占星術師①

 - 居酒屋


 まだ午前の日差しが昇って間も無い頃から、店を開けて居る酒場があった…。普段は、夜遅くまで店を開けて…午前中は、店を閉めて午後から開店…と言うのが、普通だったが…その店は、数名の店番が居る為、早朝から深夜まで、どの時間でも利用出来る事が可能だった。

 その日、珍しい客人が店に訪れた。


 「よお…おっちゃん、一杯注いでくれ!」

 「ん…珍しいなティオロ、真面目に仕事する様になって、金が入ったのか?」

 「ちょっと違うけど…副収入が入ったから、少し酒が飲める様になったのさ…」


 店番の男性は注文通り、木のジョッキに酒を注ぎ、ティオロに渡す。


 酒が届くとティオロは、一気に喉に流し込み「ウメェ~」と、ジョッキを置く。


 「副収入が入ったって…一体どんな悪さして大金を得たんだ?」

 「へ…それはちょっと言えないな、まあちょっとした善行して、金を得た…て言う事かな…」


 ティオロがニヤけた顔で言うと…店番の男性が少し溜息を吐く。


 「お前の口から善行なんて言葉が出るとは思わなかったな…」


 二人が話していると店の扉が開き、若い女性が荷物を抱えて入って来た。彼女はティオロを見るなり少し驚いた表情をした。


 「あら…ティオロ、貴方どうして店にいるのよ」

 「何か…珍しい物の言われ方だね…」

 「そりゃそうでしょう…今まで、ずっとタダ飲みされていて、出入り禁止になっていたじゃない」

 「副収入が入ったらしい…だとよ」


 店番が女性に向かって言う。


 「へえ…じゃあ、今飲んだ分も加えて、未払い分払えるのかしら?」

 「多分足りると思うけど…」

 「そう…ちょっと待っててね、今から精算するから…」


 女性は奥にある台を使って算盤を叩き始める。


 「悪いね…店の親方が口煩いから、金が払えない奴は店に入れるなって…言うんだ」

 「仕方無いね…」


 酒代まともに払えない自分が悪い…と、ティオロは自分に言う。


 そう思っていると、女性が精算の金額をたたき出した様で、紙に金額を書き込みティオロの前に来た。


 「こんだけよ、払えるの?」


 それを見た店番は目を大きく見開いた。


 「ちょっと…こりゃ、幾らなんでも多過ぎじゃ無いか?」


 しかし…ティオロは「ふ…ん」と、微動だせずにポケットから金貨を3枚取り出す。


 「これで足りるかな?」


 それを見た店番と女性は息を呑んだ。


 「お…お釣りを用意するわ…」


 そう言って女性は奥の部屋へと向かう。


 ティオロにとっては計算外だった。もう少し他へ遊びに周りたかったが…、ツケが想定以上だったのは痛かった。リーミアからもう少し金貨を頂くべきだった…と、少し後悔しながら酒場を出て行く。

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