第3話

「ララーニア」


 振り返ったララーニアが、笑う。


「おはよ。わたしララーニア」


「そうだな」


 少しずつ、分かってきた。

 ララーニアは、言語と脳の接続がうまくいっていない。考えたことを口に出せないし、初話そのものがうまくいくかどうかも、かなり曖昧。

 だから、にこにこしている。

 敵意がないです、という証。

 そして、だいたい胸にしまっている。言葉通りだけど、お昼ごはんから携帯端末まで、だいたい胸ポケット。

 なので、ララーニアの胸囲はかなり立体的だった。それでもちゃんと人としての見た目を保っているのだから、なんか不思議。着やせするタイプなのかもしれない。


 そして。


「んんふん」


 かなり頭が切れる。


「んっんっんふ」


 はなうたを口ずさんでいる。発話できている。


 かなり、これはと思うことがあった。


 色々なものが、先回りして用意されていたり。

 自分が窓から外を見るのが好きだというのも、1日経たずに洞察されていた。それからは、自分が無意識に窓側を見ると、にこっと笑ってのけぞっていた。


 窓の景色と、のけぞってるララーニア。


「きょうね」


 なんだろ。

 彼女の発話を待つ。

 彼女。口は止まった。

 どうやら発話に失敗したらしい。

 にこっと笑う。


「いこ」


 行こうと促される。


「そうだな」


 なんだったんだろう。

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