冒険者ギルド②

 「こんにちはレナちゃん」


 「あら…こんにちは、ユウマ君」


 レナと言われた受付の女性は、笑顔で返事をする。


 「ねえ、今日は暇そうにしてる人達何人か居るかね?」


 ユウマと言われる少年が受付にレナに向かって言う。


 「どんな方が良いのかしら?」


 「そうだね、とりあえず回復系魔法が使える人が良いな…」


 それを聞いたレナはリーミアを見る。


 「貴女、回復魔法は出来るかしら」


 「あ…はい、一応出来ます」


 「じゃあ…彼等と一緒に出掛けて見たら?」


 「はい…」


 リーミアは、ユウマの方を見た。


 「お…君、可愛いね。新人なの?」

 ユウマは、リーミアを見て言う。


 「ちょっとユウマ、何デレデレしてるのよ」


 一緒に居た魔法使いの少女は、ユウマの耳を軽く抓る。


 「イテテ…ゴメン、マイリ…君の方が可愛いよ」


 そう言うとマイリと言う少女は手を離す。彼女はリーミアを見て、ふと…疑問に思う事があった。


 (回復系なのに…どうして、この子は杖を持って居ないのかしら?)


 「ちなみにリーミアさん、彼等は全員白の称号を得ているのよ」


 「凄いですね」


 レナの話を聞きリーミアは彼等を見て感心する。


 ユウマの仲間達と一緒に出掛ける事になったリーミアは、彼等のメンバーを見る。


 彼等のリーダーはユウマと言う少年だった。彼は剣と盾を携えているのを見て前衛で戦うタイプと感じた。


 彼と一緒に前を歩いている男性は、槍を抱えて居た。


 リーミアは自分の隣に居る少女…マイリを見た。このチームが回復系を必要としているのを考えると…彼女は補助魔法か攻撃魔法を扱う者だと思った。


 「ねえ…貴女」


 マイリが声を掛けて来た。


 「はい…」


 「回復系なのに、ごく普通の格好しているわね」


 「まだ、登録したばかりなので…」


 「杖は持たないの?」


 「私が杖を使うと、杖が壊れてしまうので…」


 「はあ…何それ?」


 リーミアの意外な返事にマイリは少し呆気に取られた。2人の話を聞いていたユウマが、リーミアに話し掛ける。


 「近くに武器道具屋があるから、そこで購入しよう」


 そう言って皆は武器道具の店に立ち寄る。ユウマは店の店員に話し掛ける。


 「すみません…初心者用の魔法の杖をください」


 それを聞いた店員が魔法の石を封じ込ませた杖を持って来る。


 「銅貨5枚だ」


 初心者用の杖を手にしたリーミアは、軽く杖を振った。


 「これじゃ…直ぐに壊れてしまいそう…」


 そう思いながら店に飾ってある魔法の杖を見た。


 (あっちの方が良いかな…)


 などと…思ってる間にユウマが店の店員に金を払い終えていた。そのまま一同は店を出て歩き始める。


 目的地に向かう途中、目の前に傷ついた傭兵達の姿を見つける。


 「どうしたのですか?」


 「この先の野営地に行ったら、返り討ちにあったんだ…ウゥ!」


 深傷を負っている様子だった。


 「リーミアちゃん、助けられる?」


 「はい」


 返事をするとリーミアは、杖から眩い光を発して怪我を負った数名の傭兵達を同時に癒した。


 「凄い…。初心者で、こんなにも強力な魔法を使いこなせるの始め見た…」


 怪我が癒えた人達はユウマ達に礼を言って、集会所に戻る事にする。


 「どうやら…お目当ての場所は、相当危険な場所だけど…リーミアちゃん大丈夫かね?」


 「まあ…少しぐらいなら何とかなります」


 「危ないと思ったら、逃げても構わないよ」


 「はい」


 その言葉にマイリは頬を膨らます。


 「じゃあ、さっさと行くわよ。早くしないと日が暮れるわよ!」


 「おい、何を怒ってるんだよ…そんなに…」



 ユウマはマイリの後を追う様な感じで歩く。一同は、少し小高い丘の上から野営地を眺めて、さっきの傭兵達と戦った魔物達の姿を確認する。


 「相当な数居るね…」


 「予想では30匹か…それ以上だな…ロメル、君はどう思う?」


 「ふむ…出入り口は一ヶ所しか無いな…」


 ロメルと言われた槍持ちの男性が言う。


 「本当だ、つまり…門の前で戦えば、こっちが有利になるか」


 深追いせず、危なくなったら即逃げる…そして、少しずつ敵の戦力を奪う戦法であった。


 彼等は、敵の野営地の前にある草むらの中に隠れて、野営地を眺めた。


 リーミアは、出入り口付近を眺めた。出入り口の近くに木や草が生い茂り周囲は小高い岩山があった。


 「敵は油断している見たいだ、一気に攻め込もう」


 「待って…」


 ユウマの言葉にリーミアが声を掛ける、全員の視線がリーミアに向けられた。


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