第4話 弁当を一緒に食べました

 午前中の授業を終え、昼放課。

 さて、ご飯を食べようかな。


「シュン、一緒に食べましょうよ!それで、その後は学校の中を案内してね?」


 隣の席の美嘉さんが嬉しそうにそう話してきた。

 あれ?

 でもさっき・・・


「良いけど・・・美嘉さん、色々な人に案内してあげるって言われてなかった?それに、ご飯のお誘いも受けてたような気がするし・・・」

「ああ、あれ?全部断ったわよ?だって、シュンと一緒に居たいもの。」


 にっこり笑ってそう言われると・・・うう・・・顔が赤くなっちゃう。

 そんな僕に満足したように頷き、僕の手を取る。


「さぁ、食べましょう?そうね・・・中庭なんてどうかしら?」

「え!?い、いや、あそこはカップル御用達だから僕とは・・・」

「あら?好都合じゃないの。見せつけてやりましょうよ!」

「い”!?ぼ、僕達別に付き合ってるわけじゃ・・・」

「早く!!」

「う、うわっ!?引っ張らないで!!」


 僕は引きずられるように教室を飛び出す。

 そんな僕を睨みつける三人の姿にも気が付かずに。




 中庭に着くと、周りから凄くジロジロと見られる。

 僕と美嘉さんが一緒に居るのが信じられないのか、驚愕の目で見ている人も居る。


「さあ、ここで食べましょ?」

「わかったよ・・・」


 僕と美嘉さんは、ベンチに座ってお弁当を広げる。

 僕は一応自炊してるから、お手製のお弁当。

 どうやら、美嘉さんもそうみたいだ。


 ・・・見られてるなぁ。

 どうやら、美嘉さんは噂になっているみたいだし。

 まぁ、そりゃそうだよね・・・美少女だもん。

 僕みたいな、パッとしないのと一緒に居るのは不自然なのかもね。 


 ・・・美嘉さんはまったく気にしていないみたいだけど。

 そんな僕の視線に気が付き、美嘉さんは訝しげに僕を見た。

 いかんいかん、そんなに見るのは失礼だよね。


「・・・何?」

「いや・・・魔王がお弁当って・・・」


 僕はとっさに誤魔化した。

 実際気になってたけど。

 すると、美嘉さんはニヤリと笑う。


「・・・良いではないか。妾は既に人だからな。お主の為に料理も勉強したのだ。褒められる事があっても、文句を言われる筋合いは無いぞ?」

「あ、ありがとう・・・」


 そんな風に言われると、照れてしまう。

 そんな僕を見て、美嘉さんはニヤニヤしながらだし巻きを箸で掴み、僕に差し出した。


「ほれ?食してみよ・・・あーん?」

「ふぇ!?」


 こ、これって・・・ 


「あ、あの・・・僕達、付き合ってないからその・・・」

「・・・くくく。なんだ?照れておるのか?めんこいのう・・・にしても、妾の手をそのままにしておくとは不敬であるぞ?疾く食すが良い。箸とおかずの重みに疲れてしまうわ。このままでは、落としてしまうかもしれんなぁ・・・勇者がそのような命を粗末にするような事をするとはなぁ?」


 にやにやしながらそう言う魔王モードの美嘉さん。

 くっ!!

 たしかに、食べ物とはすなわち命を頂いている事に変わりは無い。

 ・・・はぁ、仕方がないか。


「あむっ」

「・・・おお。これはなんだ?妾の奥底から喜びが満ち溢れて来るわ。なるほど、これがあーん・・・良いではないか。」

「・・・美味しい。」

「そうか!それは良かった!」


 確かに美味しかった。

 美嘉さんのくれた卵焼き。

 僕は甘いだし巻きはあんまり好きじゃない。

 絶妙な塩加減とだしの味がして、美味しかった。


「では、妾も貰おうかの。お主のだし巻きを一つよこせ。」

「良いよ。どうぞ・・・」


 僕は弁当箱を差し出したけど、美嘉さんは口を開けたまま止まっている。

 ・・・まさか。


「ほれ、早くよこすが良い。顎が疲れてしまう。」


 目を瞑ったまま、口を開いている美嘉さん・・・色々と目の毒だ・・・早く終わらせよう!


「・・・くっ!は、はいどうぞ・・・」

「あむあむ・・・うむ!美味いな!それに味付けも似ている!妾達の相性はぴったりだな!」


 くぅっ!!

 照れくさい!!


 その後は、満足したようで、そのままお互いに食事を進めた。

 ・・・僕は、間接キスに気が付き、葛藤したけどね。


 僕達は食事を終えると、校内の案内をはじめた。

 すれ違う人達が僕達を見ている。


 ヒソヒソ

「(・・・あの子って転校生でしょ?信じられないくらい綺麗ね・・・)

「(あいつって、城島達にいじめられてるヤツだよな?なんであんなヤツと・・・)」

「(大丈夫かな?あの子も城島達にいじめられちゃうんじゃ・・・)」


 ・・・う〜ん、ヒソヒソ話してるんだろうけど・・・声聞こえて来ちゃうなぁ。

 能力上がってるから・・・


「・・・気にしなくて良いわよ?」


 話し方を戻した美嘉さんがそう言う。

 

「でも・・・」

「絡んでくるなら、それ相応の目に遭わせるだけだからね。」


 ・・・おお、流石は魔王。

 でも、そうならないようにしないと・・・塵一つ残さず消しちゃいそうで怖い!


 昼放課も終わり、午後の授業へ。

 そして、放課後、周りきれなかった所の案内をする。

 ・・・やっぱり、ジロジロと見られるなぁ。

 中には、嫉妬なのか睨んできている男子生徒の姿もある。


 そして、校舎の外を案内している時だった。


「あ、そうだ!そう言えば、聞きたかったんだけど、どうして能力そのままにこちらに来れたの?」


 裏庭を移動中、人気が無かったので、僕は気になっていた事を聞いた。


「ああ、それは・・・」

「おい!!」


 遮るように呼び止められた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る