紅に染まる館

カキピー

怪田迷奇という男

 ドゴッ、ドゴッ、グチャ、ハハハハハハハッ。

「うまい、ウマい、これはうまいぞ。今までにない味だ」

ドス黒い声が、館に響き渡る。そして、人の残骸。

 ―――某日某所

「あぁ、眠い。なんでこんなに眠いんだよ」彼の名前は、怪田迷奇。ごく普通の16歳だ。しかし、そんな彼には、特殊な力がある。それは、怪奇現象を起こす親玉を排除できるという体質だ。無論、怪奇現象と言っても、ただ風の音だったり、インコの真似事、人の思い違い、などたくさんあるわけだが、中には、実際意味が分からないものも存在している。例えば、自殺の名所と言われる、心殺峠にある、殺し橋は、年間で百人もの人が飛び降り自殺をしている。しかし、ある日を境に、それは、発生しなくなった。理由は、怪田迷奇が解決したからだ。その時は、橋の下にある大きな岩があったのだが、それを割ってみると、中から、一つ目の黒い姿をした化け物が出てきたのだ。その化け物は、不思議なオルゴールを流し、人を催眠状態にする。そのあとに、落ちると同時に、オルゴールを止め、瘴気に戻し、殺す。というのが、流れだったらしい。そんな化け物を、迷奇は、体術だけで、倒したという。というもの、彼の体には、妖気が込められていて、これは生まれる時に違うのだが、完全に妖気を纏っている迷奇は、五十年に生まれるかぐらいの割合だった。さらには、生まれても、妖気の消費が激しく、体を保たせるほどの精神力、体力が備わる前に死んでしまうのだ。だから、せいぜい生まれても、生後一年も経たないうちに、死んで逝ってしまう。しかし、迷奇は、生まれながらにして、最高の妖気を纏っていたにも関わらず、死なずに生き長らえることができた。妖気が最高で、長く生きる者は、今までにおらず、怪田家の中で、重宝されるのかと思いきや、親は、自己利益のために、迷奇を鍛えさせ、営業をやらせようとしたのだ。しかし、まだ小さい迷奇は、そんなことを考えられるわけないので、言われるがままに、親の依頼を受けていった。親は、ある程度金が貯まると、迷奇を一人にして、家を出て行ってしまった。

 迷奇は、妖気を纏っているおかげか、人の食事をあまり必要とせず、最低限のもので生きることができた。そこで、迷奇は、裕福な生活をしたいと思い、個人で、怪奇現象解決屋、その名も、「怪決 迷奇」という名前だ。その名の通り、怪異を解決する仕事である。最初は、まぁ、誰からも依頼が来るわけでもなく、迷奇は全国を旅して、怪奇現象を解決するという方針に決めた。迷奇には、探知能力もあったので、すんなりと、解決することができた。そこから、信頼を築き上げていき、ついには、ウェブサイトまで作れるようになった。口コミも、今までの依頼を受けたメールアドレスにお願いをして、評価を上げていくようになった。そして、そんな迷奇のもとに一通のメールが届いた。内容は、

【ある日、突然紅の館が出現した。その館の近くを通ったものは、吸い寄せられるように、館に入っていき、いつの間にか、失踪するという内容だ。さらに、吸い寄せられたものは、存在もなくなってしまうらしい。子供がいなくなっても、親は、この部屋はなんだろう。子供の器があるのはどうしてだ。といった具合だ。被害が拡大する前に、早めの他所をお願いします】といった内容だ。ここで、迷奇は、疑問に思ったことがある。それは、メール主が存在しているという点だ。というのも、館の近くで観察していたのなら、メール主も吸い寄せられてしまう可能性もあるからだ。ここで、迷奇は、落ち着いて、すぐさま現地に向かおうとした。しかし、場所が思ったよりも遠い場所にあった。今、迷奇は、沖縄にいて、館の発生場所というのが、北海道なのだ。彼は、今金がなく、移動と言っても、妖気を使い、最短で行く方法があるのだが、それだと、少なからず、妖気の全回復までしばらくかかる。しかし、早く現地に向かわなくてはならない状況に、迷奇は、使うしかなかった。

 結果、数時間で、北海道には着いたが、妖気の回復のために、近くの公園で野宿をした。そして、翌朝、現地に行ってみると、そこまで紅に染まっている感じはしなかった。すると、突然、ブアッ、と館が紅くなった。迷奇はそれを見た瞬間、背筋が凍った。ここには、比べ物にならない化け物がいる、ということが。

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