爽彩さんは、どこで亡くなったのか?
コトバンク『死体硬直』
『死後に筋肉がこわばり、これによって関節などが動かしにくくなる現象。死後、筋肉はいったん弛緩(しかん)するが、すぐに硬直し始め、その硬直は死後6~8時間くらいで全身の筋肉に及ぶ。この場合、硬直の発現順序には法則性(ニステンの法則)があり、一般には、頭・顔面部から指・趾(し)(足の指)の筋肉へと進む下行型が多いとされている。硬直が最強になるのは死後20時間くらいであり、それが30時間くらいまで継続し、その後は徐々に解けて、通常、3~4日で完全に緩解する。ただし、この変化は死体の内的・外的条件によってかならずしも一定しない。』
お母様
『爽彩が向かったと思われる方向のコンビニやドラッグストア』
友人との待ち合わせのため、公園のベンチに腰掛けていた。
秘密の待ち合わせ場所である廃屋で、相手を待っていた。
或いは、川沿いのベンチで、自殺についてぼんやりと考えていた。
スマートフォンの電源は既に切っている。
昼間には薬を服用している。薄着で家を出て、二十分近く歩いた。
アメダスによると18時の気温は-1.8℃、19時には-3.0℃になっている。
薬の副作用、寒さ、運動後、薄着などの条件が重なり、急激に体温が低下する。そのまま眠り込んでしまう。
そこに誰かが現れる。
待ち合わせの相手かもしれないし、ただの通りすがりかもしれない。
爽彩さんに呼びかけたが、応答がない。既に身体は冷たくなっている。
学生なら、親を呼びに行ったであろう。
取り敢えず、温かい場所に運んで、蘇生を試みようとしたかもしれない。
自宅に爽彩さんを運び込んで、冷えた身体を温めて、救命処置を施す。
しかし、息を吹き返すことはなかった。
爽彩さんの遺体を前にして、彼(彼女)らは考える。
成人男性ならこうだ。『自分が家に連れ込んで、いたずらをしようとしたと疑われる』。
友人とその家族ならこうだ。『うちの子が加害者だと疑われてしまう。うちの子の将来はどうなるんだ』。爽彩さんがいじめの被害にあっていたことは既に知っている。
そしてこう考える。『どうせ最初から死んでいたのだ。時間を見計らって遺体を遺棄してこよう』。
しかし、既に死後硬直が始まっている。
死後硬直中に、遺体を動かすことも出来なくはないが、かなり困難であろう。
友人であれば、早い時期に捜索中の情報も入るだろう。X中学校の先生方も、翌日から捜索に参加していたという。
下手に動かすことは出来ない。
16日~18日あたりに、旭川は吹雪に見舞われる。その機に乗じて、遺体を遺棄するしかない。
遺体を完全に消し去るのは忍びない。解体も出来ない。かといって自宅近くはまずい。河川敷には雪が積もって侵入出来ない。捜索もされていると聞く。爽彩さんが徒歩で行ける範囲である必要がある。永山南中学の学区内であれば、一通り捜索もされている。遺棄するなら、ある程度の広さがあり、車でアクセス可能で、学区からやや外れた永山中央公園しかない。
吹雪の中で、深夜に公園に乗り付けて、遺体を遺棄した。その夜の内に、雪が数十センチ積もり、遺体は見えなくなった。
犯人は、公園のどこに遺体を遺棄しようと意図していたのか。
そして、実際にはどこに遺体を遺棄したのか。
雪で地面が見えない状態で、例えば水場を判別出来たのか。
この辺はよくわかりませんね。
何もない平らな地面にただ置くよりは、水場の窪んだ場所に遺棄する方が、発見は遅れるだろう。しかし、夜中でかつ吹雪の中で、水場を正確に判別出来るだろうか。
それに、いくら成人男性と雖も、雪が積もった状態で遺体を運ぶのはかなり骨が折れる仕事だろう。途中で力尽きてしまったのかもしれない。
そう考えると、やはり丘の上に運ぶというのは無理がある。最初から考えもしないだろう。
犯人の心理を考えると、亡くなった地点は、爽彩さんの自宅から、永山中央公園とは反対の方向、すなわち爽彩さんの自宅から西方向のどこかではないだろうか。
しかし、最低でも3日以上、遺体を隠しておかなくてはならない。3月まで隠しておくのは困難かもしれない。
戸建てで、家族ぐるみなら何とかなるかもしれない。室内では腐敗するので、庭や物置などになるだろう。倉庫、廃屋、自動車といった線も考えられる。
アパートやマンションでは困難であろう。一階で、暖房をつけなければ可能かもしれない。
春光台の倉庫で、殺害されて遺体を隠されていたとする説も根強い。
しかし、倉庫に火を放つほどの連中が、すぐに見つかりそうな市街地の公園に遺体を遺棄して、遺体が発見されたから倉庫を燃やすというのは、いまいち腑に落ちない。遺体発見は織り込み済みだろうから、あのタイミングで倉庫を燃やす理由がない。最初から、郊外の山中に遺棄するとか、或いはもっと冷酷な方法で遺体を処理する、もっと早くに倉庫を燃やそうとするのではないだろうか。
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