第22話 今の状態ではキンタマもげれない

 その後も俺は、昼の時間を全部、瀬尾辰の監視に注いだ。


 代表で勇臣には、「腹壊した。ぴえん」というLINEを送っといた。OKのスタンプが返ってくる限り、俺はそういうキャラだと思われているのか。


「俺と遊んでくれる? やったぁ〜」


 辰はというと、8人目の美女を口説いて、一緒に遊ぶことに成功していた。

 子連れのママさんじゃん。って、なるほど。取り巻きの1人にお世話を頼むということか……。


 一連の辰の行動を見て思ったのは、強姦や脅迫という、女性に無理矢理といった横暴な寝取りはしない。逆に選択権を与えている。

 

 例えば、先ほどの子連れママさんの場合、子供の面倒ばかり見て、自分はゆっくりできてない。目の下にもうっすらクマができており、育児に苦労しているのが分かる。


 そこで辰が「俺の連れがアンタの子供見ておくよ。だから俺とパァーと遊ぼうぜ。アンタだって、リフレッシュを求めてここにきたんだろ? 短い時間だけど、愚痴やらなんやら聞くし、めっちゃ楽しませるよ」などと口説く。と、それだけではなく、他にも誘惑していたけどな。


 不安や寂しさを埋めることで、女性側に心変わりさせてる。うん、と承諾したのはあちらだ。そこに寝取りセックスが後押しするというか……。


 なるほど……じゃねぇ!! 詐欺師かよ、このヤリチン野郎めッ! よくも人の彼女を寝取れるものだ!!


 このまま頬に右ストレートをお見舞いしてもいいのだが、肝心の強姦現場をしていない以上、ただナンパしたら付いてきた、という事例で片付いてしまう。


 流石ヤリチン、クズ、寝取りチンポ、その他諸々代表。こりゃ単純にはいかねぇなぁ……。


「翔太郎くん?」


「……? って、遙さん!」


 背後から声を掛けられた。

 遙で良かっ……いや、良くねぇ!! 50メートル先には、標的の辰がいる。このままだと遙が目をつけられ、さっきほどのように弱みに漬け込まれて厄介な事になる。


「遙さん、ちょっとこっち行こうか」


「え、うん」


 手を引くのは勇臣に悪いので、先導して動く。

 辰の姿が見えないところへ移動した。ここならアイツにも気づかれない。


「で、遙さん何かな?」


「歩いてたら翔太郎くんの姿を見かけて……お腹大丈夫?」


 ああ、そういう設定でしたね。


「だ、大丈夫大丈夫! もう絶好調だよ!」


「それは良かったぁ。翔太郎くんは私の恩人だから健康でいて貰わないとね!」


「ん? 恩人?」


 すると、遙が改まったような表情を作る。嬉しげ、でも悲しげな顔。


 おい、なんか嫌な予感が……。


「翔太郎くんが七香ちゃんの事を止めてくれてる間に、いーくんとたくさん過ごせる時間が増えてね、自分に自信が持てたというか……ああ、やっぱり私、この人の事がだいだい、だーい好きなんだなーって改めて分かってさ。そしたら自然と行動に移るよななって、いーくんもたくさん照れたり、笑顔を見せてくれるようになって……。今、こんなに幸せなのは翔太郎くんのおかげだよ。ほんとにありがとう」


「……」

  

 うん、感謝の気持ちは嬉しい。しかもヒロインに直接言われるとか。


 でも……今、そういうフラグ的な事を言わなくていいですからぁぁぁッッ!!


「翔太郎くん?」


「あ、いや……なんでもないよ。俺は2人が幸せならOKだ」


「うん♪ 翔太郎くんも誰かいい人見つかるといいね」


 いい人……未那が義妹とかだったら、即結婚しちまうかもだけどなぁ……。




 午後は、ウォータースライダーに行くことになり、俺たち4人は階段を上がっていた。

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