第13話 和解しました

「・・・そっか。シューくんが、アタシ達を裏切った訳じゃ無いのはわかったよ・・・」


 クォンは顔を上げ、そう言った後、美嘉を見た。


「魔王。」

「なんだ。」


 美嘉が魔王モードのまま答える。


「今度ちょっと話がある。」

「・・・良いだろう。聞いてやる。」


 それだけの会話。

 そして、クォンは僕を見た。


「シューくん・・・取り敢えず今日は帰って。そして、また明日来てくれるかな?」

「・・・うん、わかった。ご飯とかは大丈夫?」

「大丈夫だよ。・・・シューくんはやっぱり優しいね。」

「・・・普通だよ。それじゃ、今日は帰るね?」

「うん。また、明日。」

「うん、また明日ね。」


 僕は美嘉と山を下る。

 人払いの魔法は、明日まで解かない事になった。

 その方が、安全だからね。

 

「・・・良かったぁ・・・クォンが無事で。」

「・・・そうだね。」


 美嘉の声はまだ硬かった。

 そうして、僕達は明日また山に来る事にして、帰宅したんだ。







side美嘉


「さて・・・行くかな。」


 今は、午後11時だ。

 既に、シュンは寝ているだろうね。

 あたしは、転移魔法を使用し、山へ飛んだ。


「・・・来たな。」

「・・・ああ、来たとも。」


 あたしの目の前には、険しい表情をした、狐娘がいる。

 その身体からは殺気がダダ漏れだ。

 頭の芯が冷え、すぐさまアルフェミニカモードになる。


「それで?話とはなんだ?」

「・・・あんたの目的は何?なんでシューくんに近づいた?」

「ふむ・・・妾がシュンを送還した理由と同じだ。」

「送還した理由?」

「ああ、そうだ。お主らに嫉妬したのだ。」

「・・・つまり、シューくんを好きって事ね?」

「ああ、そうだとも。妾はシュンを愛している。」

「・・・そう。」


 一瞬、狐娘の殺気が揺らぐ。

 その表情はホッとしていた。

 おそらく、悪意を持って近づいたのでは無いことに、安堵したのだろう。

 しかし、すぐにまた表情を戻し、膨大な殺気を出した。


「・・・アタシと勝負して。」

「ほう?」

「アタシと勝負して、アタシが勝ったら、シューくんに近づくな。」

「・・・良いだろう。ならば、妾が勝ったら、妾の言う事を聞いて貰おうか。」

「・・・良いわ。じゃあ、尋常に、勝負!!」


 妾は、山を囲うように結界を構築する。

 これで、音や光は漏れない。

 それに、後で元に戻せる。

 

 戦いは激闘だった。

 狐娘は、妾と以前相対した時よりも、かなり実力を上げていた。

 だが・・・


「・・・くっ!?」

「甘いなぁ。」


 妾の敵では無い。

 妾の放った電撃の魔法が狐娘に直撃した。


「がぁっ!?」


 狐娘は倒れこんだ。

 どうやら、もう動けないようだ。


「妾の勝ち、で良いかの?」

「・・・負けたわ・・・」


 狐娘はなんとか仰向けになり、そう言った。

 妾は、復元魔法を使い、周囲の木々や地面、そして狐娘を元に戻す。


「・・・で、アタシはどうしたら良いの?殺す?」


 狐娘は晴れやかな顔をしていた。

 

「そんな事したら、シュンに嫌われてしまうわ。そうだのう・・・ならば、わらわを正妻と認めよ。さすれば、お主がめかけとなる事を許そう。」

「・・・え?」


 狐娘が驚いた顔をしている。


「のう、狐娘。妾は、シュンの苦しむ顔や悲しむ顔を見とうない。お主がいなくなれば、あやつは悲しむ。それに・・・すまなかったな。お主達の別れをさせずに送還してしまって・・・」

「・・・あんた・・・」


 妾が頭を下げた事に、狐娘はかなり驚いていた。


「あの時、初めて嫉妬をしたのじゃ。お主達にな。許せとは言わぬ。だが、謝罪を受け取って欲しい。」


 そう妾が言うと、狐娘は考えこみ、そして立ち上がり、


「許すよ。アタシはあんたを許す。そして・・・アタシも、シューくんが欲しい。だから・・・めかけで構わない。どうか、シューくんのそばにいさせて下さい。」


 そう言って、頭を下げた。

 すこにはもう、殺気は無い。

 

「ああ・・・許すとも。共に、シュンを支えようぞ。あやつは、この世界では辛い思いしかしていなかったようだ。だから、わらわ達で、あやつに幸せを与えようでは無いか。・・・って事でよろしくね?これからは、魔王モードじゃなくて、美嘉として話すから。だから、美嘉って呼んでね?」


 あたしがそう言うと、狐娘も笑顔になった。


「・・・うん。これからは、アタシの事も、クォンって呼んで欲しい。」

「わかったわクォン。これからよろしくね?あ、どうする?今日、あたしの家に泊まる?」

「いや・・・今日はこのままここに居るよ。明日から、よろしく!」

「ええ、よろしく。」


 あたし達は共に握手した。


 これで、シュンを更に幸せにできそうだ。

 クォンは信用出来る。

 少なくとも、シュンの事については。

 

 シュン、良かったね?

 嫁が増えたよ?





side瞬


 翌日。

 授業後、山へ行くと、クォンが待っていた。


「クォン!来たよ!!」

「シューくん!約束守ってくれてありがとう!」


 クォンは笑顔だった。

 

「クォン一人で来たんだよね?これからどうしようかな・・・」

「それなら、あたしの家に来ると良いよ。」


 クォンの家について考えていると、美嘉がそう言った。


「クォンもそれで良い?」

「うん、ミカの家に行くよ。」


 ・・・あれ?

 なんか仲が良すぎない?

 二人して笑顔でいるし。

 名前で呼び合ってるし。

 ・・・なんだろう?

 なんか背筋に寒気が・・・気の所為?


「「うふふふふ」」

 

 あ、やっぱ悪寒がする。

 なんでだろう?

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