第23話

「私は、事故の検分を担当したわ。彼女の恋人、今はもう元恋人かしら。その子の頭も診た」


「あなたが」


「喋れるじゃないの」


「」


「あら。感情野と言語野が同時に動かないのね。まあいいわ。ご覧なさい」


 ファイルの中身。


「事故の原因は、配線。非常ボタンとそれの周りの配線が、細すぎた。設計段階では想定できなかった、空調の重さもあるわ」


「事故は防げなかった。それが結論よ。細い配線、重い空調。それに、おそらく震度1か2程度の小さな地震かしら。それが重なりあって、ありえないはずの事故になった」


「再現性もなければ対策のしようもない、本当に不運な事故よ」


「でも、その中で。ひとりだけ、それに気付いた子がいた」


 ファイルの、矢印。


「あの子はね。火災の原因が、おそらく防火用設備だと、気付いていたみたいよ」

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