第17話 美嘉の謎が解けました

 色々とひっかかる事はあったけれど、当面の方針が決まり、さっそく予定通り、クォンはお風呂掃除、僕は初回なのでその補助で、美嘉は夕飯を作る事になった。

 すでに日中に買い出しは済ませていたらしい。


「・・・こうやって掃除するんだよ?」

「うん、わかった。じゃあ、これからはこれがアタシの仕事だね!了解!」


 洗濯は、基本平日は朝にやって部屋干しし、休日に外に干す事になった。

 異世界の洗濯とは何もかもが違うけれど、まぁなんとかなるでしょ。

 ぶっちゃけこっちの世界の方が簡単だしね。

 機械の操作方法だけ覚えたらさ。


 そうこうしている間に夕飯となる。

 

「「「いただきま〜す!!」」」


 クォンは、異世界で一緒に旅をしている間に『いただきます』や『ごちそうさま』の概念は説明してあるし、その後は僕と同じ様にしていたから、違和感は無い。


 三人で美嘉の料理に舌鼓を打つ。

 ・・・美味しい。


「ミカ!すっごく美味しいよ!!」

「・・・うん。僕もそう思う。凄いね。」

「えへへ・・・一生懸命練習したんだよね〜!そう言ってくれて嬉しいな!」


 僕とクォンが手放しで褒めると、美嘉は照れくさそうにそう笑った。

 ・・・可愛い・・・はっ!?僕は何を!?


「・・・シュン、どうしたの?」

「な、なんでも無いよ!?そ、それよりも・・・あ!そうだ!美嘉ってなんで魔王の力と記憶を持ったまま転生できたのさ!まだ教えて貰ってないよ!!」

「あっ!!それアタシも気になる!なんで!?」


 うう・・・必死に誤魔化したけれど、気になってるのも事実。

 

「あ、そう言えばまだ話してなかったね。あのね?」


 ・・・どうやらうまく誤魔化せたみたいだ。

 可愛いなって思ったなんて、照れくさくて言えないよ・・・


「あたしがシュンに止めを刺された後、あたしの魂は神の前にあったの。それで・・・」


 美嘉の説明で、この時の神様とのやり取りの様子がわかった。

 それはこんな感じだったんだって。





・・・ここは?


『ここは神の管理する場所だ。』


・・・ほう?なれば、貴様がグランファミリアの神という訳か。


『そうだ。魔王アルフェミニカよ。』


 ふむ・・・妾は消えるのか?


『・・・私は、勇者シュンと約束をした。そなたの魂を救済するとな。やれることは限られているが、何を望む?消滅が望みなら叶えよう。』


 ・・・なるほどのぅ・・・勇者は・・・シュンは妾の魂を救済すると約束していたのか。


『そうだ。彼は、最初そなたの討伐を拒否していた。だが、そなたを殺さねばあの世界が滅びる事を告げ、あの世界の者の為に、そしてそなたの魂を救うことを条件に、召喚に応じてくれたのだ。』


 ・・・くっくっく。

 どこまでも優しき男よ。

 やはりあやつしかおらぬな。

 妾の伴侶にはな!


『私は、彼に感謝をしている。だから、よほどの事がなければそなたの願いを叶えようと思う。・・・何を望む?』


 そうだな・・・妾が望むのは、この記憶と力を持ったまま、シュンの世界に転生する事だ。


『・・・何?』


 見ておったのだろう?最後の戦いを。

 ならば知っていよう。

 妾はあやつに惚れたのだ。

 女としてな。

 妾の願いは、争いの無い世界であやつと添い遂げることじゃ。


『・・・』


 出来ぬのか?


『・・・可能だ。しかし、それがかの者に迷惑をかけるのであれば別だ。記憶はわかる。しかし、何故、力が必要になる?』


 簡単な事だ。

 シュンを守る為だ。

 あの男は甘い。

 底抜けにな。

 人の悪意をも受け止めるであろうよ。

 で、あれば、それから守るのは妾の仕事だ。

 それとも、お前はシュンが人の悪意から苦しむのがお望みか?


『・・・』


 シュンに出来ぬ事も、妾なら出来る。

 それに、シュンがもし力を持ったまま元の世界に戻るのならば、なおの事必要となるだろう。

 力の発散の為にな。

 大きな力を持つ者は、適度にその力を発散させねば、心に淀みが溜まるものよ。 

 今まで世界を見てきたお前ならば、わかるだろう?


『・・・ああ。』 


 ならば、妾がその力の受け口になってやろう。

 

『・・・そなたが、彼の世界に迷惑をかけない保証が無い。』


 ふむ・・・それは確かにな。

 しかし、すでに身体は無いが、血に誓おう。

 その意味、神たるお前ならばわかるであろう?


『・・・魔族が血に誓う・・・それは誓約のそれと同じ・・・か。よかろう。ならば、そなたの願いを叶えよう。』


 よし。

 案ずるな。

 妾は本心からシュンの為に生きると誓う。

 それと・・・妾の転生は、シュンと同じ年にして欲しい。

 常識も必要となるからな。

 あやつを手助けするためには、妾はなんだってやろう。

 で、あれば、過去に遡ってきちんと生まれ変わって一からやり直した方が良いであろうからな。

 出来るか?


容易たやすい・・・とは言わぬが、可能だ。』


 ならば、それで頼む。


『わかった・・・最後に2つ。魔王アルフェミニカよ。すまなかった。そなたは、悪くない。このような形になってしまい、申し訳ない。』


 ・・・それはもう良い。

 シュンと出逢えたからな。


『そして、そなたの予想どおり、彼は力をそのままに戻る事になった。だから・・・彼を支えてやって欲しい。』


 ああ。

 それは間違いなく。


『では、頼む。次は幸有る人生を。』






「・・・て感じ?」

「軽っ!?」

「へ〜・・・神様がねぇ・・・」


 あっけらかんと話す美嘉。

 驚く僕とふ〜んって感じのクォン。


「まぁ、そこから生まれ直して、この世界の常識を知りながら、何が遭ってもシュンを守れるように、力の把握やお金を稼ぎながら今に至るってわけ。」


 なるほど・・・

 でも・・・それなら、僕は美嘉と神様に感謝しないとね。

 だって、寂しい僕を救ってくれているんだからさ。


「・・・ん?どしたのシュン?」


 ちょっとしんみりしちゃった。

 そんな僕を不思議そうに見ている美嘉。


「・・・ん〜ん。ありがとね美嘉?僕を追いかけてくれて。」


 僕を救ってくれて。


「・・・良いのよ。だって、シュンはあたしも救ってくれたしさ?おあいこよ!」


 照れくさそうにしている美嘉。

 ・・・僕も、自分に出来ることで、美嘉を守ろう。


「ちょっとシューくん!アタシは!?」


 そんな僕と美嘉にムスッとしたクォンが割り込んできた。

 僕と美嘉はお互いに顔を見合わせ・・・破顔した。


「あはは!勿論、クォンにも感謝しているよ?追いかけてくれてありがとうね?」

「な、なら良いけど・・・ちょっとミカ!なんで笑ってるの!!」

「だって〜、今のクォン面白かったんだもん。・・・ちょっとクォン拗ねないでよ〜。ほらほら!一緒にシュンを支えようね?」


 僕達は笑顔で食事を続けるのだった。

 神様、ありがとうございます。

 僕にとっては、美嘉がこちらに来られたのは、1番のご褒美でした。

 感謝します。

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