第25話 2人の奴隷、想う妻
バイオレットの亡命計画が失敗に終わり、更に、ワレンシュタイン公国は、バルベルデを敵視政策を強めた。
基本的に内に籠っていたバルベルデの、急な拡張政策は、新王誕生直後であった事から、新王=魔王説が強く主張され始める。
バルベルデを軽視し、大敗後、急速に衰退し始めている帝国と国境線画定化交渉の席で騙し討ちに遭い、一気に国を乗っ取られたルドヴェキア共和国を見たら、誰しもが、その説を推すのは、当然のことだろう。
戦乱に明け暮れる諸国家は、一旦、反バルベルデ同盟を謳い、結集するような動きを見せていた。
そして、その盟主に推されたのが、今まで、無傷なワレンシュタイン公国だ。
諸国家から来る同盟提案の誘いを、永久子が、
「この国は、腐敗国家だから駄目。この国は、人権蹂躙しているから信用出来ない。この国は……」
レムリア大陸に放った間者からの報告に基づいての判断だから、決して好き嫌いではなく、事実を基にした捌き方である。
「……今の所、信用出来る国は、何処も無いわ」
「現在進行形で、戦争状態だからね。何処も」
私は、大きく息を吐いた。
「祭り上げられたくないんだけどな」
「しょうがないよ。今1番乗りに乗っている国には、我が国くらいしか、対抗策無いだし」
「……そうだね」
バルベルデは魔力を武力にしているが、ワレンシュタイン公国は、投石器や弓矢、
魔力は、
「……バルベルデに送った間者は?」
「皆、行方不明。多分、抹殺されたのかも」
「……そう、なんだ」
良心が痛む。
だが、これは、国家の為にやらなければならないことだ。
一々、気にしてはならない。
「もう……こうなったら、直接、乗り込むしかないかも?」
「ルドヴェキアの二の舞になるかもしれないのに?」
「対策を採れば、何とかなる……筈」
怖いけれど、しょうがない。
いつまでも自分だけ安全圏に居たら、国民はついてこない。
「……行くよ」
私は、決意した。
バルベルデとの交渉を。
「「……」」
バイオレット、サーシャのジト目に、俺は満足していた。
俺=ドM説。
いやぁ、歪んでるっすね(自覚)。
バイオレットが尋ねた。
「……これは何?」
「メイド服」
「それは分かるけど……足、出過ぎじゃない?」
2人に着させているのは、超ミニスカート。
下着が見えるか見えないかのチラリズムが、視る者を刺激させる。
「え? なんだって?」
「「ひ―――」」
鞭を取り出すと、2人は、
この痛みは、凄まじい。
臀部が、キャッチャーミットのように大きく腫れ上がるからだ。
2人は、受けたことが無いのだが、レムリア大陸では、よく所有者が奴隷に罰として行うもので、最悪、痔になることもある恐怖のアイテムであった。
「主♡ 私に使って下さい♡」
マーシャがスライディングして来た。
「いや、何でだよ?」
素で突っ込むと、マーシャは、胸を張る。
「奴隷だからです♡」
こんなに清々しく言うフェンリル、初めて見た。
一族は、どのように思っているのだろうか。
「妻には使わんよ」
「えー……」
途端、物凄く嫌そうな顔に。
「それはそれで《《燃え》るじゃないですか?」
「俺が好んでいるのは、萌えの方だ」
そういうのに興味が無い、と言えば嘘になるが、やっぱり、夫婦間でするのは、抵抗がある。
バイオレット達にも脅し用であって、実際には使わないけどね。
「は♡ は♡」
尚も鞭を見るだけで悦ぶマーシャ。
「「……」」
それを汚物のように睨むバイオレットとサーシャであった。
新加入の2人は、正確には、肩書に差がある。
バイオレットは、一応、側室。
サーシャは、その用心棒だ。
王宮外に出る時は、流石に外出用の洋服になるのだが、基本的に巡察と買い物、デート以外に俺は外出しない為、
「……興奮しているの?」
「してない」
「してません」
リリスの挑発的な笑みに、2人は空かさず否定した。
「もう、受け入れたら良いのに」
「嫌」
「嫌です」
双子のようなコンビネーションだ。
「ほら、嫌がらずに掃除して。じゃないとお給金でないよ?」
「「……」」
バルベルデでは、例え奴隷であっても、給料が出る。
これは、新王・景虎の勅令であり、国内全土で施行されている。
この為、行く行くは、奴隷廃止宣言が出されるのでは? との噂だ。
「「はい」」
2人は不承不承に頷くと、雑巾がけを始めた。
一軒家で部屋数はそれほど多く無く、頑張れば、午前中で終わる筈だ。
リリスは、お目付け役として、2人を監視しつつ、備品の整理に始めた。
侍従の仕事ではあるものの、出来ることは、気付いた人が行えば、事は早く済む。
そもそも、この家は、王族の物だ。
王族自身が管理しても、何も問題は無い。
(早く帰ってこないかなぁ)
巡察に出た夫を想う、リリスであった。
マーシャ、シャーロットと俺は、地方の巡察に行っていた。
今回の訪問地は、夢魔が居住する風俗街だ。
夢魔は、性に奔放な魔族なので、自分の特性に合った風俗店を経営することが多い。
「……凄いな」
売上金額に俺は、感心した。
男性型夢魔の労働組合長が見せた帳簿では、毎日平均1億円前後の黒字を出していた。
1店舗でこれだけだから、街全体だと、中規模の国家予算くらいの金額を毎日出しているのではなかろうか。
「陛下もいかがです?」
分かりやすく、ごまをする。
俺が利用すれば、王室御用達の風俗街になる為、宣伝効果を期待しているのだろう。
「有難いけど、妻帯者だからな」
左右の腕をそれぞれ、マーシャとシャーロットが、ギュッと握る。
リリスでほぼ毎晩、苦労されているのだ。
その上、ここも利用したら、心は完全に夢魔に支配されてしまうことを恐れての行動である。
俺もリリス1人で手一杯なので、流石にこれ以上の夢魔は必要ない。
「既婚者でも利用者は居ますが?」
「豪胆だな。そいつは」
呆れつつも、俺は本題に入る。
「組合長、済まんが、税金を引き上げたい」
「急な話ですね」
組合長も真剣な顔になる。
現在の税金は、売上に応じて1%。
100億円で1億円が国家に行くことになっている。
「公共事業で要りようだからな」
「こちらも生活がかかっていますからね。流石に高いのは了承しかねますよ?」
「もし、折り合いがつかなければ、他国に移転してもらっても構わないよ」
「……」
渋面の組合長。
公に活動出来るのは、俺の許可あってのことだ。
外国でも出来なくはないが、流石に昼間から開いている風俗街は中々無い。
然も、国によっては、更に高く吹っ掛けられる可能性がある。
その分、現状の1%は、非常に良心的だ。
50%になっても、まだ低いかもしれない。
「……幾らなんですか?」
「10%。これ以上は求めんよ」
「……お願いします」
予想の5分の1に、組合長は即決するのであった。
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