湿地帯①

 〜湿地帯…


 湿地帯周辺は、水草や木が生い茂り、陸地が少なく周辺は沼地であった。湿気があり薄い霧が立ち込めていた。


 フォルサ達は爬虫類型の魔物に気付かれ無いように、高台を降りて、水草が生い茂る辺りへと隠れて、魔物達の動きを見ていた。


 爬虫類型の魔物達は、人間達を殺して手に入れた武器や防具を身に付けていた。


 「見張り台の上に居る奴が、この辺で強い奴だ。アイツに見つからない様に攻める」


 フォルサは見張り台の上を指して言う。


 「取り敢えず50匹くらい狩って、一旦下り別方向から攻めるやり方で行くけど…意見のある人は居るか?」


 その言葉にカルファが手を上げた。


 「攻撃と回復合わせて4人では、50匹倒すのも苦労するかと思うけど…」


 カルファの言葉にティオロが「ん…僕は?」と、尋ねる。


 「お前は最初から頭数に入っていない」


 「そんな…」


 フォルサがアゴヒゲを撫でながら少し考えて…


 「まあ…そうだな、もしもの場合は、何時もの戦法で行こう!」


 フォルサは親指を立てながらニヤけた表情で言う。


 彼の表情を見てカルファが深く溜息を吐きながら、首を横に振る。


 「どうかしたの?」


 アメリがカルファに尋ねる。


 「アイツの言う戦法とは『ヤバくなったら一目散で逃げる』て事だよ…」


 「そう、俺のやり方は常に行き当たりばったりさ!」


 「そのお前のやり方で、どんだけ優秀な人材がメンバーから離れて行ったんだよ?もう少し考えて行動しろよ!」


 2人が話して居る時だった。リーミアが突然立ち上がる。


 「危ない!」


 リーミアは、急いで電撃魔術を放つ。


 バーン!


 驚いたフォルサとカルファが振り返ると、後方に巨大な魔物が電気ショックで倒れていた。


 「すまないな嬢ちゃん…」


 「助かった、ありがとう」


 2人はリーミアに礼を言う。


 「さあて、気を取り直して狩りを始めるぞ。嬢ちゃんは攻撃魔法と補助魔法を頼む。アメリは回復系魔法を男性達は前衛で戦う。良いな?」


 「了解!」


 彼は腰に付けていた袋から筒状の物を取り出して、軽く底をポンと叩き、爬虫類の魔物達が居る方へと投げる。


 落ちる瞬間に、筒状の物がポンッと爆ぜた。それに気付いた魔物達が数匹フォルサ達に気付き襲って来た。


 魔物達に向かってリーミアが電撃魔法を放つ。彼女の魔法で数匹が倒れた。


 上手く魔法攻撃を交わした魔物達が、フォルサ、カルファ、ティオロと、交戦する。


 この間にも、リーミアが攻撃補助魔法で魔物の目眩しを行い、相手の攻撃を鈍らせる。


 アメリは、仲間達の体力回復を後方から行っていた。


 フォルサとカルファが軽く数匹の魔物を倒す中、ティオロだけ最初の一体の魔物とやり合っていた。


 「ねえ、コイツを何とかして〜⁈」


 「自分で倒しな!」


 「だけど…」


 魔物はティオロよりも少し背丈が大きかった為、僅かに押され気味だった。


 それを見たリーミアが、ティオロに補助魔法を掛ける。


 その効果で、彼は少し攻撃力が上がり、何とか最初の一体を倒した。


 「アレ、僕…何か強くなった感じ?」


 それを傍らで見ていたアメリは、リーミアが幅広いポジションをこなせる事に改めて驚く。


 「全く、何者なのよ…この子は?」


 まだ実力を見せていない事を考えると、仲間でありながらも末恐ろしく感じてしまった。


 彼等は数回、同じ事を繰り返し50匹程魔物を倒し、周辺から魔物の姿が見えなくなり、一時退散しようとした時だった。


 付近にいた魔物が、彼等に気付き逃げ出した。


 「あ、アイツ逃げやがったぞ!」


 ティオロが、魔物を追いかけ始める。


 「コラ、追いかけるな!」


 フォルサがティオロを呼び止めようとした瞬間だった。


 見張り台にいた魔物が、彼等に気付き角笛を吹いた。それに応じて草むらに隠れていた魔物が現れ弓を放つ。


 「危ない!」


 カルファがティオロを庇う。


 グサッ!


 飛んで来た矢がカルファの肩に刺さる。


 「ウグッ…」


 それを見ていた皆が、飛び出して丘になっている場所までカルファを支えて移動させた。


 リーミアが結界を張り、周囲からの攻撃に皆を護る。


 「大丈夫か?」


 「何とか…」


 その様子を見ていたティオロは面目無さそうな表情で「申し訳ない」と、謝る。


 負傷したカルファはティオロに向かって言う。


 「気にするな、次はしっかり作戦を実行しろ…」


 「はい…」


 矢を抜き傷口を回復させたアメリは周囲を見回して震え出す。


 「あんまり悠長な事言ってられないわよ、この状況なんとかしないと…」


 皆が顔を上げて周囲を見回しすと、結界の周りには魔物の群れに押し寄せている。


 彼等は魔物達によって、取り囲まれてしまって完全に逃げ場の無い状況だった。

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