第6話 そのモブは、陰キャ。友人キャラ昇格を目指す①

「んー……なるほどなぁ」


 妹の美味しい朝食を食べ、元気よく学校に登校してきた俺。さぁ寝取り防止作戦を実行するぞー、と意気込んでいた時、ふと、自分の立ち位置を考えていた。


 教室の隅の席で周りを見渡すもやはり話しかける者はいない。


 エロゲのモブと言っても2種類ある。


 陽キャのように騒ぎ立てて、揶揄う立場。時に主人公に直接ヤジを投げる。


 陰キャで日陰。誰からも話しかけることなく、エロゲの字幕にさえ登場しない。


 どうやら翔太郎は陰キャの方らしい。


 顔が特別悪いわけでもない。でもクラスに男友達はいないし、女子の間でも話題に上がらない存在になっている。

 

 寝取り作戦のために動くということは、学校で目立ちまくりの3人と積極的に関わらないといけない。

 前世みたいに、行動に制限があって、なおかつ画面越しならいいものの、ここは寝取りもののエロゲの中で今の現実。ある程度メイン登場以外の人とも関わりを持たないと、人生やっていけない。


 俺自身をどうにかしないといけない……と、なれば……イメージアップだ!



〜1時限目 国語〜


「はい、この文で作者は何を伝えたいか……分かる者」


「はい! はい!」

 

「お、御手洗珍しいな……答えてみろ」


「彼女と行くならサイ◯リアです! ミラノ風ドリア、めっちゃ美味いです!!!」


「愛は伝わったが、不正解だ」



〜2時限目 授業終わり~


「あ、そのノート化学室に持っていくんだろ。俺がいくよ、重いだろうし」


「あ、ありがとう」


「気にしないで。あっ、そこで喋っている2人。一緒に持っていってくれないか?」


「は、はぁ……」

「ま、まぁいいけど……」


〜3時限目 体育〜


「オラッ!!」


「おいおい、御手洗の奴ダンクシュート決めやがったぞ……」

「しかもあの華麗なボール捌き。なんなんだアイツ、昨日まで冴えない陰キャだっただろっ」

 


〜4時限目 日本史〜


「むにゃむにゃ……はっ! ハンバーグ!」


「おいこら御手洗っ! なに寝てるんだ! 後から職員室にこいっ!」


「「「………」」」



 そして怒涛の4時限を終え昼休み。職員室でしっぽり怒られて席に着くと、2組の男子生徒が近寄って来た。


「あのさっ」


「ん? なんだ。化学室の手伝い頼んだこと、怒りにきたのか?」


「いや、それは全然気にしてねぇけど……御手洗って結構明るい奴だったんだな」

「教室の隅でコソコソしてらから話しかけにくかったわ」

「でさ…俺たち今から売店行くんだけど良かったお前も行かかね?」


 ほら、来たぞ。友達候補1号、2号だ。


 友達作りに大切なのは、自分から話かけること。そしてコイツは話しかけてもいい奴だと認識させること。


「ああ、もちろん」


「ありがとう。売店に行く最中にお前が振られた経緯教えてくれよ」


「教えてくれって言っても、告って振られただけだけど」


 両端をガッチリ挟まれ、根掘り葉掘り聞かれる。

 

 悪いな未那。お前の美味しいお弁当はお兄ちゃんが責任持って放課後食うからな。


 売店に続く廊下、見覚えのある背中を見た。

 その人物が振り返る。

 栗色の髪の毛はサラサラで、背中くらいまであるのをポニーテールにしている。目はパッチリしていて、まつ毛が長い。リップクリームだけは塗ってて、唇は艶のある桃色。制服越しからでもわかる巨乳。


 メインヒロインの朝月遙あさつきはるかだ。

 昼はいつも勇臣と屋上でラブラブ食べさせ合いをしているはずなのだが……。


「……あ」


「ども」


 視線が合ったので無視する訳にもいかず、ペコッとお辞儀。そのままスルーかと思いきや、


「あのっ、ちょっと待って!」


 呼び止められてしまった。

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