10話 先輩は綺麗な人だと思います!




 プールでの一件も終わり、日常が待っていると思ったけど……待っていたのは中間テストだった。


 私は異世界人という事になっているし、転入だから免除になるらしいんだけど……問題はカレンの方。


 カレンは私が憑依しながらの勉強のかいもあって、字は少し読めるようになって来たけど勉強の方は……察して貰えると助かるわ。


 ……結局カレンのテストは、私が憑依した状態で受ける事になったのよ。


 まぁ……私には奥の手があるので、どんなテストでも乗り切ることは可能なんだけど?



 ――そして試験当日。


 現国の試験が始まった。


『マコ様?この漢字読めません』


『ごめんなさい私も苦手なの』


 私は、得意そうな生徒に憑依し直して、答えを教えてもらった。


『ここはイを選ぶといいらしいわ』


 そう……奥の手とは、スキルを利用した。教えて下さいカンニングだ。



 私は姿が見えないので、カレンが自分で考えて自分で答えを書いているようにしか見えない。


 スキルの使用は禁止されていないので大丈夫よ?



 そう……私は妖精さんだから……。


 例えカレンが寝ていても答えは書いてあげるわ。


 でも、早速カレンは寝ていた。


 私はカレンの手だけを動かして答えを記入していく。


 後に……眠りのマコと呼ばれるようになるかは知らないのよ?


 こうして私は、カレンに憑依しながら中間テストをクリアして行った。



 そして、結果発表の日。


 クラスメイトの矢波さんに声をかけられた。矢波さんは良くマコちゃんに話しかけてくれるお団子頭の可愛い子だ。


「カレンちゃんは……中間受けてないんだっけ?いいなぁ……あたしも免除にならないかなぁなんてね?それで、マコちゃんの結果はどうだった?」


 そう、私は受けていないので当然ランク圏外なのよ……。


マコ様カレンちゃん!やりました!学年ランキング3位です!」


 え?嘘でしょ?


「すっごーい!マコちゃんって実は頭良かった系?」


「そう……みたいね?」


 あー……ちょっとやり過ぎたみたい?

 


◇◇



 中間も無事?終わり、カレンには決定的に学力が足りない事が露呈した。

 しかも、私のスキルによって学力が足りないのに成績が良くなってしまった。


 これはまずいのよ?


 私はなんとか出来ないかを考えた結果、カレンに憑依した状態で……私が勉強すればカレンにも理解させながら学力も上がると考えた。

 

「カレン?勉強するわよ?」


「ええええ?」


 私は、カレンを連れ出し図書室に移動して……カレンに憑依した状態で自習することにした。


 図書室には先客がいた。


 たしか、3年の高見先輩で……図書館の姫とも呼ばれていて、美少女過ぎて誰も近寄れないと聞いたことがあったような?


 高見先輩をチラ見してから……私は自習を始めた。


 集中して勉強していると……たまに高見先輩と目が合う。高見先輩も私が気になるようでチラチラとこっちを見ているようだった。


『マコ様……頭が沸騰しそうです……』

『勉強に集中して』

『……はいがんばりますぅ』


 私は憑依した状態なので……高見先輩から見たらマコちゃんが一人で自習しているように見えている。


 男の娘のマコちゃんが珍しくて見ているのかしら?


 高見先輩は集中して本を読んでいるようにも見えるけど……たまにこっちを見て顔を赤くしていた。


 もう、先輩が気になって集中出来ないじゃない?


「何か?私についてます?」


 先輩に話しかけてみた。


「あ……ごめんなさい……見つめてすみません……生きていてすみません……」


 は?


 この先輩は……本当に図書館の姫なの?ちょっと思考がダークサイドに落ちてない?


「謝らないで下さい。生きていて下さい?」


「え?あの……ごめんなさい」


 だめだ……この先輩何とかしないと。


「高見先輩ですよね?私は……桜川マコっていいます」


「ひゃ……はいそうです……私の事……知ってるんですか?」


 私が自己紹介すると、先輩は不思議そうな顔で……頭とコテンと傾げて聞いて来た。


「たしか……学校一の美少女とか噂で聞きましたよ?」


「ふぇぇぇ?そ、そんな……私はそんなではありません!あ、ごめんなさい……生きててすみません……」


 先輩は慌てた表情で……またも謝っている。重度のコミュ症のようね……。


「先輩は美人ですよ?私が保証します!」

わたくしも、先輩は綺麗な人だと思います!』


「? そんな……美人だなんて言ってくれる人……貴方がはじめて……」


『カレン?ちょっと、先輩が混乱するからちょっと……私に任せて?』

『マコ様?分かりました……』


 私とカレンが同時に話すと……普通の人には分からないから混乱させてしまうのよ?


「え?そうなんですか?先輩……こんなに美人でお綺麗なのに?」


「ま、また……美人って言った……」


「言いますよ?先輩はすっごく美人です!それに超美少女です!もっと自信を持ってください!」


「また……美少女って言わせてしまってごめんなさい……」


 先輩はまた俯いて……暗黒面に落ちかけている。どうしたらいいの?


「あーもう、先輩はどうしたら信じてくれるんですか?」


「……私……つ……て……たら……信じ……ます」


 先輩は何か言ってたようだけど聞こえなかった。


「え?」


「だから……つ……」


「つ?」


「すみません……私なんかが付き合って下さいなんて……言えません」


「え?」


 言ってますよ?先輩?


「ひやああ!あの……その……ごめんなさい!無理ですよね?そうですよね?私なんて……」


「いいですよ?」

『マコ様!?』


「へ?」


「信じてくれるなら喜んで。お付き合いしますよ?」


「……いいの?本当に?」


「はい!お願いします。あと、勉強を教えてください。高見先輩はたしか成績は良かったんですよね?」


「お勉強なら……大丈夫。見れるけど?」


「えっと、」


高見七菜香たかみななか。私の名前……連絡先……交換してください」


「はい!七菜香先輩!よろしくお願いします!」


 マコちゃん(憑依中)は七菜香先輩の連絡先をゲットした。


『マコ様?どういう事ですか?先輩とわたくしが付き合うってどういうことですか?』


 ……あ 憑依しているのを忘れていたわ。






あとがき


ここまでお読みくださりありがとうございました。

執筆の励みになりますので、続きが読みたい。

更新頑張ってと感じて下さいましたら、

☆☆☆、♡にて応援をよろしくお願いします!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る