第24話 同居人(隣の家)が増えた結果、寝られなくなりました

「さて、それじゃ取り敢えず僕達は学校に行くとして・・・あ、でもジェミニ一人で留守番も可愛そうだね。それじゃあ、クォンの時は美嘉が色々気を使ってたから今度は僕がジェミニと二人で留守番を・・・」

「「却下!!」」

「・・・え〜?なんでさ。」


 気を使ったつもりが、美嘉とクォンの二人に凄い剣幕で却下されちゃった。

 なんでだろう?


「あら?私はシュンくんと二人でも良いわよ?というか、二人の方が色々都合が良い・・・」

「「絶対だめ!!」」


 何故か僕を見ながらそういうジェミニに、またしても美嘉とクォンが噛み付いてる。

 ・・・でも、僕もなんでか、今のジェミニの視線に捕食者のような色が見えた気がする。

 思わず背筋がゾクッとしちゃったよ・・・

 本当になんでだろう?


 というか・・・なんかジェミニの性格が明るくなった?

 ・・・というか、こんなにテンションの高いジェミニを見るのは初めてだな。

 僕の印象にあるジェミニは、いつも冷静沈着で、僕達を見守ってくれるお姉さんって感じなんだけど・・・


「まぁまぁ二人共、そんなにプンプンしないの。ちょっと私にシュンくんを預けてくれたら、ちゃんと二人も満足出来るようにしてあげるから・・・」

「ジェミニ〜!そなたは昔からそうだ!その冗談とも本気とも取れるのやめい!!妾をからかうな!!」

「そうだよジェミ姉!というかジェミ姉、包容力のあるお姉さんキャラはどこ行ったんだよ!そんなの旅で見たこと無いよ!?」

「あら?あるでしょ包容力。こ・こ・に♡」


 ジェミニが自分の胸を寄せて持ち上げてる。

 ・・・す、凄いや・・・凄く重そうだけど、柔らかいのか形がぐにゅりと変わって・・・

 はっ!?


 僕がじっとその様子を見ていたのが3人にバレちゃった!!

 

「シュン!やっぱりお主は駄目だ!このような危険な女と二人きりにさせられるか!!妾が学校を休んで色々打ち合わせしておく!お主は学校に行け!!」

「うん!シューくん!早く準備して!ミカ!ジェミ姉を見張っててね!!」

「あら、酷いわ。・・・クスクス。」


 ・・・う〜ん?

 もしかして、これがジェミニの素なのかな?

 でも、素を見せてくれるくらい信用してくれているのは素直に嬉しいな。




side美嘉


 などと、シュンは思っておるのだろうな。

 今は、ジェミニと二人。

 シュンとクォンは学校に行った。


「・・・まったく、ジェミニ、そなたは昔からそうやって妾をおちょくりよって・・・あやつらにどう接していたか知らぬが、本当のそなたは、好きな事にはとことんのめり込み、なんとしても手中に入れるし、計算高さとしたたかさをもっておる怖い女だと言うのにのう。妾と仲を深める時の事、忘れておらぬぞ?」

「うふふ・・・ちょっとシュンくんやクォンに会えた事で舞い上がっちゃったわね。勿論、あなたに会えた事もよ・・・アルフェミニカ。・・・本当に、良かったわ・・・また、会えて・・・争わずにすんで・・・ごめん、ごめんねぇ・・・」


 妾を抱きしめ、嗚咽を溢しながら呟くジェミニ。

 ・・・はぁ、やれやれ。

 妾もジェミニを抱きしめる。


 こやつは、本当は寂しがり屋で、心優しいのだ。 

 本当は、いくら世界やシュンの為だとはいえ、妾を害したくは無かったのだろうな。

 

「・・・こちらこそ、すまぬ。妾も・・・止まれなかったのだ・・・」


 頬に冷たい感触が流れる。

 どうやら、目から涙が流れているようだな・・・妾も。

 ・・・すっかり弱くなってしまったな、妾も。





 落ち着いてからは、妾とジェミニで今後の打ち合わせをした。

 基本的な流れは、クォンと同じで良いだろう。

 クォンの血縁者としよう。

 ・・・ちょっと肌の色や造形が違うが、従兄弟にすれば良い。

 無理があるか?

 まぁ、なにかあれば魔眼でなんとでもしよう・・・いや、こやつは魔法が使えるから自分でもどうとでもなるか。


 妾はすぐに母に連絡を取り、ジェミニの件を納得させる。

 いぶかしがられる事は無い。

 何故なら・・・母は妾に心酔しているからな。

 妾の言う通りにすれば、それが益になる事をよくわかっておるし。

 そういう関係を、この17年で築いたのだから。


 一応、ジェミニにもクォンの時と同じ知識伝授の魔法を使用した。

 これで、常識や知識は問題が無い。

 言葉は・・・


「あら?大賢者はだてじゃないわよ?知識さえあれば、なんとでもなるわ。」


 自前の魔法と知識欲、それとその頭脳でなんとかするだろう。

 妾は、ジェミニを超える賢きものを見たことが無いからな。


 この後は、当面の予定を二人で組み、生活雑貨や服の買い出しをしてから、シュン達の帰りを待つ。

 そして、そこで一つ決めた事があった。

 きっとクォンも反対すまい。

 否、するわけが無い。

 くふふふふ。





side瞬


 学校が終わり、下校中。

 僕を雇ってくれる現場監督さん・・・木内さんから電話が来た。

 どうやら、週末に説明がてら、日程を組んでくれたみたいだ。

 まずは、お試しって事で。

 そこで問題なければ、正式に採用してくれるんだって!

 頑張ろっと!


「「ただいま〜」」

「「お帰りなさい」」


 ・・・当たり前のように、僕の部屋にいるね。

 別に良いけどさ。


 夕飯はすでに作ってくれていて、掃除なんかもジェミニへの説明がてらしてくれていたみたいだ。

 ありがたいね。

 

 そして、夕飯の最中、とんでもないことを言い出した。


「さて・・・同居人も増えた事だし、部屋割を考えました!!」


 美嘉が明るくそう言った。

 あ、部屋の関係があったか。

 どうするんだろ?

 でも、なんで丁寧語?


「この分譲マンションは、4LDKです。だから、あたしの家は寝室一つと、あとの部屋は各自の着替えや荷物、持ち物を置こうと思います。」


 ふむふむ。

 確かに、女性用の着替えなんかを僕の部屋に置かれたら、困るね。

 主に僕が。


「で、あたしの寝室用のその部屋は、定員は二人です。」


 美嘉が指をさした僕の部屋と続きの部屋は、ベッドが2つ置かれており、定員は二人だろうね。

 あれ?

 それじゃジェミニはどこで寝るの?


「だから、ローテーションで、あたしの部屋に二人、もう一人はシュンのベッドで寝る事とします。」


 え!?

 僕は!?

 僕はどこで寝るの!?


「シューくんはどこで寝るのさ?」

「ん?シュンはそのままだよ?」


 ・・・は?


「・・・聞き間違えたかな?僕の部屋は一個しかベッド無いよ?」

「うん。だから、シュンと二人で同じベッドで寝ます。」

「・・・ええ〜〜〜〜!?」


 何言ってんの!?

 僕、男だよ!?

 そんなのクォンもジェミニも納得するわけ・・・


「あ!なるほど!それ良いね!!さんせ〜い!!」

「ええ〜〜〜〜!?」


 なんで賛成してるのクォン!?


「シュンくん、勿論私も賛成だからね?」

「えええぇぇぇぇぇぇ!?」


 ジェミニまで!?


 僕が愕然としていると、美嘉がぽんと肩を叩く。

 僕がそちらを見ると・・・凄く悪い笑顔をした美嘉が、そんな僕を見て・・・


「シュン?勿論拒否権は無いから。」

「いやいや!だってさぁ!!そんなの・・・」

「・・・あんまりダダをこねると・・・寝てる時裸で忍び込むよ?みんなで。」

「・・・」


 ・・・ええ〜?

 もうちょっと貞操を気にしようよ。

 女の子でしょ?

 勿論、僕にそんな事をする気は無いけど・・・


「で、でも・・・」

「シュン?」


 それでも難色を示していると、美嘉がズイッと顔を寄せる。

 綺麗な顔がぐっと近づき、思わず顔が赤くなる。


「な、に・・・」

「あんまり男らしくないこと言うでない・・・犯すぞ?」


 ・・・魔王だあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!

 やっぱり、この子魔王だ!!


「それとも、第二次魔王大戦を始めるか?今度はお主の仲間は妾の手中ぞ?」


 僕がクォンとジェミニを見る。

 すると、二人は美嘉の横に移動し・・・


「悪の四天王が一人!妖狐クォン!シューくんの貞操はアタシのモノだ!」

「同じく、悪の四天王が一人、悪魔元帥ジェミニ!シュンくん?あなたを私色に染めてあげるわ♡」


 ノリノリでポーズとセリフを決めてた。


 ・・・なんで、二人ともそんな知識あるの?

 美嘉は、一体どうやって二人に知識の伝授をしてるの?

 僕にはわからないよ・・・ 

 

 こうして、僕こと勇者シュンは、新生魔王軍に屈する事になった。


「最初はあたし〜♡」


 熾烈な争い・・・じゃんけんの結果、初日の今日は美嘉が一緒に寝ることに。

 勿論、僕は何もしていないよ?

 ・・・匂いと感触、寝息なんかの音で、一睡もできなかったけどね・・・

 はぁ・・・

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る