閑話 旅行の後 side美咲

 瀬尾さんと挨拶を交わした旅行の後、私は調査を続けると共に、転校の手続きを進めています。

 

 ですが今、お父様に呼び出され、お父様の執務室に来ています。


「・・・美咲。お前、本当に転校するつもりなのか?」

「ええ、お父様。」

「だがな?お前が転校しようとしている学校を調べたが、とてもお前が通うに値する学校とは思えんが・・・」


 お父様は苦い顔をしています。

 いくら瀬尾さんのいる学校が進学校だといっても、今の女学院からはかなり偏差値が下がりますからね。

 ですが・・・


「お父様。私は宣言した通り、あの方・・・瀬尾さんを手に入れます。その為に、必要なのです。」

「だが、その瀬尾という男に接触するだけであれば、転校までしなくても・・・」

「お父様。この報告書をお読み下さい。」


 私は、調査結果をお父様に渡します。

 そして、お父様が読み終えるのを待ちます。


 お父様は、全て読み終えた後、私を見ます。


「・・・ここにある事は、本当の事なんだな?」

「勿論です。」

「・・・桜咲美嘉。なるほど、強敵だな・・・それに、轟をして勝てないと言わしめる瀬尾瞬、異世ジェミニ、異世久遠、リリィ・グランファミリア、ラピス・グランファミリア、か・・・これが本当であるとしたなら、恐るべき事だな。何せ、轟は・・・」

「はい。美玲は直接戦闘では、『周防』で一番なのですから。」

「ううむ・・・信じがたい、が・・・」


 お父様は、私の背後にいる美玲を見る。

 美玲は、


「お館様。そこにあるのは事実です。私では、彼らに勝つことは叶いません。おそらく、銃を持っていたとしても。」

「え!?」

「何!?」


 この言葉には、私もお父様も驚きました。


「私は、訓練で銃の取り扱いもしています。ですが・・・仮に所持していたとしても、彼らに勝てるビジョンが浮かびません。根拠は、こちらです。」



 美玲は、タブレットをお父様に差し出しました。

 そこには、遠方から撮影した、彼女らの水着姿がありました。

 ああ、あれを見せるのですね。


「これは・・・確かに美しい娘達だな。これがどうした?」

「どうぞ動画を再生して下さい。」


 動画が流れます。

 内容は、彼らのビーチバレーの様子。

 

「・・・なんだこれは?どういう動きだ?何故こんな動きが出来る?」


 困惑したお父様の呟き。

 動画には縦横無尽にビーチコートを駆ける彼女達や瀬尾さん。


「ご覧の通り、動きづらい砂浜でこれだけの動きが出来るのです。はっきり言って、オリンピッククラスの選手だとて、このようには動けません。」

「・・・ううむ。」

「そして、次の動画も御覧ください。」


 え?

 次の動画ですって?

 それは知らないけれど・・・


「それは、昨日彼らが祭りに行った時、偶然撮影されたもののようです。先程、私の手に届けられました。お嬢様もまだご覧になっておられないでしょう?どうぞご覧下さい。」


 お父様と横並びになり、動画を見る。


「・・・何!?これだけの体格差をものともせず・・・一蹴だと!?」

「・・・格好良い・・・」


 あ、思わず心の声が漏れちゃいました。


「ちなみに、それと共に一つ情報が上がっています。その投げ飛ばされた男は、プロのライセンスを取得しています。」

「「!?」」


 嘘・・・凄いわ瀬尾さん・・・


「・・・とんでも無い、な・・・」


 あ、いけない。

 つい、瀬尾さんに見惚れてしまいました。

 お父様は『周防』の後継者として勉強だけではなく、運動も護身術も最高レベルの教育を受けています。

 当然、そこらの格闘家に負けないくらいの力は有しています。

 勿論、私もです。

 ですが、その私達から見ても、瀬尾さんは異常なくらい強いです。


「お父様。見ての通り、彼らは普通ではありません。その出自も瀬尾さんと桜咲美嘉以外はわかりません。ですが・・・」

「ふむ・・・なるほど。」


 お父様の目の色が変わりました。

 私の言いたいことが分かったようです。


「分かった。であれば、思う存分やればいい。で、もし可能ならば・・・」

「ええ、彼女達も『周防』に取り込みます。」


 まぁ、これは無理強いはしません。

 そんな事をすれば、瀬尾さんに嫌われてしまうでしょう。

 あくまでも私の目的は瀬尾さんですから。


「では、私は夏休み明けに転校しますので。」

「分かった。存分にやりなさい。」

「はいっ!」


 私と美玲はお父様も部屋を後にします。


 さて、まだまだ私の夏は終わりません。

 やるべきことは山程あります。

 

 頑張りましょう。

 瀬尾さんとの未来の為に。

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