4話 婚約は破棄させてもらうわ



 目覚まし時計の音がスマホから漏れて来る。


 スマホを寝たままでパシパシと叩き、黙らせる。


「ん……まだ……寝る……」


 何度か同じ事を繰り返し、私は目を覚ました。


 目を覚ますと私はカレンに抱き締められた状態で寝ていた。


 はぁ……これじゃ起きられないじゃないのよ、カレン。


 カレンの顔は、涙が乾いた跡でクシャクシャになっていた。


「いや、……行かない…で……まこ…さま……」


「わたく…しを……置いて…いかない…で……くださ…い……」


 カレンの寝言が耳に付く。


 嬉しい事言ってくれるじゃないの……もう。


 私はカレンの事が好きだ。でも、それは男の身体のカレンの事では無い。

 

 この私の体のカレンが大好きなの。


 カレン、貴方みたいに割り切る事が出来ればいいのだけど。


 でも、ごめんなさい男の子は苦手なの。それがたとえ自分であっても。


 出来るならば、入れ替わらずに出会いたかったわ。


 寝ているカレンの腕の中で自慰にふける私。あぁ……カレン大好きよ♡



◇◇


 

 どうやら、カレンの目が覚めたらしいので、カレンに話しかけてみた。私はカレンにがっしりと掴まれていて動けないのよ。


「おはよう、カレン?ちょっと、離してくれるかしら」


「嫌です。離したらマコ様、どこかに行ってしまいます。もう、離しません」


「困ったわね……これでは起きれないわ」


「起こしませんよ?このままずっとわたくしと一緒にいましょう?」


「はぁ、困った子ね……ねぇ、学校には行ってるの?」


「……もう行きません。マコ様のいない学校なんて、……意味がありません」


 カレンはまた涙目になって、大粒の涙が溢れている。


「ねぇ。カレン聞いて?貴方はこの世界で生きて行かないといけないの。私がいなくても……」


「聞きたくありません!」


 参ったわね、カレンがこんなになってしまうなんて。


「はぁ、私はどこにも行かないわよ?だって、たとえ私がどこかに行ったとしても、カレンが呼んでくれるんでしょ?」


「……どこにも行かせませんよ?どこに行ったとしても、絶対に呼び戻します!」


「カレンが呼んでくれる限り、私はカレンと一緒にいるわよ?」


「!! マコ様ぁ♡」



 カレンはここ7日の間、学校にも行かず家にずっと閉じこもっていたらしい。向こうで過ごした日々は3~4日のはずだから、こっちの時間は大体向こうでの2倍くらいの時間経過があった事になる。


 前との経過時間が違うのはどういう事なのか?私はカレンとの気絆、繋がりが深くなったからではないかと思う。顕現するためには呼び出す人物との繋がりが必要で、私とカレンは体が入れ替わった事で繋がりが出来ており、さらに毎日のようにエッチしたことで肉体的にも繋がりが強くなったと考えられるからだ。


 カレンは何度もスキル顕現を実行しようとしたらしいけど、呼び出しに私が応じるまでに7日もかかったことになる。これはどういう事になるのか?ちょっと分からない。いや、まさか……更新のし過ぎでその分使えるまでの期間が延びたとか?


 それならば、やっぱり更新はしない方が良いことになる。



◇◇


 カレンに再召喚された私は、ある決意を心に決めていた。もうカレンとの契約更新はしないという事だ。


 カレンが私の再召喚が可能であるなら、わざわざ無理して更新する必要が無いからだ。


 それに、毎日の更新作業が私の負担になっていたというのもあるし、異世界での私は眠っていた。と言う事は、向こうの私の体も眠らせたままにしておくと、またリゼ達を心配させてしまう事になる。



 だから、もう更新作業は必要ない。



「だから、……カレン、あなたとの婚約を解消させてもらうわ」


「マコ様!?何故ですか!?わたくしが嫌いになったんですか?」


「このままだと、私もカレンもダメになってしまうわ。もう更新もしないし、その代わり、カレンが呼んだら来るから、ね?」


「マコ様はもう、わたくしとエッチしたく無いと、そういう事ですか?」


「そういう事ではないけど……私がこっちの世界に来ている間、向こうの私は寝ているのよ。精神だけがこっちに来ているような感じで」


「え?マコ様は体ごと来ているのではなかったのですか?」


「だから、更新しちゃうと、私は向こうの世界では、ずっと寝た切りになってしまうの」


「そんな、マコ様……」


「だから、婚約は破棄させてもらうわ。ごめんなさい」


「分かりました。婚約は無しでもいいです」


「分かってくれて嬉しいわ」


 これでもう、更新しなくていいわね。


「だから、マコ様……これからは恋人になりましょう♡」


「分かってないようね。エッチは無しよ?」


「マコ様の為に自慰で我慢します!」


「まぁ……でもキスぐらいならしてあげても良いかしら」


 私は女の子が好きで、男の子は受け付けないの……とは言えなかった。


 カレンの顔が女の子に見えて来ているので以前より拒絶感が薄れているのも事実なのだから。


 寧ろ妹の雫に似ているので……もうカレンのことが女の子にしか見えなくなっていたのだ。





あとがき


スキル顕現の条件を変更しています。

 契りを結んで子供を作る→× 契りを結ぶ→〇

それに伴ってエッチな表現を抑えめに変更しています。


続きが気になる。更新頑張ってと感じて下さいましたら☆、♡にて応援お願いします。

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