データは残っていないのか?

「同様のLINEを、Hさん以外の他の友人数名にも送り、爽彩さんはスマートフォンの電源を切った。後にHさんが返信をしたものの、そのメッセージに「既読」のマークがつくことはなかった」


 もし誰かと会ったなら、爽彩さんのスマートフォンに通信記録が残っているはずである。

 犯人は消去を試みるだろう。指紋認証なら可能である。認証は何を使用していたのか。

 データを消去しても、痕跡は残るとも聞く。逆にそうした痕跡が何もなければ、一人だった可能性が高い。


 Hさん以外に、Gさん、Iさんらも、最後にLINEでやり取りをしているのであろう。

 電源を切った、より正確な時刻を割り出せないだろうか。


 或いはスマホ自体が故障して、データが取り出せないのか。

 Hさんと御友人のLINEは、現在どうなっているのであろうか。既読がついていればお母様が見ていることになる。ついていなければ、やはりスマートフォンが故障しているのであろう。

 いじめの状況も、爽彩さんのスマートフォンで確認していた。見ていないとは考えられない。

 データの復元、またはSIMカードでクローンは作れないのか。

 データは本体にしかないのか。サービス会社のサーバーにあるのか。

 キャリアやグーグルに開示請求は出来ないのか。


 スマホ本体がダメでも、PCから位置データにはアクセス可能であろう。爽彩さんは、いつ、どこで電源を切ったのか。自宅であれば、参考にはならない。しかし、時刻だけでもわかれば、行動を知る手掛かりにはなるだろう。

 キャリアとの契約は、まだ続けているのだろうか。

 キャリアがダメでも、グーグルのアカウントなどは残っていないのだろうか。

 いじめ後は、引きこもっていたという。生前に好きな場所とか、よく行く公園などはなかったのだろうか。


 よくNHKで『災害時の人の動きを、スマホの位置情報から解析する』みたいな企画をやっている。そうしたデータを利用出来ないものか。

 東京ならともかくとして、爽彩さん失踪時の旭川市永山付近であれば、人物の特定もある程度は可能ではないだろうか。

 災害時の研究用と称して、データを解析してくれる人物はいないだろうか。


 自宅PCでの閲覧履歴もチェックするべきであろう。

 本当に自殺を考えていたのなら、検索して調べるに違いない。


 捜索時のデータもあれば、参考になるだろう。

 初動捜査時の、パトカーのルートと時刻。

 二日目以降の、ボランティアの捜索記録。

 そもそも、永山中央公園は、誰かが捜索していないのであろうか。

 もし、捜索していないとすれば、遺棄した人物は、その事実を知っていたうえで永山中央公園を選んだ可能性も出てくる。

 捜索したことがボランティア間で情報共有されていたとすると、犯人は少なくともボランティアの中にはいない、ということになるだろう。


 よからぬ輩が問い詰めたりして、御遺族はすっかり不信感を抱いている。しかし、Gさん、Hさん、Iさんであれば、御遺族に対して、各種契約の継続、データの保全と確認を促すことも可能ではないだろうか。

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