コテージ
フォルサは周囲を見回して、大きな木々に赤い糸を巻き付けた紐を見付けて、荷物を置いた。
「確か…この辺だったな」
フォルサは袋から奇妙な形状の鍵を取り出し、掌に乗せて周辺を歩き周る。ある地点に着くと鍵がプルプル…震え出し、ビュッ!と宙を飛んだ。
まるで磁石の磁気に反応したかの様に鍵が空中に刺さる。その位置へと向かったフォルサは、鍵をガチャガチャと回す。
ガチャリ
音を立てて、見えない空間に扉が現れ、コテージが出現した。扉の中には室内が広がっていた。
「取り敢えず、荷物をコテージの中に入れてくれ」
そう言われて、皆が荷物を室内の入口へと置く。全員とは少し遅れて、ティオロも着き、くたびれた様子で荷物を置いた。
「こっちへ来てくれ」
フォルサが皆を少し高台へと案内する。
「音を立てずにな…」
小声で皆に言ってから、彼は遠眼鏡を利用して高台の下に広がる湿地帯を眺める。
「ふ…む、結構いるな」
彼はカルファに遠眼鏡を渡す。カルファも湿地帯を一望すると、アメリに渡して、アメリは一望した後にリーミアに遠眼鏡を渡す。
遠眼鏡を受け取ったリーミアは、湿地帯を見ると、周辺には爬虫類型の魔物達が見えた。
リーミアは、ティオロに遠眼鏡を渡す。
「数は…200~300匹て処かな?」
カルファが隣に居るフォルサに向かって言う。
「そうだな、ただ…この場所には主も潜んでいる。奴が出て来る前に叩きたいな」
「湿地帯中央の木の上に見張り台もある、深追いせず直ぐに退散出来るような場所で狩りするのが良いと思うが…」
「そうだな、先ずは手薄な場所から攻めた方が良いな…リーミアちゃんはどう思う?」
傍らで湿地帯を眺めるリーミアにフォルサは声を掛ける。
「出来るだけ、見張り台から離れた位置で狩りをしましょう。魔物達が仲間を呼んだら少数である、こちらは不利になるから…」
「なるほど、では…それで行こう!」
話が決まると、皆はコテージに戻る。男性達は武器防具の入った袋を持って、コテージの外で甲冑等の装備を着込む。
「何で、男性は外で着替えなきゃいけないのさ?」
ティオロは不満を言いながら甲冑を装備する。
「文句言うな、下手な事言うと…君の彼女に魔法の炎で焼かれるぞ!」
カルファが隣で着替えながら言う。
「へ…アイツは彼女では無いし、別に何も怖く無いさ」
ティオロは甲冑を装備し終わってからカルファに向かって答える。
コテージの中では、アメリとリーミアが衣服を脱いで、鎖かたびらやローブを着込んでいた。
着替えの途中、アメリはリーミアの額飾りが気になって見ていると…
その様子にリーミアが気付く。
「ん、どうしたの…?」
「ねえ、リーミアの…その額飾りって、傷か何かを隠しているの?」
「違うわ、私は転生者らしいの、世の中にはその紋様を恐れる人がいるらしいので隠しているだけ。見たい?」
躊躇い無く平然とした口調に対して、アメリは少し拍子抜けしてしまった。
「そ…その転生者って、誰なのかしら…?」
「さあね、私は修道院に居る時期は、誰からも自分の転生前の事は教えて貰え無かったの。ただ…生前の記憶が何らかの拍子で思い出される時、自分は何処かの国のお姫様見たいな感じがするのよね」
「その前世の記憶って、もしかしてエルテンシア国の?」
「可能性は否定出来ないけど、でも…毎年大勢の人が自分は生まれ変わりとか言いに来る中で、私だけ特別枠にしてもらう訳にはいかないでしょう?」
「で…でも、リーミアが持っている、その短剣は伝説の魔法剣でしょう?それだけでも、十分な証拠となると思うけどな」
「これね…」
リーミアは、聖魔剣を鞘から抜き取る。スッと音を立てて現れた剣は鞘よりも長く、銀色の刃を光らせていた。それを目の当たりにしたアメリは驚愕の表情を隠し切れない表情だった。
その剣を見ていたリーミアは、少し険しい表情を浮かべる。
「マネニーゼ市場の占術師の処で、リムア姫の伝説は聞いたけど…私の記憶には、もう少し違う一面が感じられるのよ…」
「え…それってどう言う事なの?」
不思議な表情でアメリは答える。
「生前の記憶が上手く思い出され無くて、はっきりとは言えないけど…私が王位になる為には必要な要素が少し足りてないと…言う感じかな?例えば、この魔法剣なんかはね、実は…」
リーミアが言葉を発した時だった。ガチャッと音を立てて、扉が開きフォルサが入って来た。
「おーい、もう着替え終わったかな、荷物を取りたいのだけど…」
ふと…フォルサが顔を向けると、まだ着替え中の格好のアメリとリーミアが、フォルサを見ていた。更にリーミアの手には見慣れない剣が握られている。
「え、アレ…?」
その瞬間だった。彼の顔面に向けて大きな荷物袋が飛んで来た。
ボスッ!
「グハ…!」
フォルサは、コテージの外へと押し出された。
「乙女の着替えを覗か無いでよね!」
バタン!
アメリが勢いよく扉を閉める。
2人は急いで着替えを済ませて、着替え終わると彼女達はコテージの外に出て来た。
「お待たせ~…」
アメリが少し陽気な感じで男性達に言う。荷物袋を顔面に投げ付けられたフォルサは、顔の中央部が赤くなった状態で起き上がる。
「もう少しお手柔らかにしてくれないかな、魔物退治する前に仲間に殺された…なんて言ったら、皆に笑われてしまう」
「あら…ゴメンなさい。まだ嫁入り前なので、運命の恋人にしか自分の体を晒したく無いので、許してね。ホホ…」
その一方でリーミアがティオロの側へと近付く。
「貴方は覗かなかったわね、異性には興味無いのかしら?」
「ん…いや、別に…そう言う訳では無いけど…」
「あら、そうなの!一応貞操観念はあるのね」
意外な反応にリーミアは少し関心を寄せた。
「フ…胸がまな板、お子ちゃま少女の体を見てもつまん無いからね。やっぱり大人の女性の方が魅力的で良いよ」
そう言ってティオロが振り返るとリーミアが魔法の杖を握って、怒りを堪えた笑みでティオロを見ている。
「ねえティオロ…波動で空中遊泳するのと、少しこんがりと焼けるのと、氷像になるのと…どれが一番良い?特別スペシャルミックスプランなんてのもあるわよ。フフ…」
「アワワ…ゴメンなさい嘘です。リーミア様はとてもお美しいです。どうかお怒りを鎮めてください!」
ティオロが土下座しながら謝る姿を見たカルファは、先ほどの彼の発言は単なる強がりだったと知る。
囁やかな賑わいの後、彼等は本来の目的である魔物討伐へと向かい始める。
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