第14話 今後の方針を決めました

「さて・・・これからどうしようかな・・・」


 とりあえず、クォンは向こうの世界の恰好だったから、美嘉の転移で僕の部屋に移動する。

 まず、それぞれの部屋で入浴を終え、寝間着に着替えた。

 勿論、クォンは美嘉の部屋のお風呂を借りていたよ。

 そして、入浴後は美嘉の服を借りたみたい。


 スウェット姿のクォン・・・なんか不思議な感じだな。


 その後は、簡単に食事を食べながら、今後について話し合うことにしたんだ。


「クォンはどうしたい?」

「う〜ん・・・」

「こらこら、シュン、とりあえず、クォンがどうやってこの世界に来たのか聞くのが先でしょ?」

「あ!?そうだった!!クォン、どうやって来たの?」

「あ、それ?あのね・・・」


 クォンから聞いたこの世界への移動。

 それを聞いて驚いちゃった。

 知らなかった・・・そんなダンジョンがあったなんて・・・

 美嘉も知らなかったようで、顎に手を当てて考え込んでいる。


「・・・てことは、他にも来る人がいるかもって事?」


 美嘉がそう呟くと、クォンはそれを否定した。


「無理だと思う。あのダンジョンはほとんど知られていないし、そもそも単独でクリア出来る人なんて限られてるし。アタシだってギリギリだったけど、それはアタシが近接型だったからだしね。アタシ達クラスなんて、それこそ後は、リリィとラピとジェミ姉くらいだけど、リリィとジェミ姉は遠距離型だし、ラピがリリィの側を離れると思えないし。」


 それはそうだろうね。

 ラピスは過保護な位リリアーヌにべったりだったしさ。

 

「ふむ・・・そう。なら、取りあえずはでは来ないのね。なら、緊急に考える必要は無いね。じゃあ、話を戻すね?何にせよ、考えなければならない最優事項、それは言葉をどうするか、よ。」

「あっ・・・」

「?」


 美嘉の言葉で僕は自分がいかに抜けていたのかを思い知った。

 クォンは小首を傾げているけれど。

 

 普通に喋ってはいるけれど、今、僕達は、グランファミリアの言葉で会話しているんだ。

 当然、この世界では言葉は通じない。

 どうしよう・・・あっ!?


「これで何とかならない?」


 僕は、アイテムボックスから一つの指輪を取り出した。

 それは・・・


「『言語理解』の指輪ね。」

「うん。そうなんだ。」


 これは、僕が召喚された時、言葉の通じない向こうの人たちに渡された物だった。

 でも、実際には僕は使っていない。

 何故かと言うと、僕の場合、神様からの要請で召喚に応じた時、おまけとして言語理解のスキルを貰っていたからなんだ。

 だからこの指輪は、貰ってすぐに、同じ様に神様に貰っていた、スキルとしてのアイテムボックスに入れておいたんだ。

 すっかり忘れてたよ。


「それがあれば・・・この世界の人とも話せるの?」

「うん。クォンもこれできちんと話が出来る筈だよ?あげるね。」

「良いの!?ありがとうシュン!!」


 クォンに差し出すと、クォンは受け取ろうとして・・・手を引っ込めた。


「クォン?」


 僕が訝しげに見ていると、クォンはにっこり笑って、


「シュンが填めて?」


 そう言って左手の指を広げて差し出した。


「むぅ・・・」


 美嘉がムスッとして、そう呟く。

 なんだろ?

 ま、いっか。


「それじゃどの指が良い?」

「あのね〜、アタシ左手の薬指「クォン、それは駄目」・・・え〜?ケチ・・・」


 クォンの言葉を遮り、美嘉がピシャリとそう言った。

 クォンはぷく〜っと膨れる。


 ・・・まぁ、左手の薬指は、こちらの世界と同じで、結婚していますって証明だからね。

 それはまずいだろうな。


「じゃあ、ここで。」

「・・・まいっか。ありがと、シュン!」


 僕は小指に指輪を填めると、指輪はすぐに縮んで小指に吸い付く。

 クォンはそれを擦ってニコニコになっていた。


「・・・ずるい・・・」


 ・・・なんだろ?

 美嘉からの圧力を感じるんだけど・・・


「ねぇ、シュン。」

「何?美嘉?」

「今度、指輪買って。安いのでも良いから!!」

「え!?」

「い・い・か・ら!」

「は、はい!」


 美嘉の剣幕に負けて、思わす頷いちゃった。

 

「よろしい!」


 対象的に美嘉はニコニコになる。


「あ〜!ミカずる〜い!」

「ふふん!」


 今度はムスッとしたクォンと笑顔の美嘉が視線で何やらバチバチとしている。

 ・・・なんなんだろうね?


「で、クォンはどうしたいんだっけ?」


 僕は、空気を変えるためにそう尋ねると、クォンはこちらを見て、考え込んだ。


「う〜ん・・・アタシはシューくんともう一度会いたかっただけなんだけど・・・でも、そうだね・・・シューくんが言ってた、ガッコウに行ってみたい!」


 ・・・学校、か・・・


「・・・あのねクォン。学校は勉強をする所だよ?あなた勉強するの大丈夫?」

「う”・・・」


 美嘉がそう言うと、クォンは唸って動きを止める。

 

「・・・はぁ。仕方がないね・・・後で、あたしがなんとかするよ。シュン、それで良い?」

「え?なんとか出来るの?美嘉が良いなら、良いけど・・・」

「ホント?ありがとミカ!!」

「いいえ、どういたしまして。さて、そうと決まれば、取り敢えず、あたしの部屋に行きましょ?色々とすることもあるしさ。」

「・・・シューくんと一緒に寝ちゃダメ?」

「ダメに決まってるでしょ!クォンが寝るならあたしだって寝るわよ!!」


 え!?

 何言ってるの!?


「でも・・・」

「でもじゃない!行くわよ!シュン、また明日ね!」

「あ〜・・・シューくーん!また明日ね〜・・・あ〜・・・ミカ引っ張らないで〜・・・」


 美嘉とクォンが部屋から出ていく。

 ・・・なんだったの最後のは。


 まぁ良いか。

 それより・・・クォンが来てくれた。

 もう、会えないと思っていたから、嬉しいな・・・

 

 自分の世界を捨ててまで会いに来てくれて、ありがとうクォン。

 僕は、この日もぐっすりと眠れるのだった。

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