第3話 モブ、振られた。メインの登場人物に認知される
俺が告白すると静寂が訪れる。
今まで3人の話題で持ちきりだった登校中の生徒も静かになった。
頭を下げているため、七香の表情が分からない。まぁ答えは決まっているだろう。
「ごめんなさい。貴方の事、知らないし、関わってないし、興味ないので」
愛想の良い笑顔できっぱり言われた。
振られるのは予想済み。
……やっぱりちょっとは傷ついた。こんな大勢の前で振られるのは結構メンタルやられる。
だが、めげないのがモブ。問題は次だ。
「おいアイツ、あの瀬尾に告白したぞ……」
「勇者すぎんだろっ。振られるのは当たり前なのに。瀬尾さん、噂ではイケメンしか興味がないとか……」
「だから芳賀と一緒にいるの? 狙ってるってこと? うわ、怖ぇー」
周りは俺を憐れむ声や七香の評価について話している。
いいぞ、注目が完全に3人と俺に集まっている。
俺はキリッと主人公の勇臣を見る。
「勇臣君、君は遥ちゃんと付き合ってるんだろ?」
「ああ、そうだが……まさかお前っ、次は遥を……!」
「いや、違うわ! 次は遥ちゃんを狙ってるとかないからっ! ……こほんっ、俺が言いたいのは、なんで遥ちゃんという可愛い彼女がいるのに、別の女の子とも登校してんのって話」
指摘すると、勇臣はあからさまに動揺した。キョロキョロと左右の遥と七香を見る。
「べ、別に2人が登校したいって言ってるのだからいいだろ……」
ほう、そうきたか……。
「この際ハッキリ言うぞ! 別に振られた腹いせとかじゃないからな! お前は、——どっちが好きなんだ!」
「っ……」
さぁ悩め主人公よ、この選択次第でヒロインたちの動きが変わってくるぞ……。
「いーくん……?」
「先輩?」
遥と七香も不安そうに見上げる。
しばらく無言が続いた。
てか、すぐに彼女って言うだろ、そこは。これはかなり七香に毒されてるぞ……。
「俺が好きなのは……も、もちろん彼女だ」
「いーくん!」
彼女を選び、遥と俺はほっと胸を撫でる。ただ、七香が一瞬、悔しそうな顔をしたのは見逃さなかった。
「……そうか。じゃあお幸せにな、2人とも!」
やる事は終わったので、足早と靴箱へ向かった。
「……なんだったんだアイツ」
「不思議な人だったねぇ……。でもいーくんが私の事をちゃんと好きで安心したよーっ」
「あ、当たり前だろ。彼女なんだから」
「だよねーっ!」
「……」
「七香、どうした?」
「いえ、なんでも……」
口ではそう言うも、七香は走り去る翔太郎の顔を恨めしそうに睨んだ。
「やっぱりモブだなぁ俺」
自分の教室が分からなかったので、担任に「振られたショックで忘れましたー」と言い、哀れんだ瞳で教えられた。
席は一番後ろの窓際。
席に着くと、ひそひそ話で俺を見るクラスメイトばかり。
その後も話しかける生徒は居らず、どうやら俺はぼっちということが分かった。
俺は振られた上にぼっちだ。だが、メインの登場人物たちには強烈な印象を与えただろう。
ここで終わらないのが、
念には念をということで、昼休みに瀬尾七香の下駄箱にラブレターを入れといた。
「今朝の人、やっぱりわざと告白した……?」
七香が勘づいていると知らずに。
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