第31話 うちの妹つよーいけど……色々と心配ッッッッッッッ

「……」


「……」


「……」


 ファミレスにて。

 辰が去った後、俺と七香が隣同士で座り、対面に未那がいる状態。

 

「……」


「……」


「……」


 無言が続く。

 だが、どちらからともなく言った。


「七香さんはお兄ちゃんの彼女さんなんですか?」


「未那ちゃんはこの人の彼女ですよね?」


「「「え?」」」


 俺までハモった。


 今2人ともなんて……


「……じゃあ間を取って俺が仕切ろう。まず未那はなんて言った?」


「えと、七香さんはお兄ちゃんの彼女さんなんですか?」


「何故に!?」

 

 絶対ありえない。俺とコイツは寝取るか、寝取りを阻止するか争っている仲なのに。


「じゃあ……七香どうぞ」


「未那ちゃんはこの人の彼女ですよね?って言った」


「何故に!?」


 未那は妹だぞ! 妹と恋人になったら禁断じゃないか!


 とりあえず誤解しているようなので、未那は妹。そして七香はクソビッチ——ではなくただの学校の後輩と説明した。


「やっぱり後輩さんでしたか」


「ふーん、彼女じゃない………」


 何やら2人して互いを興味深そうに見合っている。……何故?


「ま、まぁそれはそれとして……未那! さっきの男の顔覚えたか!」


「え、まぁ……。という今時あんなザ・チャラ男中々いないでしょ」


「覚えているなら良し! 今後アイツが近づいてきたらさっきみたいに叫ぶんだぞ! 俺がすぐに駆けつけるから!」


 さすがに別々の場所にいたら無理だけど。こうなったら盗聴器でも——


「お兄ちゃんあの人と知り合いなの?」


「ああ、最悪な知り合いだ。知り合いたくもねえが。アイツは寝取り大好きマンなんだ。危険人物だぞ!!」


「ふーん。その危険人物がなんでアタシに話しかけてきたの?」


「そ、それは……」

 

 視線を未那から逸らす。


 間違いなく発端は、俺が七香と関わったから。そしてプールで辰と接触したことで目をつけられた。


 ふと、七香も俺の方を気まずそうに見た。

 

 全ては俺の行動のせい。

 もし俺が寝取りゲー前世のの記憶がなかったら、未那とは普通に仲のいい兄妹として過ごせていたはず。


 こんな面倒なことに巻き込んだのは俺。

 

 ……だから未那に七香を寝取りマンと晒しあげるつもりもない。  


「その、俺のせいなんだ。俺のせいで未那が狙われて……」


「あのっ」


 すると、七香が口を挟んだ。


「実は、うちの兄が未那ちゃんを狙ってるの。こうなったのは私にも責任がある。私は少し前に兄が貴方を狙っていることに勘づいてた。……なのに、止めるような行動は何一つせずにこうやって未那ちゃんとアイツを接触させてしまった。……ごめんなさい」


「……七香」


コイツがこんなことを言うなんて意外だ。俺とはいつもいがみあっていることが多い。ほんと、寝取りさえ除けば割といい奴なのかもしれない。


 しばらく沈黙が続いたが、未那が口を開いた。


 怒られたり、飽きられたりする準備はできている。さぁ、こい——


「心配しないで2人とも。こう見えてアタシ強いから」


 思いがけない言葉に顔を上げる。隣の七香もだ。


 未那は安心させるようにニッコリと微笑んだ。


 精神的に強いってことだよな。うちの妹はこんな時までも天使だ。


 でも……やっぱり色々と心配ッッッ!

 未那は絶対に俺が守る!!!

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