野営地①
「どうしたの?」
「ここの野営地は、出入口が1箇所だけだから…いきなり飛び込むのは危険過ぎると思うわ…門付近も伏兵が隠れている可能性があるわ」
リーミアは、地面に木の棒で絵を描きながら説明する。
「しかも…傭兵達と争ったばかりだわ、あんなに体格の良い傭兵達を傷付ける程だから…敵は相当手強い筈よ…。それに警戒を強めているはず。一旦ここは引き退って、仲間を増やしてから攻め込みましょう。私としては…奥のテントに敵の大将が居るから、別部隊を要請させて…山の方から彼等の大将テントに火の矢を付けて驚かせるの…そうすれば、敵は油断する筈…その時に攻め込めばこっちに勝機があると思うわ…」
リーミアの意見にユウマはフム…と納得した表情で頷く。
「それは悪く無い考えだけど…別部隊を派遣すると、それで勝った場合、手柄の奨励金も半分になってしまうね」
ロメルがリーミアを見て言う。
「出来るだけ僕達で稼ぎたいから、リーミアちゃんの意見は参考までとさせて貰うね…」
結局リーミアの作戦は却下されて、彼等は門に向かって一斉攻撃する方向で全員一致の考えだった。
「よし、攻め込もう!」
ユウマが号令を掛けると、全員門に向かって突き進む。
作戦通り、門付近での戦闘を開始する。
ロメルとユウマが前衛で敵と交戦…リーミアが回復と補助魔法で皆を援護、マイリが後衛から攻撃魔法を行う。
戦闘開始後、ユウマとロメルは次々と敵を倒して行く。
「へ…楽勝だな、この戦い」
「ちょっと予想外だったね」
「フッ…野営地制圧も時間の問題かな?」
余裕を見せていた直後だった、敵の1匹が角笛を吹き鳴らす。
角笛が鳴り響いた時だった。門付近から魔物の伏兵が現れて、弓で彼等を攻撃する。
ピュンピュン…と弓弦の音を鳴らし、敵の死角からの攻撃に皆は戸惑う。
幸いリーミアの魔法のバリアによって弓の攻撃は弾かれて全員助かる。
「マイリ、弓持ちを狙え!」
「え…何処?」
狼狽えたマイリは、焦りの色が濃くなり戸惑いを隠せなくなっていた。
「ねえ、マイリ後ろ!」
リーミアが後方を指して大声で言う。
野営地から離れていた魔物達の増援が、後方から現れて一斉に押し寄せて来ていた。
「げえ…そんな、50匹以上はいるぞ!」
マイリが後方の敵に向かって攻撃魔法を行う。
「火球!」
ズドーン!
マイリは敵を倒した…と思ったが、襲って来る敵達は怯む事など無く、勢いよく突進して来た魔物の1匹がマイリに一撃を喰らわせる。
「ギャア…」
深傷を負ったマイリがリーミアの足元に倒れ、魔物は彼女の杖を踏みつぶした。
更に後方から現れた敵が彼等を襲おとした時、ユウマが後ろの敵に対して応戦する、前後の敵との交戦に仲間達は焦りの色が濃くなり始めて来た。
「リーミアちゃん、君だけでも逃げろ!」
ユウマが大声で言う。
(このままでは皆が危ない…何とかしないとー)
震えながらリーミアは考える。その時だった、自分の過去の記憶が蘇る。
少女の目の前で横たわる男性がいた。彼は少女に向かって手を差し伸べ…息を切らしながら囁いた。
(恐れるな…君は強い…誰にも負ける事は無い。自分の中に眠る秘めた力を信じろ…)
ドクン…ドクン…と心臓の鳴り響く音が聞こえ、気持ちが高鳴り、リーミアは目を開き自分の額にあるバンド型の額飾りを外す。
額には不思議な紋様が現れる。手にした額飾りをバックの中に入れ、スゥ…と息を深く吸い込むと、彼女の周辺から気流の様な風が巻き起こる。それに気付いた魔物達が一瞬ビクッと反応してリーミアの方に視線を向けた。
直後、リーミアは自分の持っていた魔法の杖を敵に向かって放つ。
「火球ー!」
ズドォーンッ!
凄まじい轟音と共に炎と砂煙が広範囲に巻き起こる。爆風は彼等の側まで届く程の威力だった。
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