第25話 ジェミニも学校に通う事になりました

「・・・うう・・・眠い・・・」

「ほら、シュン!しっかりとしなさい!」


 眠い・・・眠いよ・・・

 僕は欠伸あくびを噛み殺す。


 衝撃の部屋割りから三日後、今日は金曜日。


 結局、僕はほとんど夜は眠れていないんだ。

 宣言通り、美嘉も、クォンも、ジェミニも、寝る時は誰か一人が僕のベッドで一緒に寝ている。


 勿論、何も無い。

 無いけど・・・匂いや、たまに寝返りなんかで触れちゃう感触、寝息、寝言、どれも僕の神経を高ぶらせるんだよ・・・

 そして、だいたい気がつくと、僕は抱きまくらにされている。


 3人ともそれは同じだった。

 

 ・・・はぁ。

 みんな魅力的だから、きついよ〜・・・


 僕だってこんな見た目だけど、男なんだよ?

 だから、可愛かったり、綺麗だったりする女の子と寝るなんて、緊張しちゃうのに。


 でも、明日はアルバイト初日なんだよね。

 寝不足で働けないなんて駄目だ。

 どうしよう・・・

 あ!そうだ!これなら・・・



 学校を終え、僕らは家に帰る。

 ジェミニは、日中は耳を幻惑の魔法で変え、図書館に行ってる。

 人目を引く容姿だけど、魔法で周囲からの認識を薄めて、人目につかないようにしているらしい。

 流石は大賢者だね。


 ちなみに、ここ数日みんなで話し合って決まった事がある。


 一つは、ジェミニの家での仕事。

 それは、お風呂を除く掃除だ。

 方法は任せている。

 一応、こっちの世界での掃除方法を教えてあるけれど、魔法でやってもらっても構わない。

 そこはジェミニの判断で。


 もう一つは、ジェミニの今後だ。

 希望を聞くと、


「私も、シュンくん達と一緒に学校に行きたいわ。」


 との事。

 学校か・・・ジェミニは、クォンと違って、一見すると大人のお姉さんだからな・・・どうしよう?


 なんて思ってたけど、そこは考えがあるらしい。

 それは、僕が魔王との決戦以前に、攻略した遺跡から発掘された『若返り薬』を使用する事だった。

 僕はすっかり忘れていたんだけど、ジェミニはしっかりと覚えていた・・・というか、ジェミニによれば、もし僕とその・・・つ、付き合ったりしたら、それを使用して同じ位の年齢になるつもりだったんだって。


 どうやって薬で年齢を調整するのか僕にはわからないけれど、そこは大賢者、魔法との併用によって可能らしい。

 というか、どうもそれをそのまま使用するのでは無くて、それを触媒にマジックアイテムを作り出すつもりらしい。


 凄いよね・・・流石はジェミニだ。


 今、午前中は図書館、午後からはその作業をしているんだって。


 美嘉は、ジェミニの要望を叶える為に手続き中。

 近日中に戸籍を得て、編入試験を受けるらしい。


 ・・・多分、一緒のクラスなんだろうなぁ・・・






 そして、翌日。


「「「いってらっしゃい。頑張ってね」」」

「うん、行ってきます!」


 僕は朝からアルバイトです。


 結局、睡眠については裏技を使ったんだ。

 それは・・・


「魔法で眠らせて欲しい?」

「うん。このままじゃ眠れないから・・・」


 僕は、ジェミニに頼み込んで魔法で寝させてもらったんだ。

 おかげでぐっすりだったよ。

 疲れも取れている。


 でも、僕には気になる事がある。

 

 なんで、3人とも、ちらちらと僕を見てくるの?

 心なし、視線が下半身に行ってるような気もするんだけど・・・気のせいかな?

 顔色も、少し赤い気もするけど・・・

 気の所為かな?





「お!?来たな?今日は頑張れよ!」

「はい!!」


 僕は、現場監督だった木内さんの勤める会社の事務室に来ている。

 そして、契約書の締結と、説明を受ける。


 事務員さん達は、僕が小柄なのもあり、心配そうにしている。

 大丈夫だけどね。



 


「おつかれさん!やっぱすげえな瞬!充分やってけるどころか、即戦力だぜ!これからもよろしくな!」

「はい!これからもよろしくお願いします!」

「おう!」


 結果は上々。

 他の作業員さん達からは高評価だった。

 アルバイトは、僕が希望する時に現場があれば、日雇いで雇ってもらえることになったんだ。

 勿論、希望日以外で、木内さんがヘルプが欲しい時にも、連絡してくれる事になっている。

 これから頑張ろう。



「「「お帰り〜!!」」」


 自宅に帰宅すると、みんなで出迎えてくれた。

 そして、あれこれと世話を焼いてくれている。

 でも・・・


「シューくん!マッサージしてあげる!やりやすいように裸になって!その方が筋肉の状態がよくわかるし!」

「ク、クォン?しなくて良いよ?」

「シュンくん?背中を流してあげるわね?ああ、前も流すから安心してね?」

「ジェミニも!?何言ってるのさ!!しなくて良いです!」 

「シュン!疲れてるだろうから、寝る時に抱きしめてあげるよ。人間は抱きしめられると、幸せ物質を脳内から出すんだってさ。だから、協力してあげるわ。」 

「美嘉まで!?い、良いよそこまでしてくれなくても。」


 みんなからの申し出を必死で断る。

 ・・・というか、そのせいで余計に疲れるんだけど・・・


 どうかわかって欲しい・・・無理かなぁ・・・

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