第9話 激動の一夜が開けてからの学校で

「え〜、担任の林先生は、体調不良でお休みだ。それと、今後担任は変更し、副担任の私が担任の業務を代行する事となった。」


 登校して、朝のホームルーム。

 先生の言葉に、教室がざわつく。


「それと、本日から城島、浦崎、下切の3人は停学となる。ニュースを見たと思うが・・・城島については、今後登校するかどうかすらわからない状況だ。マスコミが校門前に多数いると思うが、君たちは相手にしないように。それと・・・瀬尾と桜咲は、昼放課に職員室に来てくれ。食事後で構わない。以上だ。」


 先生が言った言葉で、教室のざわつきはさらに酷くなった。

 ほとんどの生徒は、お互いに顔を見合わせ、ちらちらと僕を見ている。


 新しい担任の先生からの話、それは、どのクラスでもされたようで、学校内はその話で持ち切りみたい。


 はっきりとは報道されていないけれど、城島が逮捕されたらしい事は、見る人が見たらわかる。

 それに、誰よりもこの学校の生徒は、城島達の横暴さはよく知っている。

 誰も疑問に思っていないみたいだ。

 そりゃ、騒然となるだろうね。


 ちなみに、僕と美嘉に来る視線は様々だ。

 今まで、城島達の言うことに従い、僕を無視していた事もあり、バツの悪そうにしている人が大半だね。

 それもあって、僕にべったりの美嘉に話しかけてくる人も、かなり少なかった。

 もっとも、美嘉はまったく気にしていないけれどね。


「ふん!あんなクズどもに従っていたような奴らに、チヤホヤされてもまったく嬉しくないわ!」


 これは、登校中の美嘉のげん

 僕が、あいつらがいなくなったら、ますますチヤホヤされるんじゃないかって言ったら美嘉が言い放った言葉。


 美嘉は、他の人をまったく相手にしていない。

 常に、僕の側にいる。


 正直、僕はとても嬉しく思っているんだ。

 今まで、ずっと一人だったから。

 勇者が一番信じられる相手が、魔王だって言うのは、とても皮肉だね。

 僕がそう美嘉に言ったら、美嘉はとても嬉しそうに、


「あら?そんなにあたしの事を信頼してくれているの?嬉しいわね!つがう?もうつがっちゃう?あたしはいつでも良いわよ?今日、学校行くの止めとく?このまま帰りましょうか?」


 なんて言ってた。

 つがっちゃうって・・・どんな言い方なのさ?

 いや、言いたいことはわかるんだけれども・・・

 そんな事、しません!

 少なくとも、今はまだ、ね?


 そして、昼放課。

 二人でご飯を食べたあと、職員室に行く。

 すぐに校長室に通された。

 今、僕達の目の前には、校長先生、教頭先生、それと、学年主任の先生と、生徒指導の先生が並んでいる。


「・・・すまなかった。私も掛け合ったのだが、私よりも権力のある上から圧力をかけられ、彼らを退学にする事は出来なかった。だが、城島氏が逮捕されたので、もう、これ以上、上も口を出せないだろう。それに、おそらく城島も自主退学すると思う。本当に、申し訳なかった。」


 職員室で、校長先生達に頭を下げられた。

 途中、悔しそうな顔もしていた。

 どうも、教育委員会から圧力がかかっていたみたいだ。


 でも、美嘉が徹底的にやったおかげで、もうこれ以上僕の状況は悪くはならないだろうね。

 何せ、肝心の権力を、城島親子は失ったのだから。


 それに、教育委員会の城島氏への協力者も、城島父への取り調べの結果いかんによっては、処罰対象になると思う。

 もし、不正に金を受け取っているなどがあれば、確定で。

 これは、雑談がてら校長先生が言っていた事だ。


 美嘉に手を汚させたのは申し訳ないけど、僕は美嘉に感謝している。

 何かお返し出来ないかな・・・ 


 他の教師からも色々謝られた。

 特に、生活指導の先生からは、土下座に近い謝罪をされた。

 そして、近日中に林先生は教員資格を失い、クビになるらしい。

 更に、教育委員会の協力者と同じ様に、場合によっては逮捕される可能性もあるんだってさ。

 今は、罷免の手続き中なんだって。


 まぁ、それは自業自得だし、僕のような生徒をこれ以上出さないためにも、そうであって欲しいと思う。


 こうして、僕と美嘉は新たな学園生活を迎える・・・事になったんだけど・・・

 

 それが大変、驚きに満ちたものになるとは、今この段階では夢にも思っていなかった。


 まさか、あの子がこちらに来るなんて・・・

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