いざ、潜入

 迷奇は、いよいよ紅の館に潜入しようとしていた。すると、突然、叫び声が聞こえた。

「キャアアアアア!!!!」と、若い女性の声が響き渡り、迷奇は声のするほうへと視線を向けた。そこには、右腕の肘部分まで喰われたような跡と、左足全部を切られたような跡、更には、心臓を無理やりくり抜かれたような、五体満足とは言おうにも言えない、無残な姿になった人が落ちてきた。

「叫び声から、今この瞬間に殺られたんだな。だが、あまりにも一瞬すぎる。この館にはそれほどのやつがいるのか」と、迷奇は固唾を呑み込み、装備していた、手袋(手を汚さないため)を填めて、館の中に潜入した。

 館に入ると、いきなり、小さい猫の頭、人の体をした、化け物が現れた。

「グアァァァ、殺・・く、死・・・」と、途切れ途切れだが、人語を話しているように聞こえた。迷奇は、言っている意味は分からなかったので、すぐさま、その化け物を体術で倒し、先に進んでいった。

 しばらく歩いていると、窓がいきなり

「パリィィィィン!」と、割れた。迷奇は驚きはしなかったが、不思議そうに窓のほうを見た。その窓は、外からでも中からでもなく、窓そのものが自ら割れたように、破片が中外どちらともにあったのだ。迷奇は、その窓の破片を拾い、見てみると、僅かだが、妖気が混じっているのが分かった。

「この館、俺と似たような感じの妖気が混じっているな」と、言った。迷奇の妖気、または、妖気を纏ったことのある怪田家は、似たような妖気を纏うこともある。それはつまり、迷奇と同等の妖気を纏い、化け物になって尚、衰えることのない力を持っているということだ。

「これを、起こした犯人はもしかして・・・」と、熟考する迷奇だが、今やるべきことを、終わらせようと、再び、館を歩み始めた。

 歩いている途中に、化け物とは多く出くわしたが、そこまで、体力を奪われることなく、探索は順調に進んでいた。道中、不思議な妖気を感じ、その部屋に侵入すると、数珠繋ぎの人骨が出てきた。それは、まるで何かを示唆しているかのような形で、迷奇は、その人骨たちの近くに寄った。真ん中には、特に何も描かれておらず、人骨が、中央を向いているだけのように見えた。

「なんだ、このサークルみたいなやつは。いったい誰がどんな目的でやったんだよ」と、抒情的になりつつあった。それもそうだ。これまでにも、この館には、多くの人骨が疎らではあったが、置いてあったので、きれいに並べられた子の人骨たちを見ると、怒りが露わになってしまった。

「落ち着こう、とりあえず、犯人はすぐ殺すとして、今は、道に気を付けて、親玉まで無傷で行くことが目標なんだ」と、自分のやるべきことを言語化し、その部屋を後にし、館の廊下をまた進んでいった。

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