第11話 我が妹の頼みならばどんなこと——はい? 

「シャコシャコシャコシャコ」


 やっぱり歯磨き粉はシステマだよな。


 自分の凡人な顔が映る洗面台にて、朝の歯磨き。磨きながらぼんやりとこれからの事について考える。


 ファーストキス寝取りは潰した。

 だが、あくまで寝取りへの一歩を遅らせただけ。


 これからのドンドン邪魔していきたいが、毎日のようにあの3人を監視していたら、さすがにストーカなのよ。


 身体が自由に動く分、行動が制限されるのが、画面越にはない辛さだよな。


 あれから学校でもちょくちょく目をやるようにしているが、勇臣と遙は以前よりも周囲のべたべた度が上がってきたようにも見えた。


 七香はというと、2人と関わることが少しだけ減った。それは諦めたからじゃない。きっと———


「お兄ちゃん、横にずれて」


「んぁ、ああごめんごめん」


 そういえば、兄妹仲良く並んで歯を磨いている最中だった。

 

「うがいするとこ、見ないでよ?」


「もちろんだとも」

 

 鏡に背を向ける。

 全く、我が妹は今日も可愛いな。


「ん、終わった。髪、伸びたね」


「そうか? このくらいの長さならクラスにもチラチラ見るが……」


「耳に髪の毛掛かってるし、よそはよそだし。そういうところがだらしないの。もう少し髪の毛の細かい長さにも気を配らないと」


「えー……まぁ未那が言うなら切るか。切ったらモテるかな」


「はぁ? 髪切っただけでモテると思ってるとかキモッ。お兄ちゃんは元が残念だから髪を切ったところでモテないしっ」

  

「今日もハッキリ言うなー、ハッハッハッ」


「……てか、他の女子にはモテてもらいたくないし」


「なんか言いました?」


「言ってないしっ! 幻聴じゃないの!」


 ツンデレ対応、ありがたや。


 俺もうがいをして、お口がさっぱり。

 リビングで朝食を取る。


「今日土曜日だけど、未那は何か用事はあるのか?」


「ある」


「そうか、じゃあお兄ちゃんは1人寂しく留守番だなー」


「はぁ? お兄ちゃんも行くよ」

  

「ん? どこに?」


「……まさか、覚えてないの? 『可愛い妹のためだからな!』とかドヤ顔で言ってた癖に」


 未那が眉を顰めてご不満そうだ。


 そういや、なんか言ってましたね。話題が何か分からなかったけど。


「ほんと、お兄ちゃんってば最低っ。……アタシは楽しみにしてたのに」

   

「ごめん、未那! お兄ちゃん今日はとことん未那のために尽くすから、今日の予定を教えてくれてないか?」


 パンと手を合わせ、頭を下げる。


「尽くすねぇ……。ま、まぁそれならいいけど……」


「ありがとう!!」


 一体どんな予定だ?

 ブランド物を買ってか? ま、まさか彼氏を紹介するとか……。


「今日、学校の友達とダブルデートすることになってるから、お兄ちゃんはアタシの……その、彼氏役。あ、あくまでも今日だけなんなからっ!」


 ま、まぁ我が妹の頼みならばどんなこと——はい? 


「はい?」


 今、彼氏役とかいうびっくりワードが出てきたた気がしたんだけど……。


「だーかーら! 今からに行くよ!!」


 マジっすか、妹さん……。

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