第22話 連合か併合か

 翌日、俺達は、国境地帯に居た。

 相対するのは、鳥女のバイオレット。

 向こうも鳥人族で構成された用心棒が近くに居る。

 交渉によっては、極論、武力衝突もあり得る為、念には念を入れよ。

 御互い、用心棒は必要だ。

「こちらの急な申し入れを御快諾して頂き感謝する」

 バイオレットは、頭を下げた。

 魔族にはこのような文化が無いのに、わざわざ人間族の文化に合わせるのは、彼女なりの配慮だろう。

「お気遣いありがとうございます」

 俺も杓子定規に返礼しつつ、その両手の翼と両足の鉤爪を失礼のないように、観察していた。

(鳥女って怪鳥のイメージあったけど、こうして見る限り、美しいな)

 翼を大きく広げて滑空し、その鉤爪で獲物を掴み取るのを想像しつつ、会談に臨む。

「それで、国境線はどうしましょうか? 我が国としては、自治区があります故、その居住範囲に合わせて決めたいのですが―――」

「ああ、そのことなんですが、陛下、人払いのほど宜しいでしょうか?」

「……込み入った話ですか?」

 雰囲気から察した。

「はい。申し訳御座いませんが」

「……分かった」

 目配せすると、リリス達は後方約100mに瞬間移動。

 鳥人族の用心棒達も同じくらいの時機で、空に飛んだ。

 これで、人払いは、一応完了だ。

「……それでお話、というのは?」

「何から何まで譲歩して下さり有難う御座います」

 バイオレットは、再び頭を下げた後、口を開いた。

「連合王国の成立をお願い出来ませんか?」


 連合王国。

 それが私の案であった。

 世界の先端を行くバルベルデと一体化すれば、その技術と知識、資金力、有能な人材が手に入る。

 我ながら、思い切った決断であろう。

「……連合王国、ですか? 貴国の国民は、御納得されているのですか?」

「貴国同様、王制ですよ? 我が国は」

「……」

 新王は、眉を顰めた。

 明らかに警戒している顔だ。

「……何故、我が国と?」

「先日の大戦で貴国は我が国の救世主、と理解しました」

「?」

「我が国は、自然の要塞で外敵を阻む一方、その住みにくさから、国外への移住者が絶えません。その1番の移住先が、貴国なのです」

「……」

 思い当たる節があるのか、新王は何も言わない。

 政治的な経験が少ないのだろう。

 無表情ポーカーフェイスや嘘が苦手な御仁なのかもしれない。

「……事情は分かりました。乱暴に言えば、『そんなに移住者が多ければ、国が維持出来なくなる前にバルベルデと一体化しよう』ということでしょうか?」

「そうですね」

 平たく言えばそう言う事だ。

 連合化すれば、移住者は国内への引っ越しになり、税収の減収等はそれほど変わりない。

「……分かりました。ですが、こちらとしても、魅力ある地域のみしか出来ませんよ」

「併合、ですか?」

「陛下。残念ながら私は、博愛主義者ではありません。国益が望めない場所は、不必要です」

「……はい」

 力関係は、完全にバルベルデにある。

 私は、お願いしている立場なので、その条件を飲むしかない。

「……又、無能な政治家は、解雇していきます」

「……」

 意外にも新王は、現実主義者リアリストのようだ。

 自治区での活躍ぶりを見るに、博愛主義者に見えていたのだが、それは国内でのことであって、国外のことはそれほど思い入れが無いのだろう。

「……最後に、陛下」

「はい」

「貴国を併合するに辺り、陛下は王位から退いて頂き貴族に格下げになります」

「……はい」

 売国奴には相応しい定めだろう。

 改革せずに、他国に任せた結果だ。

 奴隷に落ちないよりかは断然良い。

「ただ、利益をもたらした陛下には感謝しかありません。そこで陛下」

「はい」

「側室になって頂きます」

「……はい?」


 バイオレットの手を握る。

 直後、鳥人族が大慌てで降りて来た。

「貴様、何を!」

「不敬だぞ!」

「手を放せ!」

 こちらも瞬間移動でマーシャ、リリス、シャーロットが飛んできた。

「主?」

「急にセクハラ?」

「オーヨ、ドウシタ?」

 俺は、バイオレットを抱き寄せて、宣言した。

「バイオレットより、御提案があった。現刻より、我が国は、バルベルデ=ルドヴェキア二重王国に改称する」

「「「「「「!」」」」」」」

 その場に戦慄が走った。

 鳥人族は、弓を構えるも、

「止めんか!」

 バイオレットが一喝した。

「我が国の歴史は終わったのだ。収めろ」

「そんな……」

「では……あの計画は……」

「実現した、というのか……」

 衰退していたとはいえ、彼等は愛国者だったのだろう。

 俺は、フォローする。

「貴国は我が国の一部になるが、貴国の国民の権利を侵害するものではない。併合しない地域もあるだろうから、併合が嫌な者はそこに住めばよい。強要はしない」

 そして、見せ付けるように、バイオレットの体を抱き寄せるのであった。


 俺が急遽、バイオレットを側室にしたのは、ルドヴェキア共和国の愛国者を抑え込む為だ。

 衰退が著しいルドヴェキア共和国だが、以前、読んだ報告書では、鉱物資源が豊富らしい。

 ただ、天然の要塞が故に採掘出来る人材がおらず、国境地帯に居た。

 相対するのは、鳥女のバイオレット。

 向こうも鳥人族で構成された用心棒が近くに居る。

 交渉によっては、極論、武力衝突もあり得る為、念には念を入れよ。

 御互い、用心棒は必要だ。

「こちらの急な申し入れを御快諾して頂き感謝する」

 バイオレットは、頭を下げた。

 魔族にはこのような文化が無いのに、わざわざ人間族の文化に合わせるのは、彼女なりの配慮だろう。

「お気遣いありがとうございます」

 俺も杓子定規に返礼しつつ、その両手の翼と両足の鉤爪を失礼のないように、観察していた。

(鳥女って怪鳥のイメージあったけど、こうして見る限り、美しいな)

 翼を大きく広げて滑空し、その鉤爪で獲物を掴み取るのを想像しつつ、会談に臨む。

「それで、国境線はどうしましょうか? 我が国としては、自治区があります故、その居住範囲に合わせて決めたいのですが―――」

「ああ、そのことなんですが、陛下、人払いのほど宜しいでしょうか?」

「……込み入った話ですか?」

 雰囲気から察した。

「はい。申し訳御座いませんが」

「……分かった」

 目配せすると、リリス達は後方約100mに瞬間移動。

 鳥人族の用心棒達も同じくらいの時機で、空に飛んだ。

 これで、人払いは、一応完了だ。

「……それでお話、というのは?」

「何から何まで譲歩して下さり有難う御座います」

 バイオレットは、再び頭を下げた後、口を開いた。

「連合王国の成立をお願い出来ませんか?」


 連合王国。

 それが私の案であった。

 世界の先端を行くバルベルデと一体化すれば、その技術と知識、資金力、有能な人材が手に入る。

 我ながら、思い切った決断であろう。

「……連合王国、ですか? 貴国の国民は、御納得されているのですか?」

「貴国同様、王制ですよ? 我が国は」

「……」

 新王は、眉を顰めた。

 明らかに警戒している顔だ。

「……何故、我が国と?」

「先日の大戦で貴国は我が国の救世主、と理解しました」

「?」

「我が国は、自然の要塞で外敵を阻む一方、その住みにくさから、国外への移住者が絶えません。その1番の移住先が、貴国なのです」

「……」

 思い当たる節があるのか、新王は何も言わない。

 政治的な経験が少ないのだろう。

 無表情ポーカーフェイスや嘘が苦手な御仁なのかもしれない。

「……事情は分かりました。乱暴に言えば、『そんなに移住者が多ければ、国が維持出来なくなる前にバルベルデと一体化しよう』ということでしょうか?」

「そうですね」

 平たく言えばそう言う事だ。

 連合化すれば、移住者は国内への引っ越しになり、税収の減収等はそれほど変わりない。

「……分かりました。ですが、こちらとしても、魅力ある地域のみしか出来ませんよ」

「併合、ですか?」

「陛下。残念ながら私は、博愛主義者ではありません。国益が望めない場所は、不必要です」

「……はい」

 力関係は、完全にバルベルデにある。

 私は、お願いしている立場なので、その条件を飲むしかない。

「……又、無能な政治家は、解雇していきます」

「……」

 意外にも新王は、現実主義者リアリストのようだ。

 自治区での活躍ぶりを見るに、博愛主義者に見えていたのだが、それは国内でのことであって、国外のことはそれほど思い入れが無いのだろう。

「……最後に、陛下」

「はい」

「貴国を併合するに辺り、陛下は王位から退いて頂き貴族に格下げになります」

「……はい」

 売国奴には相応しい定めだろう。

 改革せずに、他国に任せた結果だ。

 奴隷に落ちないよりかは断然良い。

「ただ、利益をもたらした陛下には感謝しかありません。そこで陛下」

「はい」

「側室になって頂きます」

「……はい?」


 バイオレットの手を握る。

 直後、鳥人族が大慌てで降りて来た。

「貴様、何を!」

「不敬だぞ!」

「手を放せ!」

 こちらも瞬間移動でマーシャ、リリス、シャーロットが飛んできた。

「主?」

「急にセクハラ?」

「オーヨ、ドウシタ?」

 俺は、バイオレットを抱き寄せて、宣言した。

「バイオレットより、御提案があった。現刻より、我が国は、バルベルデ=ルドヴェキア二重王国に改称する」

「「「「「「!」」」」」」」

 その場に戦慄が走った。

 鳥人族は、弓を構えるも、

「止めんか!」

 バイオレットが一喝した。

「我が国の歴史は終わったのだ。収めろ」

「そんな……」

「では……あの計画は……」

「実現した、というのか……」

 衰退していたとはいえ、彼等は愛国者だったのだろう。

 俺は、フォローする。

「貴国は我が国の一部になるが、貴国の国民の権利を侵害するものではない。併合しない地域もあるだろうから、併合が嫌な者はそこに住めばよい。強要はしない」

 そして、見せ付けるように、バイオレットの体を抱き寄せるのであった。

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