閑章 異世界転生 過去編
S1話 始まりは婚約破棄
――2年前。
「カレン、君には失望したよ。カレン、いやカレン・グランチェスカ!君との婚約は解消する!」
「……はぁ……?」
◇◇
俺の名前は
まぁ、名前ばかりが女の子という訳でもなく、顔つきも姿もよく美少女と間違えられる程らしいんだけど、俺としてはもっと男として見て欲しいという願望?というのがあった。
だからいつしか自分の事を僕ではなく、俺って言うようになったんだ。
高校生活1年目も終わり春休み、もうすぐ2年に上がろうとする頃。
そんな男らしくなりたい俺は、とんでもない事件に巻き込まれていた。
◇◇
俺は、さっきまで自分の部屋で寛いでいた筈なんだけど、いつの間に寝てしまったのか、起きたら自分の部屋と違う場所に倒れていた。
そんな俺が今いるのは、俺の部屋じゃ無くて……、白っぽい石で出来たツルツルとした床、高い天井、長い廊下……。
「いや、どこだよ?ここ」
物凄く長い廊下、近くには執事のような人が倒れている。
俺の姿はと言うと。
あれ?手が小さい?両手を確認していると自分の胸にある筈の無いものが付いている事に気がついた。
ある筈の無いもの、すなわちおっぱいである。しかもデカイ。自分の手じゃ収まり切らない程の大きさ。
思わず俺は、自分のおっぱいを鷲掴みにしてみる。いや、この小さな手では鷲掴めない。無理。
「何じゃこりゃあああああああ!!」
俺が叫んでいると、倒れていた執事のような人が起きてきたので状況を確認する事にした。
記憶が混濁している事にして執事のような人に色々聞いてみると驚くべき事実が判明したんだ。
まずここは王国の王宮にあたる場所で、執事のセバスさんはカレン・グランチェスカ公爵令嬢を王太子の元へ案内している途中であったという。
「カレン・グランチェスカ公爵令嬢?」
「そうです。貴方様をご案内の途中、雷のようなものに襲われ気絶していたのです。申し訳ございません」
俺の名前が判明した。
俺はカレン・グランチェスカという名前の女の子になってしまったらしい。
これって転生?……だとしたら俺は死んでしまったのか?……いまいち分からない。
本当のカレン・グランチェスカが何らかの衝撃で、前世を思い出したとか?
いや、でも俺にはカレンの記憶が残っていない。
という事は、カレン・グランチェスカは死んだという事だろうか?
でも、これだけははっきりしている。
俺は、これから、このカレン・グランチェスカという女の子の体で生きていくしか無いという事だ。
「では、ご案内しましょう」
「分かった。いや、分かりました。よろしくお願いしますわ、セバス」
取り合えず、このセバスという人は、いい人っぽいんだけど、これから誰に会いにいくんだろうか不安だ。
◇◇
セバスという執事に案内されたのは、応接室?というかなんだろう、ソファーが置いてある執務室?のような所だった。
「カレン・グランチェスカ様をお連れしました」
「うむ、入れ」
「失礼します」
部屋に入ると数名のおっさん達が待っていた。いや一人女性もいるか。
執務机に座っている白髪のおっさんがどうやら要件を話すようだ。
「カレン・グランチェスカ嬢、急な呼び出しに応じてもらいすまなかった。倒れたと聞くが、体のほうは大丈夫か?」
「ええ……大丈夫ですよ?」
「ふむ、ならば本題に入らせていただく。本日、聖女アスカ様がお怪我をされていたのだが何か身に覚えは無いか?」
「は?何の事ですか?」
「あくまでもしらを切るというのか?カレン!」
いやいやいや、誰ですか?この金髪イケメンは?
「カレン、君には失望したよ。カレン、いやカレン・グランチェスカ!君との婚約は解消する!」
「……はぁ……?」
いやいや、このイケメン婚約者だったの?別に知らない人だし?婚約破棄されても問題ないけど。そもそも俺は男と結婚したくないし?
「王太子殿下の証言では、「学園にて聖女アスカ様を虐めて、あまつさえ階段から突き落とした」とあるが本当なのか?」
「はい?」
何やってんの?この子?まさかこの子は悪役令嬢とかいうやられ役……?
ってこの展開はまずくない?転生してすぐ死にたくないよ?
「そうか、はいと認めるのだな?では、カレン・グランチェスカ嬢を聖女アスカ様への暴行容疑で即時逮捕、収監する。連れていけ」
「はああああ? いやっ!ちょっと待って下さい!」
ちょっとちぇっと!逮捕って?俺何もしてないんだけど!?
「……聖女アスカ様への暴行は死罪であるが、今後の取り調べに耐えられるかるものか」
「ちょ!やだやだ!変な所触るなー!!だれた助けてええええ!!!」
こうして、カレン・グランチェスカ嬢に転生した俺は、転生初日にして牢屋に収監されることになってしまったのだった。
あとがき
真の過去篇を5話ほど挟んでから第2章の予定です。
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