、お客さんだね。中へ通そう。いらっしゃいませ!ようこそおいで下さいました。当店のご利用、ありがとうございます。システムのご案内をさせていただきますが、よろしいでしょうか?」


 僕やラピス、クォン、美玲さん、他の案内役の生徒がそれぞれ受付や換金をして応対している。


 なかなかに忙しい!

 何故なら・・・


「うっはー・・・すっげぇ・・・」

「いや、マジであれ、同じ高校生なんか?」

「とてもタメには見えねぇ・・・エロすぎる・・・」

「異世さん・・・すっごく色気がある・・・」

「さっき、見回りに来た先生、鼻の下伸びてたもんね・・・」

「あれは仕方が無くない?あんなの反則だよぅ・・・」


 みんな、ディーラーをしているジェミニに見惚れてしまってるからだ。

 全コイン使い切ってしまった人は強制退場になるので、もう、見ることはできない。


「くっそー!もっとちまちま賭けときゃ良かった!!」

「ああ・・・ずっと見ていたかったのに・・・なんで俺はあの数字に・・・」


 トボトボと教室を出される生徒も。


 ・・・うう、ちょっと教育上よろしく無かったかもしれない。

 それもこれもジェミニがエッチすぎるからだね!

 流石はサキュバスだ!

 ただ、居るだけでエッチだなんて、ジェミニの存在が教育上よろしく無い「シュンく〜ん?」うひぃ!?


 僕は、その声に背筋を凍らせておそるおそるジェミニを見る。


 にやぁ。


 ひぃ!?


 ジェミニと目が合うと、そんな笑みを見せた。

 まずい!心読まれてた!


「シュンく〜ん?そんなにもの欲しそうな視線を送らなくても、一緒におうちに帰っていっくらでも見せてあげるわよ〜?なんなら、このまま・・・する?」


 大声でそんな事を言うジェミニ。

 その瞬間、一斉に嫉妬の視線が!


「・・・アホねシュン。そんな事考えたら、ジェミニが仕返しするに決まってるのに。」

「・・・私には考えは読めませんが、なんとなく何を考えたかはわかります。瞬さん・・・」


 ぽんっと肩を叩かれ、そんな呟きが僕に届く。

 見回りしていた美嘉と美咲さんだ。

 美嘉は呆れて、美咲さんは哀れんでいる。


 うう・・・ジェミニ、ごめん・・・


「シュンく〜ん?お返事は〜?何も言わないなら、今日泊まりに行ってベッドにこのまま潜り込むわよ〜?」

「ごめんなさい!許して!!」

「え〜?じゃあ、考えとくわね。ああ、そうそう、許してほしいなら、後でちょっとお着替え手伝ってね〜。」

「うえぇ〜!?ジェ、ジェミニ勘弁して〜!!」


 ざわざわざわざわ。



 ジェミニの発言で室内がざわついている。

 聞きたくないけど、耳に入っちゃう。


「・・・あいつ、異世さん達といつもそんな事してんのか?」

「・・・流石は性の勇者だ。俺たちとはレベルが違う。」

「この学校のボス級の女子を軒並みテイムしてるもんな。あいつだけ強くてニューゲームなのか?」

「いや、人生二周目かもしれねーぞ?」

「・・・俺、二周しても無理かも・・・」


 ・・・ぐすん。

 でも、なんか前よりも陰口の質は変わってるような気はするけれど。


「瀬尾くん・・・あわあわしてて可愛いわね・・・」

「確かに。でも・・・あの反応・・・まさかまだ・・・してないの?」

「・・・ちょっと待って。聞き捨てならないわね。あんたもしかして経験してんじゃ・・・」

「・・・てへ♡」

「「「おい!」」」

「それよりも、瀬尾くんでしょ!やっぱりよく見たら可愛いし、噂だとごつい男子を取り押さえられるくらい強いらしいし、成績も良いらしいし・・・もしかして、かなり高物件なんじゃ・・・」

「・・・そうかも。」

「そっかぁ・・・だから超級の女の子ばっかり瀬尾くんを狙ってるんだね。見る目あるなぁ・・・」

「というか、私達が曇ってたんでしょ?多分。」

「「「「「「「「はぁ・・・」」」」」」」」


 ・・・なんか女子の反応も違う。

 

 そんなこんなで初日は終了しました。


 勿論、ジェミニには許して貰いました。

 ・・・学校じゃ無くて、家での着替えという条件で。


 ・・・恥ずかしかった。

 もうちょっと隠してよ・・・

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