第73話 文化祭2日めが始まりました

 二日目。

 今日はある意味本番だ。

 

 何故なら、昨日のように学校の生徒相手じゃなくて、一般の人が相手だから。

 多少もたついても、同じ生徒であれば受け流せるけれど、外の人ではそうはいかないと思う。

 なんとか何事も無く成功させないとね。


「昨日は概ね上手く行ったと思います。ですが、やはりどうしても焦りや照れ、そして相手が同じ生徒という事で甘えがありました。皆さんも自覚があるとは思いますが、それはお客様を待たせたり、失敗に繋がります。本日は昨日以上にスムーズにする必要があります。頑張りましょう。」

「「「「「「「「「「「「「「「おー!」」」」」」」」」」」」」」」


 昨日と同じように、総支配人である美咲さんの号令。

 なんだか、貫禄があるね。

 流石は大企業の経営者の娘。

 色々と事業を手掛けている事もあるし、手慣れてる感があるや。

 

 僕も頑張ろっと!


 午前中は比較的に上手く回ってたんだ。


 一般の人にも僕達のカジノのウケは上々。

 やっぱり、ジェミニに見惚れる人は多数。

 生徒の親もいっぱい来ていたんだけど、中には、ジェミニの事を先生だと思っている人もいて、同じ生徒だと伝えると、仰天していたよ。

 やっぱり高校生の色気じゃ無いよね。

 まぁ、年齢詐称してるんだけども。


 そんなこんなで昼を迎える。

 

 食事は合間に食べる感じだった。

 あらかじめ、簡単に食べられるようなホットドックやサンドイッチ、たこ焼きなんかを、裏方の人が他のクラスの売店で買っておいてくれたから、少し抜けて食べたんだ。


 ジェミニとリリィと休憩が重なったから、疲れて無いか聞いたんだけど、


「こんな事で疲れるわけ無いでしょう?」

「そうですよシュン様。わたくし達は、長い旅に出ていたのです。殆どが馬車や徒歩の。体力はこちちらの人とは比べ物になりませんよ。それに、人との応対なんかも、慣れ居ますでしょう?たいした疲労はありません。」


 まぁ、そうだろうね。

 だって、僕も疲れていないしさ。


 昨日は逆に同じ学校の人って事で、応対に変に気を使ったから若干疲れたんだけど、今日は一般客だから、余計な事を考えなくて良くて気が楽なんだ。

 ・・・こんなの僕だけかもしれないけどね。


 休憩後はフル回転。

 でも、そんな時、予想外の事があったんだ。


「なぁ?一人なんだろ?良いじゃん。」


 そんな声が響く。

 廊下がちょっとざわついてるみたいだ。

 なんか揉め事かな?


「うっさい!ほっといて!!」


 女の子の声。

 どうも、他の一般客が、絡んでるみたいだ。

 ていうか、この声どっかで聞いたことがある?

 知り合いかな?


「気になる?」


 僕が廊下の方を見ていると、クォンがそんな事を言ってきた。


「多分、運営の人が止めるとは思うけど・・・」

「・・・仕方が無いなぁ。行っておいで?」

「ありがとう。ちょっと行ってくるね?」


 僕は美嘉と美咲さんに目配せしてから廊下に出た。

 

 廊下では、少し柄の悪い他校の高校生位の人達4人が、帽子を目深に被ったメガネの女の子の手を掴んでいた。

 女の子は、一見は目立たない感じだったけど、服装がスラッとしたスタイルの良さを醸し出している。

 やっぱり見たことない・・・かな?

 気のせいか・・・


 男たちを見てるから、顔は良くわからないや。


「離しなさいよ!」

「まぁまぁ、そんなピリピリすんなよ。仲良くしようぜ?仲良くさぁ。」


 女の子の怒声と男達のニヤニヤとした声。

 早く止めてあげないと!


「すみません。ここでの騒ぎはやめていただけませんか?」

「!?」

「あ”あ”?良い子ちゃん学校の奴らは黙ってろよ。引っ込んでな!・・・ていうか、ガキンチョじゃねぇか!いじめちまうぞ〜?」

「「「ぎゃはははは!」」」


 僕はため息をつく。


「これ以上騒ぐのであれば、取り押さえますからね?」

「なんだと!?やってみろや!」

「じゃあ、遠慮なく。」


 僕は一気に女の子の手首を掴んでいる男との距離を詰める。


「うぉ!?」

「えい。」

「痛ってぇぇ!?」


 僕は男の腕に手刀を打ち、女の子から手を離させる。


「離れてて。」

「っ!!」


 女の子は、顔をうつむかせて頷き、僕から離れた。


「てめぇ!殺すぞ!」

「無理だと思うよ?」

「うがっ!?」


 男の仲間が殴りかかって来たので、そのまま投げ飛ばす。

 男は、廊下に背中を打ち付け、痛みで動けなくなった。


「まだやる?」

「このぉ!」


 もう一人も蹴っ飛ばして来たので、そのままその足を掴み・・・


「はな・・・ぎゃ!?」


 ダンッ!!


「ひぃっ!?」


 一歩踏み込んで軸足を刈って、転んだところに、顔の横をわざと音を立てて踏みつける。


「こう見えて、僕、結構強いんだよ?ちなみに、このクラスの中には僕と同じくらい強い人が、あと何人かいるんだけど、まだ騒ぐ?」

「っく!!くそっ!見せもんじゃねぇぞ!?どけっ!!」


 男たちは、そのままじりじりと下がって、悪態をついて走り去っていった。


「・・・すごーい・・・噂は本当だったんだ・・・」

「流石はハーレムキングなだけはある・・・」


 周囲の生徒が感心した声。

 ・・・ちょっと不本意なのも混じってるし。


 先生たちが走って近寄って来てる。


「瀬尾!大丈夫か!?」

「あ、はい。騒いでいた人達には丁重に帰って頂きました。もう、大丈夫です。」

「そ、そうか。お前が強いのは例の映像で知ってはいたが・・・怪我は無いな?」

「勿論です。あ、そうだ!君も怪我は無い?」


 こくん

 女の子に問いかけると、女の子はうつむいたまま頷いた。


「そうか。あ〜、君、うちの生徒じゃないな?被害を出すのであれば、職員室まで・・・」


 ぶんぶん

 女の子は首を横に振って応じなかったので、先生はそのまま見回りに映っていった。


「さて、災難だったね。お詫びじゃないけど、楽しんでいってね?それじゃ。」

「あ・・・あの・・・!」

「ん?・・・て、うわぁ!?」

「っ!?」


 女の子に背を向けてクラス内に戻ろうとしたところに、いきなりの衝撃。

 そちらを見ると、


「シュンくん良い子♡」

「シューくんさっすがぁ!」

「シュン様、お怪我は・・・あるわけありませんか。」

「まぁ、そうだろうな。何せシュンだからな!」


 ジェミニ、クォン、リリィ、ラピスが僕をもみくちゃにした。

 そして、さらに、


「瞬様、お見事です。」

「まったくね。格好良かったですよ。流石は私の瞬さん。」

「美咲、違うでしょ?あたし達のシュン、よ?」


 美玲さん、美咲さん、美嘉が出て来て、僕の頭を撫でる。


「ちょ、みんな恥ずかしいからやめてよ!」

「何よ。いつもの事じゃない。なんなら、もっと凄い事、する?」

「しなくて良いです!」


 まったくもう!

 こんないっぱい人がいる中で・・・うん?

 さっきの子が、なんかこっちを見ながらわなわなしてる?

 どうしたんだろう?


「君、本当にだいじょう・・・」

「あ、あんた何やってんのよ!!瞬!!」

「ふぇ!?・・・って、ん・・・?あれ!?美玖みくちゃん!?なんでここに!?」

「「「「「「「!?」」」」」」」


 なんでここに従姉妹の美玖ちゃんが!?

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