第11話

 部会は、特にこれといった出来事は無かった。今後のスケジュールや自己紹介がメインで、大体20分位で解散した。

 木曜日も金曜日も特に何も無かった。ただ森田君に紹介してもらった同級生2人と、LINE交換くらいはした。名前は、中井と渡邉で、2人とも服は普通だが金髪ヘアーのオシャレはしている、明らかに今時の大学生だ。そして、両方とも生命科学科だ。

 中井がお笑いサークルを紹介してきて、森田君はどうやら入るそぶりを見せたが、私は断った。再度誘われた時にワザと冷たい態度で断ると、中井に「ごめん」と本気で謝まらせてしまった。その後で(こちらこそごめん)と謝ると、なんやかんや友達っぽい間柄になってしまった。渡邉とも学校の帰り道で、ゲームの話で盛り上がり、仲良くなった。

 ただ、彼等2人とも見かけに依らずどちらかと言えば陰キャで、私とも仲良くやっていけそうな気がする。森田君の洞察力には感心せざるを得ない。

 土日が終わると同時に4月も終わり、気温は少し上昇した。私は、朝の少し混んでいる電車の中に入る前に、上着を脱ぐ選択をした。ジャケットを鞄にしまい込み、ガタンゴトンと電車に揺られ、大園さんのことを考えた。

 彼女とは上手くいっている気がする。ただまだ何処か気まずさであったり、ドギマギしてしまうことがある。共通の趣味が有れば良いが、、、映画が趣味とか言ってたっけ。しかもアクション映画。私自身、昔はそういった類の映画は観ていたのだが、今では全くだ。だったら、彼女を誘って一緒に観に行ったり!って付き合う前に誘うのなんか変だよね。先ずは、告白からだな。

 無機化学の授業が終わり、私は、早目に線形代数の教室に到着した。予想通り、教室には誰も居ず、またいつもの席に座った。そして、キョロキョロと目を配り、大園さんの到着を楽しみに待った。

 暫くすると、1人の女生徒が教室に入って来た。私は、彼女の顔を見るなら、二度見してしまった。彼女の顔面は、私のどタイプだったのだ。

 私は、偉人の様な綺麗な鼻が付いた顔が好きである。控えめでなく、目立とうともしない、芸能人で言ったら、福○蒼汰や石○莉奈辺り、キ○タクも多分そうであろう。

 彼女には、そういった鼻が付いていた。彼女は、私の二度見に気付く素振りを見せず、後ろの方の適当な席に座り、スマホを弄り出した。私は、彼女に話しかけようか迷った。ただ、大園さんに惹かれている自分の気持ちの呵責に抑えつけられた。彼女ほどの、どタイプの女子と出会ったのは初めてで、それは本当に悩ましく感じた。

 結局、私は耐える事が出来た。と言っても、唐突の出会いだったのでいきなり話し掛けたら、私が緊張でオドオドして悪印象を与えていたと思う。

 大園さんがいつもの様に隣に座り、私の方をチラッと見た。そして、私が話し掛ける。

 「よう、大園。課題やってきた?」

 「うん。やってきたよー、見せて」

 私はノートを広げ、彼女の方に寄せる。

 「あれ、これちゃうくない?」

 彼女が指差す所を見ると、確かに足し算をミスっている。私は赤面して、「あ、すまんすまん」と言い、ノートに消しゴムを擦り付けた。

 帰り道、2人は何と無く地元の紹介をしあった。彼女の父がガ○バ大阪の大ファンでよくスタジアムに連れて行ってもらった話などを聞いた。そして、最後の別れ際、彼女は唐突にこんな事を言い出した。

 「私、告白されちゃった」

 私は、ビックリ仰天で、思わず「え!?」と声を上げてしまった。続けて、「誰に?」と聞くと彼女は何も答えてくれない。

 私は、頭が真っ白になった。何て言えば良いのか分からない。月曜日に話しかけて来たあの男か?沈黙が暫く続くと、「またね」と明るい声で彼女は階段を降りて行った。

 私は、俯いたまま、反対側に居る彼女の方には眼を向けれなかった。来た電車に適当に乗り、がらがらの車内で泣き顔を作りながら、ドサっと近くの座席に座り込む。

 好きだったのに、好きだったのに。女という生き物は一体何なのだろう。分からない、分からない。彼女も私のことを好きだと思っていたのに。彼女は性悪女だったのだ。

 自室に戻っても、まだ悲しみが私の心を支配していた。しかし、家族と夕食を供にした後、心が落ち着くと、ふとある事に気が付いた。

 彼女は、告白されたと言っていただけで、付き合うとは言っていない。まだ、分からない!

 私は、早速彼女にLINEを送ろうと企んだが、少し怖くなって辞めてしまった。そして、結局水曜日までそれを拒んでしまった。

 水曜日、英語の授業を終えると、またもや大園さんと遭遇した。

 女友達と会話している彼女に私は、「やあ、いつも会うね」と話し掛けた。気付いた彼女は、明るい声で「教室が近いんかもね」と返す。

 「さっきの授業何だったの?」と訊いてみると、「基礎知的財産だよ」と返ってきた。

 続けて、「何だか、明るいね」と訊くと、「人生は楽しいからね」と訳の分からない応えがきた。

 こう以上は、邪魔かなと思った私は、「じゃあ、またね」と言ってその場を離れた。

 食堂では、約束していて、中井と渡邉と森田君の4人で昼食を取った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る