武器屋②

 「ところで君達は一体…どう言う仲なんだ?」


 「腐れ縁です!」


 リーミアは躊躇わずに答える。


 「なるほど…」


 ケトムは愛想笑いしながら「じゃあ…ティオロ向こうへ行こうか?」と、彼を店の奥へと連れて行く。


 2人が店の中に入って行く中、リーミアがケトムに声を掛ける。


 「私もちょっと店の中を見させてもらいますね」


 「ああ…どうぞ、そうだ…家に居る者を呼びますよ」


 「はい…」


 「おーい、フィーシャ!」


 ケトムが大声で店の奥に向かって呼ぶ。


 「なあに?」


 しばらくして若い声が店の奥から聞こえて来た。


 奥から現れたのは、赤茶色の長い髪をしたリーミアと同じ位の若い娘だった。


 若干…リーミアよりも背丈が低く、小柄で華奢な体をしていた。白い衣服に身を包んだ彼女は、腕を組みながらケトムの顔を見ていた。


 「話があるなら早く言ってよパパ」


 退屈そうに欠伸しながらフィーシャと言う少女は話す。


 「彼女に店の商品の説明とかしてくれ、俺は彼に見合った装備を用意するから…」


 「ふ~ん…」


 生返事をしたフィーシャは目の前に居る少女を見てドキッとした。


 平凡そうな振舞いをして居る少女…だが、その立ち位置からして高貴な雰囲気を漂わす魅力溢れた彼女に、フィーシャは何か言い切れ無いものを感じた。


 「あら、綺麗な人ね…」


 「え…そうですか?」


 リーミアも少し照れながら答える。フィーシャはジロジロとリーミアを見回す。


 「ヘェ~…貴女気品がある上に、何か強そうね…クラスは武器系なの?それとも魔法系…どっちかしら?」


 「ええ…と、どちらも大丈夫よ」


 「ふ~ん…珍しいわね、普通はどっちか片方のクラスしか決められないのに」


 「でも…今日は魔術師用の装備を買いに来たわ」


 「そうなんだ。分かったわ」


 フィーシャはリーミアに魔術師用の装備を一式用意し始める。


 「衣装と、グローブに、魔術師用のマント、それと服の下に着る鎖かたびら…ね。まあ大体これくらいあれば基本大丈夫だけど…後は何かいる?」


 「そうね…」


 リーミアは先日店に来た時に購入しようと思った、店に飾ってある魔法の杖を見た。


 「あの杖欲しいわ」


 「え…?」


 フィーシャは驚いた表情でリーミアを見た。


 「ちょっと、貴女…あの杖はギルドで金の称号位の魔術師が使う杖よ…貴女が持っているペンダントの称号…それってまだ青でしょ?」


 「ダメかしら?」


 「ダメ…って言うよりも、能力が低く過ぎる段階で、強い武器を持っていても効果は発揮されないし、そもそも…駆け出しの人が購入するには所持金が足りないと思うわ」


 「お金ならあるわよ」


 「で、でもねぇ…」


 彼女達の会話にケトムが横から入って来た。


 「ハハハ、フィーシャよ見た目に誤魔化されては駄目だぞ」


 「え…?」


 「彼女は称号は下かもしれないが…秘めた能力はとてつも無い物だぞ、多分…金の称号さえも越えているかもしれないな…」


 「あの…ケトムさん、ティオロの装備は終わったのですか?」


 リーミアが気になって声を掛ける。


 「ああ…彼は今試着室で鏡を見ながら細かいチェックをしているよ、声が掛かるまで待機だから来たんだ」


 ケトムは、そう言いながら店に飾ってある魔法の杖を手に取ると…それをリーミアに手渡す。


 赤黒く大きな魔石を埋め込んだ魔法の杖だった。先端は魔石を中心に金色の装飾が施され、黒の漆で杖全体が染めてある立派な杖だった。リーミアは、魔法の杖を軽く持つと納得した表情をする。


 「まあ…何となくしっくり来るわね、これ以上に強力なのは無いのよね?」


 「ハハハ…それ以上に強いヤツは、一般の店では売られて居ないよ。魔術師に頼んで作って貰うか…個人で売買してる露店を探すしか無いな…」


 「そう…」


 「ねえ、本当に使いこなせるの、それ…?」


 フィーシャが不安そうにリーミアを見る。


 「軽く振って見ると良い、魔力が低くければ杖は何の反応も現れ無い筈だから…」


 リーミアはケトムに言われた通りに魔法の杖を軽く一振りする。


 シュッ


 ゴゴゴ…


 店が突然ガタガタ…と軽く揺れ始め、装備品類等がカチャカチャと音を立てる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る