11話 カレンと放課後幼馴染



 放課後、私はいつものように憑依を解除し、カレンと学校を出た。


 いつもと違うのは、今日は幼馴染の佳奈と、私の彼女の遥が一緒だと言う所だろうか?


 今日は佳奈に事情を説明するって話だから、出来れば雫は席を外してほしい所なんだけど……。


 まぁ、成り行きとは言え、雫とはちょっと言えないような複雑な関係になっちゃったし、佳奈には説明出来ない。ましてや委員長は私の彼女になっているのでなおさらで、委員長にも説明出来ない。


「さて、これからどこに向かうかだけど……?」

「他に聞かれたく無い話ならカラオケとかどうだい?」


 委員長がカラオケを提案してきた。カラオケか〜、ファミレスやファストフードだと誰が聞いているか分からないし、喫茶店だと静か過ぎて周りに迷惑だ。


「いいんじゃ無い?カラオケ。真が変な事言ったら、鼓膜が破れるほど耳元で歌ってあげる」


 ええ!?鼓膜破れるのは確定?あはは、……お手柔らかにお願いします。


「お兄ちゃ〜ん!待って!今日は一緒に帰ろうよ!」


 あら、雫? はぁ……来てしまったのね。


「出たわね、雫ちゃん」

「あら、藍沢先輩もいたんですか?……お兄ちゃんに何か用ですか?」

「朝と同じメンバーだね?折角一緒になったんだし、仲良く帰ろうじゃないか?」

「雫ちゃんは、帰る方向逆でしょう?」

「そういう藍沢先輩も私と方向、同じですよね?」

「私はこれから真と大事な話があるの、雫ちゃん、今日はごめんね?真借りてくから」

「すまん雫、あとで説明するから」


 妹には謝っておく、今日の所はあの件(憑依出来ること)を話す訳にはいかないから。バレたら後が怖いのよ。


「藍沢先輩、お兄ちゃん……。はぁ……そこまで言うなら分かりました。今日の所は一人で帰りますけど、後でちゃんと教えてくださいよ?」

「ん、また明日ね」


◇◇


 何とか妹を帰して、有名な全国チェーンのカラオケ店に入ると、早速とばかりに佳奈がリモコンを操作して歌いたい曲を選曲する。


「藍沢さん?今日は歌うために来たんじゃ無いだろう?」

「だって、歌わないと勿体無いし?」


 メンバーは私とカレン、遥と佳奈の4人になる。

 今日は幼馴染の佳奈に事情を説明する事になっている。


「佳奈ちゃんが歌ってたら、お話し出来ないですよ?」


 とにかく、カレンと私の入れ替わり状態を説明しないことには始まらない。

 

「まずは、これはハッキリさせて置くわ、委員長には説明したけど、私は桜川真。この体はカレン・グランチェスカ。彼女と私は体が入れ替わっているのよ」


「えええ!?嘘!?金髪のあんたが真なの?」

「そうよ。嘘言ってどうするのよ」


「はじめましてです?佳奈ちゃん。わたくしの名前は、カレン・グランチェスカです。自分でも原因は分かりませんが、今はマコ様のお体を使わさせていただいてます」


 真の体のカレンがそういうと、佳奈の顔が目に見えて青くなる。


「だったら、真の言葉遣いが変わったのも、更に女の子になったのも、中にカレンさんがいたからだって言うの?」

「そう言う事になるわね」

「もし、そうだとしても婚約って意味分かんない。真なんで婚約してんのよ?」

「それは……」


「よくぞ聞いてくれました。それはわたくしがマコ様にゾッコン、一目惚れしたからです。うふふ」

「いや、違うわ。違わないけど、はぁ……ちゃんと説明するわ」


「カレンはね、異世界人なの。だから桜川真、私は異世界でカレンとしてずっと生きて来た。向こうの時間でいうと約2年間過ごして来たわ。女としてね」


「異世界で2年も?って真、異世界にいたの!?それで俺じゃなくて私に?」


 佳奈はやはり、びっくりした表情を隠さない。まぁ異世界って言われて真顔でいられる人は少ないだろう。


「そうね、この姿で俺は無いでしょ?」


「それで、今私がここに居られるのは、彼女の能力によるもの。私はただこの世界に召喚されただけの存在に過ぎないわ」

「「え?」」

「カレンが召喚を解除した時点で私は異世界へ戻ってしまう。そして一生会えなくなるわ」


「なんだって?真君それは聞いてないよ?」

「異世界に戻る?一生?そんなの嫌だよ!」


 委員長と佳奈は慌てた表情で私を見る。涙目になってるのは気のせいではない。


「別に私はそれでもいいのだけど?カレンがこっちの世界でちゃんとやって行けるようになるまでは手伝うつもり」


 そう、カレンをこの世界で問題なく生活出来るようにするのがの責任でやるべき事だ。


「真君は、手伝いが終わったら帰るつもりなのか?異世界へ」

「全然良くないよ!?帰っちゃうんでしょ!?真に一生会えなくなるなんて、私は絶対に嫌だよ!?」


「あと、婚約っていうのは、がカレンと契りを結べば、この世界に絆が出来て異世界へ戻ることが無くなるという事よ」


「契りを結ぶぅぅ!?」

「それって、セ、セックスするって事?」


「遺憾ながら、そういう事になるわね。」


「……そうなんだ、それで?もしかして、も、もう……しちゃったの?カレンちゃんと……せ、セックス」

「ま、まさか、してるのかい真君?」


「してないわよ?……結構、危ないときもあるけど」

「そうなんです。婚約者ですけど、マコ様はいちゃいちゃしかしてくれません」

「こらカレン、それは秘密にするって……」


「あああああっ……もう信じられない。不潔よ!?」

「婚約者がいるってそういう事なんだね真君」


「いや、それにも理由があるのよ?契約でカレンと1日1回はエッチしないと異世界に戻されちゃうの!」


「凄い契約だね。信じられないけど」

「はぁ?……1日……1回!?そんなに?」


「私は本当はしたくないのよ?私は、私は女の子が好きなのよ!!」


「な!!マコ様!?今なんとおっしゃいました?良く聞こえませんでしたが?」


「ひいいい!?カレン!?違うのよ?」

「帰ったらお仕置きですね。マコ様」


 お仕置きは、いやぁぁぁぁあああああ!!!


◇◇


 とりあえず説明がひと段落と思っていたんだけど、佳奈はまだ納得いっていないような顔をしている。


「真とカレンちゃんが入れ替わったのは分かったけど、委員長と付き合ってるとか、雫ちゃんとの関係はどうなってんのよ?」


「委員長ね、実は遥には先月に告白されていたのよ」

「えぇ!?委員長が真に?こ、告白してたのぉ!?えぇ!?先越されてた?」


「それが、私にとっては2年前の事だったのね。だから忘れてて」

「僕の一世一代の告白を忘れられててね、カレン君と入れ替わっているなんて知らなかったから、告白にOK貰ったと勘違いさ」


 遥は長い黒髪をかき上げ、れやれというポーズを取る。


「勘違いされちゃったのもあるし、忘れてたのも悪くて、私こう言ったのよ。女の子の体でも良かったら付き合っても構わないって」


「へぇ、そう、なんだ。告白したら……付き合ってくれるんだ……」

「まさか、婚約者と毎日エッチしてるとは思わなかったけどね」


「はぁ……婚約者って何ですか?マコ様に浮気されまくりですけど?」


「ふーぅ、事情は把握したよ真。どうせ雫ちゃんにもバレて委員長と同じように付き合ってるとかでしょう?」


 鋭いわね佳奈。流石が幼馴染って所ね。


「だったら真、付き合えるよね?」


 えええ!?佳奈!?どうしてそうなるの?


「私は真が好き!委員長なんかよりずっと前から真のこと好きだったもん!私とも付き合ってよ!いや付き合え!」


「もはや命令?まぁ……良いけど?私、女の子だけど?いいの?」


「いいの!私、負けたくない!雫ちゃんにも委員長にも、カレンちゃんにも!」


「私が一番真のことが好きなんだから!」


「あのー遥、……1人増えてもいいかな?」


「真君がいいならいいさ。ちゃんと僕を好きでいてくれるならね」


「私は……、遥も佳奈も大好きだから、一人を選ぶなんて出来ないわ」


「またライバルが増えました!?ほんと婚約者ってなんでしょう?」


 一通りの話が終わってから、折角なので何曲か歌うことになった。

 カレンは歌を知らないので、佳奈と遥が最近のヒット曲を歌って、私はブランクがあるのでパスした。結局私の彼女2人でずっと何かもやもやを発散するように歌いまくっていた。


 こうして幼馴染の藍沢佳奈は、私の2人目の彼女となったのだった。


◇◇


「マコ様、浮気者にはお仕置きですよ?忘れてませんよね?今日は覚悟してくださいね?」


「はい、カレン仰せのままに」


 召喚者と被召喚者との関係は主従関係に似ている。カレンに求められたら断れないのだ。


「……あっんん、うくぅ、あっあっ、あぅっ、あああああああ♡」


 今日のカレンのいちゃいちゃは、さらに激しかったと言っておこう。




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