第2話 んで、俺はモブなのよモブ。ということで寝取り役の美少女と接近しよう!

 俺の転生してきた世界が判明した。

 どうやってって? 学園名だ。


 ——柊木学園。【彼女がいるのに、助けた小悪魔後輩に責められて僕はもう……】略して……なんだろ? まぁ寝取り系エロゲでいこう。と、学園名が同じなのである。学園名なんてほぼ被ることはないだろう。


 俺はどうやら寝取り系エロゲのモブになってしまったらしい。


 ん? 何故、俺がこんなに落ち着いてるからって? オタクなら一度はこういう展開を妄想したものだろう?



「お母さんもう仕事に出たから。今日は、パンケーキを焼いた。カリカリのベーコンもあるから、冷めないうちに食べて」


 妹の未那みなちゃんが言う。

 食卓には、美味しそうなパンケーキを始めとした、手の込んだ朝食が並んでいる。


「これ、全部未那が作ったの?」


「そうだけど……い、いつものことでしょ。そんなに驚いて……今日のお兄ちゃん変だよ? なんかあった?」


 まぁ他人が乗り移っていますからね。

 ツンデレで献身的な妹がモブにいたとか、隠しキャラとかじゃないよな?


「なぁ、未那よ。いつもの俺を教えてくれ」


「え、根暗陰キャでモサくてキモい」


「すんごいハッキリ言うな」


「だって本当のことだし。いつも何かにビクビクしててキモいんだもん。……今みたいにちゃんとしてればそこそこカッコいいのに……」


「ほう。未那は今みたいなお兄ちゃんが好きだと」


「は、はぁ!? 聞こえてたの! キモっ。ま、まぁ……今のお兄ちゃんの方がちゃんと話しできるし、好き……」


 素晴らしいツンデレ妹じゃないか。




「うむ、アイツが寝取り役のヒロインだな」


 校門前に待機して30分後。ついに目的の人物たちを見つけた。


 生徒なんて見つけるのは大変だろう。だが、そいつらは幸いにも人一倍目立っていた。


 三人組が近づいてくる。


「ちょっ、2人とも一回離れよっ。めっちゃ目立ってるから」


 美少女に挟まれている男こそ、この寝取りゲーの主人公だ。


 主人公である芳賀勇臣はがいさおみ君は、とにかくいい男だ。顔は当然として、性格もムカつくほどに好青年。両親は海外に行っていて、1人暮らしという王道の境遇。 

 普通にマッチョな体型をしている上に、家事も万能。これで誰にでも優しい好青年なのだから、美少女にモテるのも当然だろう。


 その両脇には美少女。

 栗色のポニーテールに活発そうな見た目の子と、清楚そうな黒色のショートカットの子。


 ターゲットは清楚系の方だ。

 主人公の1つ下の後輩、瀬尾七香せおななか


 毎月、違う男と付き合っている噂が流れているが、その真相は誰にも分からない。

 しかし、その本性は気に入った男は彼女が居ようとお構い無しに誘惑する清楚系ビッチ。貞操観念が低く、ボディータッチやキスなどのエロい事は、スキンシップ程度に思っている。


 この様子だとナンパから助けた後だろう。


 主人公の事を気に入っており、甘い猫撫で声と過激なアプローチで好きと言い寄っては様々な誘惑をしてくる——と、七香のキャラ設定はこんな感じかな。


「な、七香ちゃん! いーくんは私の彼氏なんだよっ! いくら仲がいいからって朝の登校までついて来なくてもっ」


「まぁまぁ遥先輩。私と先輩はこれくらいのスキンシップ、日常みたいなものですよーっ。ねー、先輩?」


「ゔっ、うん……」


 随分と仲が深まっているみたいだな。これは寝取られるのは時間の問題……。


 この3人の空間に首を突っ込む者はおらず、ただ遠くから指を咥えて見ているだけだ。

 俺はそうしない。何故なら放っておけば寝取りルート真っ逆さまだから。とは言え、初対面のモブがいきなり話しかけたら奇妙がられるだろう。


 そこで俺というモブの顔を覚えてもらう方法がある。


「ん? アイツ2人の知り合い?」


「私は知らない人」


「先輩、私もです」


 いきなり進路を妨害するように現れた俺に戸惑う3人。


 よしよし、俺に視線がずれたな。


 頭は90度に下げ、手はピンと伸ばして、声ははっきりと。


 そして、俺は言う——


「一目惚れしました! 俺と——付き合ってください! 瀬尾さん!!」




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