21話 私は?仲間……外れなの?


 六月に行われる予定の体育祭に向けて、学校では体育祭実行委員会なるものが立ち上げられた。

 体育祭のクラスでのまとめ役と、体育祭実行委員会に出席する為の委員が必要となる。


 私とカレンは、既に生徒会に入っているので、委員会には参加しなくていい。

 どうでも良いけど、体育祭実行委員に選ばれたのは荒川さんだった。


 ホームルームの時間、荒川さんが黒板に体育祭の種目を書いていった。


「私、体育は苦手なのよね」


 私は小柄な体に胸が大きいので、運動は苦手とする所だった。魔法さえ使えれば、身体強化して走ることも出来たんだけど、こっちの世界では憑依しか使えない。


「私、綱引きか玉入れがいい」

「小中学校じゃ無いんだから、無いわよ!?」


「じゃあ大玉送りでいいわ」

「カレンさん?無いって言ってるでしょ!?黒板を見なさい!」


 荒川さんは、すごい剣幕で黒板に自分が書いた種目を見るように言って来た。


「ええ?じゃ見学で……」

「一人一種目はノルマですわよ!?」


 えーそうなの?なんで体育祭なんてあるんだろ。


わたくし障害物競争がいいです!」


 マコちゃんは、何か楽しそうだ。いいよね……マコちゃんには胸が無いもの。


 結局……私が選ばれたのは、パン食い競争……絶対無理だって、私の身長は四天王でも最弱よ?


 なんで綱引きは無いのにパンはあるのよ?

 

 こう言う時に憑依は使えないのよね……。


 ちなみに、カレンは障害物競争。佳奈が100m走、遥は200mとリレーに出るらしい。


 それからと言うもの……カレンは張り切って練習に打ち込んでいる。


 私? 私はいいのよ?どう考えても、パンに届く身長では無いもの。


 最近、カレンの練習に付き合っているせいもあって、七菜香先輩に会いに行けなくなった。


 七菜香先輩に会えないと、私の女性化が進んでしまう。


 言い方は悪いけど、先輩だけが私を男にしてくれるのよ?


 先輩と一緒になったら……いつか男に戻れるかもしれない。


 精神だけは……。


 なんて事はあり得ないんだけど、先輩にはそう思わせる何かがあった。



◇◇



 私は、同居人の彼女達に四六時中監視されているので、先輩に会いに行くにしてもハードルが高い。


 先輩に会えなくて、遂に禁断症状が出たので、私は七菜香先輩に会いに図書館へと向かった。


 今日のカレンは、校庭で佳奈達と一緒に練習をしているので、見ていなくても大丈夫だ。

 

 事前にメッセージを送って、七菜香先輩が図書館にいる事は確認済みなので、私は先輩の待つ図書館へと足を踏み入れた。


「失礼します。あ……先輩?お待たせしました♡」


「うん、……待ってた♡」


 七菜香先輩は、学校一と言われるだけあって、とても綺麗な人だ。はちみつ色の綺麗な髪からはとてもいい香りがする。その七菜香先輩は、私の自慢の彼女でもある。……自慢した事は無いけど?


「七菜香先輩?今日も綺麗です♡」


「カレンちゃんも……可愛いよ?」


 七菜香先輩は、今日は準備室の鍵を持っているとの事だったので、私は準備室に入ることになった。


 図書館には、図書準備室というものがあって、図書準備室には図書館に置かれていない本が置いてあったり、古い本が置かれていたりと興味深い本が沢山置かれていた。


「へぇ……こんな所があったんですねぇ?」


「ここは、図書委員会の……秘密の……部屋なの」


「秘密の?」


「そう……例えば……ちゅ♡」


 私は七菜香先輩に、いきなり頭を抱えられキスされた。


「ん♡……んん……ちゅ♡……はぁ♡」


「こんな……秘密とか?」


 七菜香先輩とは二回目のキスだ。

 私は先輩に、誘われているのかな?


「……いいんですか?七菜香先輩?私は、先輩が大好きなんですよ?」


「私も……カレンちゃんが……大好きよ?♡」


 私の理性の鍵は脆くも崩れ去った。


「七菜香先輩♡せんぱぁい♡……んちゅ♡……んん♡……ちゅ♡…ちゅ♡」


 私は、七菜香先輩の腰に手を回して、ギュって抱き返した。

 すると、七菜香先輩の手にも力が入って……完全にホールドされてしまった。


「カレン……ちゃん?……最近……来て、くれなくって……寂しかったよ?」


「私も……会いたかったです♡」


「忙しいの?」


「最近は……体育祭の準備とか?えっと、引っ越しとかで……」


「え?……引っ越し……って……カレンちゃん……引っ越ししたの?」


「いえ、引っ越しされた?……っていうか、してきたんですよ」


「……してきたの?」


「実は……」


 七菜香先輩はうちに来たことが無い。だって、うちには彼女が住んでいるから。


 今では、私の彼女が4人も同居している。

 

 カレンと、妹の雫に佳奈、そして遥が引っ越してきて、今うちは5人で住んでいることを七菜香先輩に打ち明けた。


「え?……5人で?……そんなに?……それって……私は?仲間……外れなの?」


 ……ですよねぇ。


 七菜香先輩には、私には彼女がいる事を話していたけど、流石に同居しているとなるとショックは隠せなかったみたいだ。


「私は、七菜香先輩とも……一緒が良いんですけど」


「行っても……いい?」


「え?」


 え?うちに来るの?引っ越し?いや、遊びに?どっち?いや、どっちでも修羅場になりそう……。 


「だめ……?」


 七菜香先輩の、その訴えかける瞳に耐えきれず……私は……。


「いいですよ?」


「今から……ちゅ♡……んん♡……ちゅぱ♡移動……ちゅぱ♡……しましょ?……ちゅ♡」 


 七菜香先輩にキスされながらのお願いには、逆らうことは出来なかった。


「はい♡」


 この日、七菜香先輩がうちに遊びに来ることになった。






あとがき


ここまでお読みくださりありがとうございました。

執筆の励みになりますので、続きが読みたい。

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