2話 あたしとリゼにもしなさいって事よ



「で、リゼが?どうしたの?」


「いや、あたしが後で食べようと取っておいたお肉を朝食にって、え?今その話必要!?」


「でも、聞いてよって言ったのはシャルじゃない?……聞くわよ?」


「そうだけど、そうなんだけど!この状況よ!説明してもらうからね!」


「あうぅぅ……カレンちゃ~ん」


 サーラは私に抱き着いたまま離れようとしない。やっぱり、誤魔化しは効かないようね。



◇◇



 シャルにサーラと裸でキスしている所を見られてしまった。4人で共同生活する上で恋愛問題は痴情のもつれなどデリケートな話題となる。ただし、それは男が絡んだ場合に限る。

 この家には女の子しか住んでいないので、そういった問題は無かった。


「この家で共同生活するにあたっての規則は覚えてる?」


「一つ、男は連れ込まない。一つ、好きな男が出来たら報告すること。一つ、抜け駆けは禁止。一つ、カレンはみんなの者」


 ……って、なんで私だけ条件がみんなの者なのよ?そんな規則あったかしら?三箇条じゃなかったの?


「さて、さっき二人はキスをしてたじゃない?その場合、抜け駆けは禁止とカレンはみんなの者に抵触してるっしょ!」


 うん、もう意味分かんない。


「さて、ここで問題。……で?どっちから手を出したん!?」


 いやいやいや、そこ問題?


「……覚えてないわ」


「あの、カレンちゃんから……です。昨日のバーベキューの片づけをしていたら酔っぱらったカレンちゃんにお姫様抱っこされて、私の部屋まで運んでくれたんです。そしたらカレンちゃんも私のベッドに……気づいたら脱がされてて……その、あそこを……んにゃ、にゃめられて」


「にゃめられて!?」


 ご丁寧に説明ありがとう。そう、大事なところを舐めたのね。


「も、もうこれ以上は……恥ずかしくて言えない、にゃ」


「じょ、状況は分かったけど、カレンは申し開きはある?」


「見た通りね」


「ではサーラは状況からみて抜け駆けでもなく無罪として、カレンはみんなの者に抵触したので、罰として他のみんなにも同じことをしなさい!」


「はい?」


 今なんて言ったの?シャルは……え?


「サーラにした事と同じことを、あたしとリゼにもしなさいって事よ?」


「どうしてそうなるのかしら?」


「何か勘違いしているのかもしれないけど、規則の抜け駆けをしないっていうのは、カレンには勝手に手を出さないという意味で、カレンはみんなの者というのは言葉の通り、みんなでカレンを温かく見守り、愛しましょうという意味……って聞いてる?」


「え?何ですって?」


 手を出さない?今までプラトニックな関係が続いていたのは……私が手を出さなかったからって事?えええええ!?


 その均衡を私自ら破ってしまったと、そういう事なのね。初めて知ったわ。


「リゼも、あたしも、サーラも、みんなカレンが好きなの!気付いてなかったの?」


 いや、言われてみると、いつも大好きとは言われていたけど……?結婚しようって言われていたけど?え?あれってみんな本気だったの?


「……ごめんなさい。気付いてなかったわ」


 今まで気が付かなかったけど、……ここは私のハーレムだったの!?



◇◇




 さっきまで朝食を作っていたリゼがシャルのお肉を使った料理を美味しそうに食べている。


 一階のリビングでは4人でテーブルを囲み、朝のもぐもぐタイムで会話が無いのが怖い。


「リゼの料理、久しぶりに食べた気がするわ」


「リゼ、昨日も作った」


 昨日はバーベキューだから塩振って焼くだけで、料理とは言えない……とは言えない。


 シャルはさっきからこっちをチラチラ見てくるし、サーラは目を合わすと真っ赤になって下を向いてしまう。


「どうした?二人とも、変」


 リゼはコテンと首を傾げると訝し気な目をこちらに向けてくる。


「カレン、何かした?」


「いや、したというか、これからするというか?」


「ん?」


「ほらぁ、何でもないって、ちょっと昨日の疲れが溜まってるっていうか?」


「ん~んん?……怪しい」


 シャルが言うにはこう言うことは、私から誘わないと駄目なんだとかで……。どちらが先に選ばれるのか?という緊張感がシャルにはあるらしい。


 リゼには何も言ってないけど、リゼを選んだらサプライズでいいじゃんとか言い出す始末。

 選択肢の先は私に丸投げされたまま。もう一緒でいいでしょ?と言ったらちゃんと選びなさいと釘を刺された。


「このお肉って昨日のバーベキューの残りでしょ?」


「そう、シャルが隠してたお肉」


「焼くだけでも美味しかったけど、煮物にするのも美味しいわね」


「うん、私はこっちの方が、好き」


 肉のうまみが他の野菜にまで染みわたっていて味に深みが出ている……気がする。


「サーラもこの煮物美味しいです」


「でしょでしょ?あたしが取っておいたお肉だからねぇ」


「むぅ……シャルは、自分で食べるのに、隠していただけ」



 朝食も終わり、シャルが片付けをしに行かされたので、リゼと三人で今日の予定を話し合う。


 共同生活するためには、お金も稼がなければいけないし、買い物や森での狩猟で食材の確保などを行う必要がある。


 それと、この地には世界樹ユグドラシルの裏の顔。地下には巨大な迷宮「ユグテラニル」が存在する。


 ユグテラニルの内部には遺跡があり、地上には居ないような魔物が跋扈しているので、定期的に討伐隊が編成されたり、シャルやリゼのような高ランクの冒険者が狩りに出たりする。


「カレンちゃんは、まだ無理しない方が良いと思います」


「そう、かしら」


「無理はだめ。今日は、リゼがカレンの世話をする」


「ん、ありがとう、リゼ。そうさせて貰うわ」


 シャルとサーラはその後、森での収穫に出かけて行った。もし、何かあってもシャルが付いているから大丈夫でしょう。


「何か、果物でも、食べる?」


 リゼはリンゴに似た果物の皮をむいて私に食べさせてくれる。


「カレン、あーん」


「あーん」


 これってやってもらうと、結構恥ずかしい。


 何故かリゼまで顔を赤くしているんだけど?自分でやってて恥ずかしいって事?


「美味しい?」


「うん、美味しいよ?」


「良かった。カレンが倒れた時、リゼ、カレンが死んじゃったら、どうしようって……」

「心配してくれたのね」


「カレンに憑依されている時」


 そういえば、リゼ達には何回も憑依してるし、スキルの説明もしてあったわね。


「カレンと、一つになって、カレンが倒れて、リゼ分かった事がある」


「うん」


「リゼは、リゼは、カレンの事が、死ぬほど好き……」


 リゼにそれ以上言わせないように、リゼの口をキスで塞いだ。


「んん♡……ぷはぁ、カレン♡むちゅ♡……ちゅ……」


「ぷはぁ♡……はぁ……♡」


「リゼ……私も大好き♡」


「カレン♡」


 リゼの細身の体を抱きしめる。リゼは胸が小さく華奢で、私の巨乳に埋め込むような感じになる。リゼのサラサラした銀髪を手櫛しながらやさしく撫でると、母性本能のようなものがこみ上げる。


「今まで、リゼの気持ちに気付かなくて、ごめんなさい」



 ……それから二人が帰ってくるまで、リゼとめちゃくちゃ愛し合った。








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