5話 昨夜はお楽しみでしたにゃ?



 カレンは今日も学校に行かず、ずっと私から離れようとしなかった。


 食事も碌に取っていなかったようで、少し痩せて顔色も悪い。


 目の下には隈も出来ている。


 もう、カレンは私がいないとダメみたいね。


 台所には洗い物がそのまま溜まっていて、洗濯物も溜まったまま。食器もしばらく使っている形跡が無い。とにかく部屋の中は、私がいない間に随分と荒れていた。


「カレン、片付けて来るから終わったらご飯にしましょう?食べてないんでしょう?」


「……はい。食欲が出なくて……」


「ちゃんと食べないと死んじゃうわよ?私の体なんだから、もっと大切にしてよね?」


「マコ様が居なくなったら、もう、生きる気力も、理由も無くなりました」


「はぁ……重症ね」


 部屋の片付けをして、その間に洗濯を済ませる。


 食材が無かったので、カレンを連れて近くのスーパーで食材を買い込み、カレンの為に一人でも簡単に食べられる菓子パンやレトルト食品、カップラーメンなども買っておく。


 ご飯は炊いておいたから……。


「簡単なもの……麻婆豆腐にしましょうか」


 家に帰り、買ってきたひき肉と豆腐とネギと麻婆豆腐の元を出して、鍋に油を引き、ひき肉を炒めて麻婆豆腐の元と水を入れて少し煮込む。


 豆腐に包丁を入れて鍋に投入して温めたら溶かした片栗粉とネギを入れて、隠し味にハチミツを混ぜてとろみが出来たら完成だ。


「出来たわよカレン、少しでも食べなさい」


「……マコ様」


「はぁ……別に……夜は異世界に帰るから、朝起きたら召喚し直してもらうだけよ?」


「それでは……マコ様と一緒に寝れません」


「そうだけど、寝るまでは一緒にいるわよ?」


「むぅぅぅ……」


「ほら、しっかり食べて元気出しなさい。お腹が空いてると考えも暗くなるわよ!」


「分かりました……むぅ」


 カレンは、ほっぺたを膨らませながら、渋々ご飯を口に入れていく。


「むんん!これは、ちょっと辛いけど……美味しいれす!むぐむぐ」


「ゆっくり食べるのよ?」


 そうして、カレンと再会した日、カレンが布団に入り寝るまでの間、私はずっとカレンに寄り添って過ごした。


「マコ様、キスしてください……」


「カレン……ちゅ♡……ちゅぱ、ちゅ、ちゅ♡……おやすみなさい……カレン」


「おやすみ……です……マコ様……」


 また、貴方が召喚してくれたら会いましょう?


「……………」


「……」


 


◇◇




 目が覚めると、私はシャルと一緒に寝ていた。どうやら無事に異世界へ戻って来たようだった。昨晩はシャルの性欲が……もの凄かったので、体の方はまだ回復しきれていない。


 朝方まで起きていた影響もあって、今の時間はもう昼を回っていた。


「あ、カレンちゃんやっと起きた?」


「ん?サーラ。おはよう♡」


「うん♡おはようカレンちゃん♡昨夜はお楽しみでしたにゃ?」


「そ、そうね……私、シャルとも……しちゃったのね」


 隣でぐっすりと裸で寝ているシャルを眺めながらそう言うと、自分も裸なのに気付いて恥ずかしくなってしまう。


「ん~~んん……カレン?」


「ん、おはようシャル♡」


「えへへ~♡カレーン♡しゅき♡しゅきぃ♡」


 シャルが寝ぼけて、私の腰に抱き着いてくる。ああん♡おっぱいを揉まないでぇ♡


「あわわ!シャルさんも起きて下さい~」


「ん?あ~サーラ。おは~」


「もう、もうお昼ですよ?起きて下さい!」


「はぁ~い♡でも、もうちょっと……カレンのおっぱい堪能したらいくっしょ♡」


「いいから!起きるわよ!シャル?」


「ええいいの?じゃもっと……ふぎゃ!」


 流石に、今はやめて欲しいのでシャルを叩くと、大人しく渋々服を着始めた。


 一階に降りるとリゼが既に食事の用意をして待っていてくれた。


「遅い、シャルエロッテ」


「あ~リゼ、おはよ?は?エロッテ!?」


「おはようリゼ」


「間違えた。シャルエロエロッテ?」


「リィゼぇ!?」


「ほらほら、二人とも遊んでないでご飯にしましょう?」


「「ん~~!!!」」


 こうして、遅い朝食が始まったのだった。


 異世界に戻って来たのはいいけど、こっちで寝ている間は向こうの世界にいるので……私には、果たして寝る時間はあるのかしら?


「もうお昼だし、今日はどうするの?」

「長老が呼んでた」


「あー、あのエルフの……リゼのおじいちゃんだったけ?」


「あたし、あの人苦手ぇ」



◇◇



 エルフの森の奥深く、世界樹ユグドラシルの麓にエルフの里の中心部が存在する。

 長老の家は中心部からは少し離れた位置にあり、ほかの家と比べても大きく3階建ての屋敷になっていた。


 私はリゼとシャルを連れて長老の家にやってきた。


「どうじゃ、ここでの暮らしは慣れたか?」


「はい!お陰様で」


「それは何よりじゃな」


「で、おじいちゃん。要件は?」


「ユグテラニルの時期が来よった」


 リゼの祖父である長老のラウデンの話では、世界樹ユグドラシルの地下にある迷宮ユグテラニルに魔物が増加している兆候が見られるという。


 いつもであればエルフ族にて討伐隊が組まれるのであるが、今回は冒険者であるシャル、リゼ、そして私にも討伐に参加して欲しいとの話だった。


 こんな時に?もしカレンに召喚された場所が迷宮内部だったら、私死ぬかも。


 3人でパーティ組んで迷宮には入りたいけど……どうしたらいいかしら?


 例えば……リゼとかに憑依したままの状態で、カレンに召喚されたらどうなるのかしら?




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