武器屋③

 皆は軽い揺れに足元がフラつき、壁等にしがみ付いた。


 「ヒッ…もしかして、これって魔法の杖がリーミアちゃんの魔力に呼応した効果なの?」


 「ああ、そうだな…」


 流石に予想以上の反応にケトムも驚きの表情を隠せずに居た。更に店が突然揺れ出した事に試着室に居たティオロまでも慌てて飛び出して来た。


 「な…何、今の揺れは…地震?」


 灰色の甲冑を身に着けた状態でティオロは現れた。


 甲冑に身を包んだティオロを見てリーミアは彼の側へと向かい、脚や腕の甲冑を触る。


 「悪く無い装備だけど…軽量なの?」


 「まあ…コイツは脚が早いから、重量級の装備より軽い方が良いかと思ってね…」


 「確かに、そうね…」


 リーミアはティオロの顔を見て頷く。


 「あと…彼に合う武器と盾をお願いしますね」


 「かしこまりました」


 ケトムはティオロを連れて、武器が置いてある場所へと連れて行く。


 「最近は皆、短剣を木の棒に巻き付けて槍として戦うのが流行ですが…普通の剣にしますか?」


 「僕は細剣が良いな…」


 ティオロは、手前にある銀色の剣を手に取り、鞘から剣を抜き取り剣先を眺めた。


 「これで良いよ」

 

 ティオロは満足そうな表情で言う。


 「待って…」


 リーミアが、ティオロの持った剣をジッと眺める。


 「これじゃあダメね。直ぐに壊れてしまうわ、他のにしましょう」


 リーミアは、他の剣も調べ始めた…武器を取り「これはダメ、これはイマイチ…」等言って剣を見て回る。


 「中々、武器の鑑定に厳しいお嬢さんだね…」


 ケトムは少し驚いた表情で言う。


 「これなんか良いわね」


 リーミアが手にした剣は銀の鞘に収められた長剣だった。ティオロはリーミアから剣を手渡されて剣を掴むが…意外に重量があった。


 「この剣…重いよ」


 「これは…炭素と銀素材で鍛えられた一振りですよ。重量はあるけど…その分耐久性には優れています。魔獣討伐等で使えば効果が発揮される剣です。中々良い目をお持ちだ」


 ケトムは関心しながらリーミアを見た。


 「こんな剣使ってたら、武器よりも先に肩が壊れるよ」

 

 ティオロは、そう言って…剣を戻した。


 「ダメなの?」


 「使い易いのが良いよ」


 結局…リーミアと話し合い、ティオロは細剣と盾を購入する事に決める。武器と防具を一式揃えるとリーミアはケトムに勘定を聞く。


 「かしこまりました…こちらで勘定しますね」

 

 彼等を受付に連れて行き、購入金額を清算する。


 「全部で金貨350枚、銀貨なら35000枚程になりますが…」


 その額を聞いてティオロはギョッとした。市場でも金貨30枚あれば小さな屋敷を建てれる…、その辺の若い娘だって金貨を数枚チラつかせれば直ぐに寄って来たりする。それだけの額があれば、しばらく酒代に困らなくて済みそうだと…ティオロは思った。


 「分かりました、少々お待ちください…お金を用意して来ます」


 リーミアは平然とした口調で言って店を出ようとする、ティオロはリーミアが例の袋から金貨を出すと思って追い掛ける。


 「貴方は店にいなさい!」


 「いや…手伝わせてもらうよ」


 「結構よ、付いてこないでよ!」


 「なんでさ?」


 2人は言い合いしながら店の外へと出る。不思議そうな表情でケトムが彼等を見ていた。


 店の外で何か話し合っている中、リーミアが大声で「ちょっと、ティオロ止めて!」と、大声で言う。コインがじゃらつく音が聞こえる。


 「もう…どうするのよコレ…」


 リーミアの少し呆れ返った声が聞こえた。


 「ウヒョ~、リーミアちゃん最高~。僕ウレシイ」


 「もう…知らない、スキにして…」


 しばらくしてティオロが満面の笑みで入って来て、革製の袋に金貨が沢山入っていて、ケトムの前に金貨を出した。


 「ケトムさん、これで勘定してくれ」


 ケトムはティオロに言われて勘定をする。


 「おや…金貨が数枚多いね、余った分は返しますよ」


 「いや…結構、残りの分は店に寄付するよ」


 「え…?ですが、それでは君達に失礼過ぎますよ」


 「平気、こっちはまだ予算があるから、気にしないで」


 「は…はあ?」


 ケトムは、ふと…視線を隣に向けると少し呆れ返った表情のリーミアを見た。


 「じゃあ、リーミア帰ろうか」


 「ええ…そ、そうね」


 それまで彼を引っ張ていたリーミアが、勘定する時から少し控えめな態度に変わり、ティオロが彼女を引率し始めた。


 (何かあったのか…この2人に?)


 ケトムは不思議そうな表情で彼等を見ていた。


 2人は自分達が購入した装備品を纏めて持って店を出る。店を出る直前フィーシャがリーミアに声を掛けた。


 「もし良かったら、この近くにある魔法道具の店に行って見て、きっと役に立つ商品があるから」


 「本当、ありがとう」


 リーミア笑顔で答える。

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