魔法道具屋
〜 魔法道具屋
武器防具屋からさほど離れていない場所に、魔法専門の店があった。店の主人は若く美しい女性で、名前はシャルアと呼ばれていた。
武器防具の店と比べてあまり忙しく無く、魔法好きの女性客の溜まり場の様な感じであった。
その日…店に来ていた女性客が魔法道具を購入して店を出て行くと、店の中には客の姿が無くなり、暇な時間が訪れた。
その時だった…店の外から大声が響いて来た。
「ちょっと貴方、今…他の女性をジロジロと見ていたわねー!」
「ち…違うよ、珍しい格好しているな…と、思って見たんだよ」
「何が珍しい格好よ!」
「頭の上に、黒い鳥を乗せた女性が歩いてたんだって。ほら、あっち…!」
「嘘ばかり!」
「本当だよ」
腕を組みながら少女は少年に向かって言う。
「あの~…何かありましたか?」
シャルアが気になって店から顔を出した。
「あら、どうもこんにちは~…本日も日が宜しいですね。ウフフ…」
リーミアが愛想笑いしながらシャルアに向かって話す。
それを後ろで見ていたティオロは「ケッ…」と、呟いた。その声をリーミアは聞き逃さ無かった。
バシッ!
彼女は魔法の杖でティオロを打ちのめした。
「グハ…」
一撃でティオロは、その場に倒れる。
「あのぉ…私達、ギルド集会所で登録を済ませて来たのです、フフフ…」
リーミアがシャルアに向かって話し掛ける。
「そう…冒険者用のアイテムを買いに来たのね、どうぞ入って」
彼女は二人の様子を見て微笑みながら言う。
リーミアはティオロを起こして、一緒に店の中へと入って行く。魔法道具屋の店の中は小さいが…あらゆる術具が揃っていた。レンティ占術師の店も色々な物が揃って居たが…彼女の店と比べると、シャルアの店は店内が綺麗に整っていて落ち着いた雰囲気が感じられた。
「こちらが冒険者達に人気の便利道具よ」
彼女がリーミア達に出した物は、革製の袋と白い粉が入った瓶、それに積み木の様な物で作られた木の箱だった。
リーミアは不思議そうな表情で道具を眺めた。
「これって、全部使い方が分からないのだけど…」
「大丈夫よ、初心者には今からちゃんと説明するから」
彼女は、そう言って革製の袋を手に取る。
「こちらは魔法の袋よ。そちらの方が持っている甲冑や道具類等を全て入れる事が可能よ、これ一つあれば荷物に悩まず長期間の旅も楽に行えるわ」
それを聞いたティオロは、彼女が持っている巾着袋を見た。
(リーミアの物と、同じ用途の物だな…)
シャルアは次に瓶に入った白い粉に手を伸ばす。
「こちらはルメンと呼ばれる魔法の粉よ、水と混ぜて固まらせて一つまみ口にすれば、一食分の空腹を凌げるわ、あと…食材を節約したい時に、食べ物と混ぜて使うと便利よ。ただし…多用しては危険なのよ」
「何故ですか?」
「これは魔法の粉で作られた物だから、食べ過ぎると薬物依存症になるからよ」
「なるほど…」
リーミアは真剣な表情で聞いていた。
「最後にコレは…説明するよりも、使って見ると分かるわ」
シャルアは何も無い壁に向けて木の箱を転がした、箱は壁に当たると、積み木が分解され壁に繋ぎ合わされて、最後には扉の形へと変わった。
「どうぞ、中に入って」
呆気に取られたリーミアはティオロと顔を合わせながら、シャルアに勧められて扉の中へと入る。
扉の中に入ると、そこには広い空間が広がっていた。
「うわぁ~、凄い!」
リーミアとティオロは目を開いて周囲を見まわした。空間の中は、タンスにベッド、食器棚に台所まであった。
「旅人達が1ヶ月間過ごせるだけの広さと備えがあるわ。事前に補助金を用意してくれれば、魔法省が食材等の管理もしてくれる契約になっているわよ」
シャルアは、そう言って食材を収めてある空間の戸を開ける。中から冷気が溢れ出てきた。
「さて…出ましょうか」
三人は外に出る。
「このコテージだけど…便利な反面、利用する前に結界とか準備しないと危ないわよ」
「どうしてなの?」
ティオロは不思議そうな表情をする。便利な道具を目の前にして嬉しそうな気分だったが、注意を聞いて少し気になり始めた。
「コテージを利用する時は、外の状況が分からなくなるのよ。だから…危険な場所でコテージを使って、出ようとする時に外で扉が壊れると閉じ込められるのよ。だから…空間内から魔法省に連絡して、空間内から連れ出して貰うか、外部に連絡を行って扉を直して貰うのよ」
「完全に閉じ込められた場合、どの位の間大丈夫なのですか?」
リーミアがシャルアに尋ねる。
「最長で1ヶ月ね。まあ…中に緊急時の連絡線があるから、もしもの場合はそれを使えば、直ぐに助けられるわ」
それを聞いたリーミアとティオロはホッと安心した。
道具の説明を聞いた二人は魔法道具の購入をする、この時革製の袋を二つ購入する。
コテージ利用に魔法省への1年間利用する為の、契約証のサインと支払いを行う。
ティオロは重たい甲冑と剣、盾が小さな袋の中に収入されて解放された気分だった。
魔法道具屋を出る時、ティオロは何かに気付き、リーミアに声を掛ける。
「あ…あの人を見て!」
「どうしたの?」
ティオロが指した方にリーミアは目を向ける。
視線の先には、帽子を被って歩いている女性の頭の上に黒い鳥が乗っていた。
「まあ…本当に鳥が乗っているわ…」
「ね、言った通りだろう?」
「ま…まあ、貴方もたまには本当の事言うのね…」
「何だよそれは…?」
そう言いながら二人は魔法道具屋を後にしながらマネ二―ゼ市場を歩いて行く、二人の後ろ姿を眺めていたシャルアは楽しそうに彼等を見つめていた。
(何か…騒がしい、そよ風が去った様な感じね…)
そう思いながら、店の前に立っていると、彼女の店に新しい来客が訪れて来た。
「いらっしゃいませ」
シャルアは来客者の対応に追われ始める。
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