君 僕 死

明たい子

第1話君 僕 死



「君はさぁ、どうして生きようとするの?」

「君こそ、どうして死のうとするの?」


僕たちは向かい合っていた。全く同じ顔をした君が、全く同じ口調で、表面的には違う内容の言葉を話していたが、問い質している本質は同じことだった。


「僕はさぁ、この世で死ぬことがいちっばん、怖いんだ。だって、死んだあと自分の体がどうなるのか、自分の意識がどこに行くのかどうなるのか、何もわからないじゃないか。知らないことって1番の恐怖じゃない?だから、この人生に期待をこめてるんじゃなくて、今生きてる現状より、未知への恐怖が優ってる今はまだ死にたくないだけ。それだけなんだ」

「ふーん。なるほどね。君の意見は僕ととても似ているけれど、ボタンを掛け違ってるみたいだ。」

「何段目のボタンかな。君は昔から下からボタンをかける癖があったよね、僕は上からだけど君はいつも2段目を掛け違えるから。1段目はわかりやすいけれど、2段目はクシュっとして、隠れていじわるしてくるんだよね。わかるわかる。んで、何段目を掛け違えたの?」

「悪いけど、掛け違えてることを前提に話を進めないでよ、兄さん。僕のボタンは昔から掛け違えてなんかないし、母さんに言われて下からしめるようになっただけで、下からしめてるのはじわじわ下から攻められて、最後にきゅっと締まる感覚が、服を着た!ってスイッチが入るのが好きだからだ。」

「君って、相当変態だね。服を着るたびに毎回そんなこと思ってるの?いっそのこと僕が毎朝首でも絞めてあげようか?」


君がニヤッとする。僕はムスッとする。


「うるさいなぁ。首を締める行為じゃなくて、服を着るという日常動作の中にスイッチが入るからいいんであって、首を絞めるということはもう首を締めることが目的になってるから、それではスイッチにならないんだよ。どうしてわかんないかなぁ。」


君は頭をぼりぼりかく。僕はポリポリ頬をかく。


「君とは双子でずっと一緒に生きてきたのに、君の言うことはやっぱりわかんないや。まぁ、なんでもいいからとりあえず飯食べよ」

「兄さんとはいつも分かり合えないよ。」


僕たちは一緒の靴を履いて家を出た。向かう先は


「すき家」

「吉野家。」


僕たちはテイクアウトした。

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