第12話 戦いになってしまいました
「どうして!どうしてシューくんが魔王を守るの!?」
クォンが僕に問いかける。
クォンは僕をに睨んでいる・・・けど、その瞳は涙に濡れていた。
「クォン・・・僕は・・・」
僕は、事情を説明しようと口を開きかけた。
だけど、
「決まっておろう?勇者は妾の手に落ちたのだよ。」
「美嘉!?なんで!?」
そんなクォンに、美嘉は嘲笑するように答えた。
僕は美嘉を止めようとした。
だけど、
「・・・お前には聞いていない・・・お前が・・・お前は喋るなぁ!!」
それよりも早く、クォンが高速で美嘉に突っ込んだ。
前より早い!?
そして接近すると、すぐにそのまま突きを打った。
「ふん!子狐が!!」
美嘉がクォンの突き出した拳を手で受け止める。
「お前!お前ぇ!!」
「カカカッ!!どうした子狐?こんなものか?」
目にも止まらぬ連撃を放つクォン。
美嘉は、その全てをいなしていく。
全ての攻撃をいなされ、クォンの表情が、苛立ったものになる。
「はぁぁぁぁぁぁ!!」
「ククッ!甘いなぁ!!」
クォンが蹴りを放つ。
美嘉はそれを魔力障壁で受け止め、そのまま手の平をクォンに向けた。
「そぉら!吹き飛べ!!」
「くぁっ!?」
美嘉が衝撃波を放った。
クォンは、それをもろにくらい、ふっ飛ばされていく。
木々をなぎ倒しながら飛ばされ、数十メートル位して着地する。
「どうした?その低度で妾に歯向かうつもりかの?」
「・・・くっ!負けるかぁ!」
クォンの戦意は衰えない。
そのまま分身しながら美嘉に飛びかかった。
クォンの分身、それは魔力と気を併用した幻術混じりのもの。
幻術の分身の中に、実体と、気を元にした攻撃力を持つ分身が入り混じるクォンのオリジナル。
普通であれば防ぎきれない。
そう、普通であれば。
「それは以前見たわ。」
だが、美嘉は魔王だ。
普通では無い。
全周囲に衝撃波を放ち、幻術による分身と、気による分身を消し飛ばす。
そして、残るのは実体だけ。
「そぉれ、そこじゃ!」
美嘉が手刀を振るう。
その手から、魔力の刃が放たれ、まっすぐとクォンに飛ぶ。
このまま行けば直撃だ!
クォンは躱しきれない!
これ以上は!
「そこまでだよ!二人とも!!」
僕は、聖剣を召喚し、美嘉の放った魔力の刃に振るい、消し飛ばしながら、クォンと美嘉の間に陣取った。
「シューくん!どいて!」
「・・・シュン、妾の邪魔をするのか?」
クォンと美嘉、双方からの言葉。
僕の答えは決まっている。
「どかないよ。これ以上やるのであれば、どちらも僕が相手になる!」
「・・・シューくん・・・」
「・・・ふん。」
僕の言葉に、クォンが戸惑いつつも動きを止める。
しかし、依然として構えは解かない。
美嘉も同じく、ムスッとして動きを止めるも、クォンへの構えは解かない。
「美嘉、それ以上は駄目だ。クォンは僕の大事な仲間だ。お願いだから、これ以上は止めて欲しい。クォン、ここにいる魔王は、今は僕の友達だ。これ以上はやめて?頼むよ。」
僕の懇願の言葉を聞き、美嘉は構えを解き、クォンは呆然とした。
「・・・ねぇ、シューくん。魔王は人間の・・・人類種の敵なんだよ?どうしてかばうの?あんな・・・あんな事されたのに!!」
クォンの瞳から、涙が溢れた。
あんな事・・・多分、送還の秘術の事を言ってるんだね。
「・・・クォン、聞いて?魔王はね?こちらの世界で生まれ変わったんだ。今は人間なんだよ?そして、こちらで僕を助けてくれた恩人なんだ。だから、どうか分かって?今は、悪いことはしていないんだ。」
なんとかクォンを
すると、その真剣さが伝わってくれたのか、クォンも構えを解いてくれた。
「・・・全部、話して。それから決めるから。」
「・・・うん、ありがとう。全部話すよ。」
僕は、こちらに来てからの事と、美嘉との出会い、そして、恩人とはどういう事なのかをクォンに説明した。
その間、美嘉は黙って聞いていた。
そして、全てを話し終えると、クォンは俯き、黙り込んだ。
そして・・・口を開いた。
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