第4話

「はぁ、はぁ、はぁ・・・。」


この病院に入院されてから、早いもので三日。僕は今死にそうです。どうやら僕は一か月もの間眠ったままで、体力はかなり落ちていたようだ。

すると、僕の診察をしていたお医者さんは「うちの運動器具を使えば体力戻りますよ!がはははは!!!」と大いに笑っていた。

何故あんなに笑っていたんだろうか?弱った患者を見下しているのか?仮にも彼は医者だろうが。

という事で、現在ウォーキングマシンで息を切らして走っています。かれこれ一時間は経った。


「くそっ・・・!」


何度も辞めようと考えた。その度に、澪の言葉が頭をよぎる。必死に生きて彼女に再び逢う為に。その為に、まずはこの苦行をこなしていかなければ・・・だが、心からそう想っても、体がその想いに追いつかない。一体あと何時間、何日続くんだ?


「一度死にかけた僕を・・・舐めるな・・・!」


それから二時間後、他のリハビリという名のトレーニングをこなし、病室に戻った僕は、疲れ果てた体をベッドに投げ捨てた。

全身が重い。目覚めたばかりの頃よりも気分が悪く感じる。僕は少しでも気を紛らわせようと、部屋に置いてある小説を手に取って、前回まで読み進めていた所からページを開いた。

今読んでいるこの小説、看護師に聞いた所、どうやら死にかけていた僕を見つけてくれた人がくれた物らしい。

だが、肝心の贈り主の事が分からない。看護師が言うには、僕に正体を明かさないで欲しいと頼み込まれたそうだ。

どうしてそんな事をするのか?仮にも僕を救ったのなら、感謝の印として贈り物やお金をせびるのが人間だろう。少なくとも、今まで僕が見てきた人間はそうだった。


「変な奴・・・。」


だが、その人物がくれた本のお陰で、退屈な時間を有意義に使える。その事に関しては感謝した方が良いだろう。

それにしても・・・一体どういう思考回路の作者なんだ?ギャグ、かと思えばシリアスになり。優しい人物だと思っていたら、次のページには主人公に毒舌を饒舌に吐く人物に変貌する。

どの登場人物も思考やキャラが安定していないバラバラな話だ。だけど、ページをめくる手が止まらない。これが小説家の成せる技、というものか。


「月山・・・薫」


表紙に大きく書かれた題名の下に小さく書かれてある作者の名を呟く。彼、または彼女は、何故小説を書くんだろう。自分の想像の世界・物語を書くのなら、小説以外にもあるというのに。

僕にも、この作者の様に自分の何かを形として、この世界に残せるのだろうか?いや、それ以前に僕には自分だけの何かを持っているのだろうか?


「・・・澪、僕には何があるんだろうか・・・。」


小説に付箋を入れ、ベッドの枕元に置いて眠りにつく。あの日別れた澪に逢えるようにと、強く想いながら。

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