第16話

 物心ついてから、すぐにひとりになった。

 そのほうが、色々と、楽だったから。


 喋れない人間だと思われたほうが、楽だった。だから、なるべく喋らないでいた。


 発話できるかどうかは、かなり曖昧だった。平常心でいられれば、言葉は出てきやすい。ただし、片言になる。

 でも、感情が乗ってしまうと、全て言葉が出てくるか、何も言えないかの二択だった。こうなると、なかなか制御がきかない。


 喋らないように。目立たないように。そうやって、ひっそりとひとりで暮らすはずだった。居場所も、固定しない。器量のよさは、あまり隠せるものでもなかったから。ばかにはなりきれない。どこかで、綻びてしまう。器量はよかったけど、演技力は私にはなかった。


 その日常の中で、あなたに。


 出会った。

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