占星術師②

 - マネニーゼ市場


 レンティ占星術の居る場所を地図を頼りに歩いているリーミアは、市場を歩き続けていて…ある場所まで来ると足を止めた。


 目の前に如何にも、そう思われしき建物が見えたのである。周囲の町並みと比べると…やや古びており、何処から購入したのか解らない奇妙な術具が建物の周囲に飾られている。


 どう考えても見間違う事が無い場所に来たリーミアは、少し足を止めて立ち入る事に少し躊躇いを感じた。


 (宿屋の方が言っていた事は、このことなのね…やっぱり引き返そうかな…)


 そう思って数歩引き下がろうとした時だった…。


 「おや、ウチの店に用かね?」


 いきなり後ろから声が聞こえて、ビクッと驚いたリーミアは振り返ると、自分と同じ背丈の老婆が立っている事に気付く。


 背が曲がって、片手に杖を付き、鼻が尖っていて、顔や手にはシワがある。赤茶色のフードを被った…80代位の老婆だった。彼女は、細目であるが…人を見る時は、目がギラ付く感じを漂わせている。


 「イシシ…こんな処に居ないで、中で話をしようじゃ無いか…」

 「は…はい」

 「大丈夫、茶は出すからよ」


 そう言って老婆は杖を付きながら先に店に入って行く。リーミアも続いて店に入る。店の中に入ると…更に不思議な術具が処狭しと並んでいた。


 何処から仕入れたのか解らない不思議な装飾や、奇妙な形状をした置物等が数多くあった。


 「はじめまして、私はリーミアと言います」

 「どうも、はじめまして私はレンティと言う者じゃよ。イシシ…」

 「さっそくですが…今日こちらに来たのは、術具の購入では無くて…王位継承の事を知りたくて来ました」

 「ほお…王位継承かね、そうか、なるほど…」


 老婆は頷きながらリーミアを見る。


 「私は、修道院で育った身ですが…幼少期の頃から、他の子とは違う鍛錬や勉学を学ばされて来ました…。主に剣術や柔術…その他に様々な種類の魔術。召喚術から治癒に関する術等…その他様々な事も多く学びました。そんな中…14歳になる頃に祭主様から、コレを授かり貴女に会うように言われたのです」


 リーミアは自分の腰に携えていた銀色の短剣を老婆に見せる。


 「こ…これは、御主が持っていたのか?」

 「はい」


 老婆は驚きながら震えるている様子で、銀色の短剣を眺める。


 「さ…触っても良いか…?」

 「はい、どうぞ」


 それを聞くと老婆は短剣を持ち上げる。老婆は短剣を鞘から抜こうとするが、短剣はビクともしなかった。


 「正に…伝説の神秘の聖魔剣よ。使い方次第では所有者の命さえ奪ってしまう程の威力を発揮させる…恐ろしい物だ」


 老婆は短剣をリーミアに返す。


 「その剣に纏わる昔話は知っておるかね?」

 「いえ、全く知りません」

 「そうか…修道院では何か話は聞いて無いのか?」

 「ある日、祭壇の上に赤子だった私が居て、側にこの短剣があった…と聞きます。修道院でも、この短剣を鞘から抜く事が出来るのは、私以外には居ませんでした」


 「その剣は、聖魔剣とも言える物…見た目の短剣とは異なり、所有者が想い描いた形に剣が変わる優れ物だ。魔を封じ込める聖なる威力を持つが…巨大な力を発揮させるには、所有者の生命を吸うが故…扱うのを恐れられているのだ…。御主の手元に短剣があった…と、言うのは多分…100年前に訪れた魔獣達の災いを封じ込めた王女の生まれ変わりだからかもしれないのだな…」


 「その話は祭祀は教えてくれませんでした。修道院の人達も噂話をしていましたが…詳しくは知りません…」

 「なるほど…ね」


 老婆は、話の途中でお茶を淹れてリーミアに差し出す。老婆はお茶を一口飲むと話を始める。

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