第22話

 わたしは。彼のくるしみを。こじあけてしまった。


 どうしようもない。


 どうしようもなかった。


 わたしが、側にいなければ。


 彼は。あんなことを思い出さず。


 わたしは。


 わたしのせいで。


 ここには、いられない。


 彼から離れないと。


 あてもなく、歩いた。


 気付いたら、花屋の前にいた。


 小さな、街角の、花屋。


「あら。早かったわね」


 知らない人。


「連絡はもらっているわ」


 やさしそうで、穏やかな。


「あら。そういえば喋れないんだったかしら」


 言われるがままに、ついていく。


 花屋の、奥。


 その人が、ファイルを差し出してくる。


「事故の記録よ」

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