第4話

 屋上。

 彼女に、詰め寄られていた。


「ねえ。ララーニアちゃんと仲がいいみたいだけど」


「そっちが俺に振ったんだろうが」


「わたしのことは」


「それは」


 もう、おまえとは関わらない。

 そう言ってしまいたいけど、そうもいかない。

 ここまで。窓際の景色まで。奪われたくなかった。あの窓際が、自分にとって、唯一の癒しだから。あの景色が。


「ねえ。ララーニアちゃんのことは」


「わかった。わかったから」


 いつもの屋上が、どろどろとしたしっとの中にある。終わることのない螺旋階段の、踊り場のよう。


「あ」


 屋上の、入り口。


 ララーニアが、ドアを開けて入ってこようとしていた。


「あ、え、あ」


 発話。微妙なところ。

 彼女が、自分から離れる。


「わかったわね。おねがいね」


 何をだよ。

 とにかく、彼女は屋上を去った。それだけで、ありがたかった。


「ララーニア」


「ん」


「ありがとう」


 ララーニアのことだから、おそらく自分がつめ寄られているのを見て、入ってきてくれたのだろう。


「ね」


 ララーニアが、またいつものように胸から何か取り出す。


「あさ。いったやつ」


 たこやき。いつもより、なんか、大きい。ソースとかつおぶしの量も多め。


「そうか。これを言おうとしてたのか」


「たべよ?」


 ひとつ、取ろうとして。

 やはり、ブロックされる。


「へへ」


 へへ、じゃねぇよ。


「たべさす。たべさす」


「わかったわかった」


 ララーニアが、たこやきをつまようじで刺して、にこにこしている。


 食べさせてもらったたこやきは、とても、おいしかった。いつもより量が多くて、ちょうど、自分のひとくちぶん。


 もしかして。


 ララーニアは、自分のために、これを。


 それ以上は、考えるのをやめた。

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