S3話 ローゼフ・ムニオン
何度でも言うけど、俺の名前は
バックスと別れ、宿屋「双丘の鷹」に泊まった俺は、1階にある食堂で朝食を食べ町の外へと向かう。
人のいない場所でスキルを確認するためだ。ローゼフに憑依はしているが自分のスキルは使えるのかも確認しておきたい。
ローゼフは短剣を持っているので剣術の練習にもなる。
森に入り、開けた場所で短剣を握る。そして剣を振る。ここまではローゼフのスキルでもあるので、身体強化をイメージする。イメージだけでは発動しないようだ。
「身体強化!」
言葉に乗せてスキル名を詠唱すると、ほんのり体が熱くなったような気がした。
これは、いけるか?
「身体強化!」「身体強化!」「身体強化!」「身体強化!」「身体強化!」「身体強化!」「身体強化!」
何度もイメージしながら詠唱を行うと、徐々に身体強化の使い方が分かってきた。
「身体強化!」
うん、これは成功した感じがする。
走ったり、ジャンプしたりして強化具合を確認する。
「おおおお足が早!!!車に乗ってるようだな。うわっ高っ、脚力半端ないな。うわって、あれだけ高く飛んだのに着地しても痛くない?」
こんな調子で一つ一つのスキルを自分の物にしていくと日が落ちる時間になっていた。
宿に帰り一階で飯を頼んで寝る。宿の飯は特に旨いという訳でもなく、食べられる程度のものだった。
今後の方針についてだが、馬車でもらったスキルは物にしたが、特段優秀なスキルと言う訳でもなかった。出来ればもっと使えるスキルが欲しい所だけど。例えば強い人が集まる場所とか?
そうだ!冒険者ギルドとかに行けば、強い人に会えるかもしれないね。
次の日、俺はバックスから情報を得ていた冒険者ギルドに行ってみることにした。
タールベイトの冒険者ギルドは賑わいを見せていた。特に人が多い。いつもこんな感じなんだろうか?と思い近くの若い冒険者に声をかけ聞いてみることにする。
「何かあったのか?」
「ん?王国騎士が冒険者ギルドに何か用か?」
「いやな、今日は人が多いように感じてな」
「おいおい騎士様は知らねーのか?」
「隣国からの護衛の帰りでな、事情を知らぬ」
「なにやら王都の魔女が逃亡したって話で、捜索依頼がギルドに来たってわけだ」
「そうなのか……魔女とは何だ?」
「それが良く分からねぇが聖女様を貶めた魔女らしいぜ、名前はたしかカレン・グランチェスカとか」
「ああ?カレンだと?」
くそっ……ここまで追手が来ていたか。動きがやけに早いな……やはり王国内は危険だ。早急に脱出しなければならないか。
「まぁまぁ、そんなおっかねぇ顔すんなや。そもそも公爵家の美人なご令嬢らしいから、すぐに見つかるだろうよ」
「そうか……」
ここから脱出する前に、とにかく強いやつを探そう。俺は空いているカウンターへ行くと軽く挨拶してみる。カウンターには胸の膨らみが足りない少女?ギルドの窓口嬢が暇そうにしていた。
「すまんが、いいか?俺は王国騎士副団長のローゼフという。ギルド長はいるか?」
「あ、はい!副団長のローゼフ様ですね?少々お待ちください!」
少し待つと、カウンターの貧乳ギルド嬢が戻ってきた。
「お待たせしました。奥でお会いになるそうです。階段で3階までお上がりください」
「うむ、その階段でよいか?」
「はい!どうぞ」
3階まで行くとギルド長室と書かれているだろうプレートがあったのでここだろう。
部屋に入ると冒険者と思われる人が数名と、ガタイのいい白髪のおっさんが打ち合わせ中のようだった。
「よく来た入ってくれ。丁度良かったな。今王国からの依頼の話をしていた所だ」
「そうか」
「まずは自己紹介と行こうか?俺はタールベイトの冒険者ギルド長のガルベスだ。んでこっちが」
「俺様は、Sランク冒険者のベンテックだ。武器はバトルアックス一択!よろしくな!むはは!」
戦士のような恰好をした青髪の大男。こいつがSランク冒険者なのか?
「リゼはSランク、精霊使い、武器は弓」
銀髪の美少女は耳が長い。目は琥珀のように綺麗だ。エルフか?この子もSランクなのか?
「リゼはリーゼモニカっしょ?」
「むぅ、うん」
エルフのリゼは、リーゼモニカという名前なのか。
「あたしはシャルロッテ!Aランクの魔法使いやってまーす!シャルって呼んでね!ヨロシク!」
シャルは真っ赤なツインテールで、目も赤い明るく可愛い女の子だ。
「俺はローゼフ・ムニオン。王国騎士団副団長だ」
一応自分の外側の自己紹介をしておく。詳しくは知らないけど。
「自己紹介が終ったところで、本題に移るが、王国からの依頼では魔女の捜索となっているが間違いないか?」
「いや、魔女などでは無い。彼女は公爵家のご令嬢で、多分だが、無実だ」
「ふむ、どうして無実だと?」
「彼女は王太子の婚約者であった。聖女は王太子に付け入るため、いや王太子の婚約者の座を狙った自作自演の可能性が高い」
「その証拠は?」
「証拠はないが、聖女が虐められたという証拠も、自作自演ならば無いはずだ」
「実際、聖女は傷を負っていたという話だが?」
「それも自分でやったのであろう。聖女ならば自分で治せる」
「だとしても、王国の依頼だ。無視することは出来んが」
「おいおい、やるのか?やらんのか?捜索しねーなら、俺様は降りるぜぇ」
「カレン嬢の戦闘能力はそれほどでもないらしいから、降りるならかまわんぞ、ベンテック」
「それじゃ、俺様はいくわ」
ベンテックは部屋を出ていく。憑依する余裕は無かったな。
「リーゼにシャルはどうする?」
「無実、なら許せない」
「聖女様ってのがどんだけ偉いか知らないけど?胸糞悪い話じゃん」
「見つけたとしても保護して国外へ逃がすか、死んだことにして逃がすかか?」
「王国騎士としても逃がしてやりたいのが本音だ。捕まれば死刑は免れまい」
これって、俺の話だからね。逃がしてくれよ?
「では、今後の方針を指示する。リーゼとシャルは王国騎士ローゼフと協力し、カレン嬢を見つけ次第保護すること。保護した後は国外への護衛を頼む」
「了解」
「よっしゃ、いいよ」
「ありがとう。リーゼにシャル。護衛の方、よろしく頼むわよ?」
「「ええ?」」
「ふふふ、初めまして。私がカレン・グランチェスカです」
俺は、憑依を解除してカレンの姿を現すと笑顔でそう言った。
「「カレン嬢????えええええええええ!!!!」」
「なんてこったい。カレン嬢は、最初っからここにいたのか?」
「ええ、護衛してくださるのでしょう?」
「当然ですカレン嬢。改めて、リーゼ、シャル、カレン嬢の護衛任務頼むぞ」
「任された」
「カレン様!あたしに任せて!」
ローゼフは記憶のないまま寝かせてある。
なんとか、良い方向に持って行けたと思うけど?どうだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます